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#映画感想文258『氷の微笑』(1992)

映画『氷の微笑(原題:Basic Instinct)』(1992)の4Kレストア版を映画館で観てきた。

監督はポール・バーホーベン、脚本はジョー・エスターハス、出演はマイケル・ダグラス、シャロン・ストーン。

1992年製作、128分、アメリカ映画。

1990年代のアメリカのサンフランシスコ、ナイトクラブを経営する元ロックスターの男が自宅の寝室で、アイスピックで惨殺されていた。刑事のニック・カラン(マイケル・ダグラス)は被害者と性的関係を持っていたキャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)を第一容疑者として尋問をするが、彼女はなかなか尻尾を出さない。

キャサリン・トラメルは作家で、名門大学のバークレーを卒業し、文学と心理学の学位を取って卒業している。優秀な人であることは確かなのだが、彼女の周りには、あまりにも死が多い。にも関わらず、彼女に影はなく、ケロッとしている。

(ちょっと話はずれるけれど、心理学って質問紙調査をして統計処理をする、地味で地道な学問なので、彼女がマインドコントロールできるのは生来のもので学位とは関係ないと思う)

ほかにも多くの疑惑がある。彼女が両親を殺して、莫大な遺産を相続したのではないか。大学時代の指導教官を殺したのも彼女ではないか。そもそも、事件と彼女の書いた小説との一致が多すぎる。

キャサリンが殺人と親和性の高い人々と性的な関係を持ち、マインドコントロールをして、彼らに殺人をさせていたことが徐々に明らかになっていく。サイコパスで人の心を操るのがうまいキャサリンが、殺人をさせていたのだ。自分の魅力を使って他人を引き寄せ、脅したりなだめたりすかしたりして、他人を操る凶悪犯なのだ。

(日本の尼崎や北九州の事件の犯人と類似性があるのではないだろうか)

老いも若きも男も女も誰もがメロメロになってしまう魅力のあるシャロン・ストーンの美しさがあってはじめて成立した作品であることは間違いない。当時のシャロン・ストーンは34歳、マイケル・ダグラスは48歳。(ニック・カランという人物は自分勝手でサディスティックな側面があり、48歳にしては幼稚であった)

ニックの元恋人である精神科医のベス・ガーナー(ジーン・トリプルホーン)が、ニックと笑顔で会話をし、彼が去ったとたん、表情が消え、真顔になるシーンは見事だった。ニックはいい奴ではない。だから、キャサリンに惹かれてしまったという側面もあり、彼自身、ただの観光客を麻薬の売人と間違えて殺してしまった過去がある。

VOGUEの記事で、パク・チャヌク監督の『別れる決心』は『氷の微笑』へのオマージュがあると書かれていたので、そのことも気になっていた。犯人であろう女性のとろえどころのなさと、海辺の豪邸のシーンの雰囲気がよく似ており、なるほどと思わされた。

そして、2023年現在、一番活躍しているのは、シャロン・ストーンでもマイケル・ダグラスでもなく、どう考えても84歳のポール・バーホーベン監督である。彼はおそらく死ぬまで映画を撮り続けるのだろう。それをしかと見届けたい。

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