#映画感想文337『荒野に希望の灯をともす』(2022)
映画『荒野に希望の灯をともす』(2022)を映画館で観てきた。
監督は谷津賢二、医師の中村哲のドキュメンタリー映画。
2022年製作、90分、日本映画。
医師の中村哲さんは、長年にわたりアフガニスタンの医療や復興に尽力され、2019年12月に何者かによって暗殺された。
中村医師は、彼らに求められていくうちに自然とそこに根差すようになる。はじめはハンセン病患者の治療にあたり、病院を作る。そのなかで、水質の悪さが住民の健康を害していることに気が付き、井戸を掘り始める。しかし、井戸だけでは乾いた大地を潤すことはできない。彼はクナール河という大河から用水路を作り、農耕できる土地を作っていく。まずは、彼らが自分たちで食べられるようにしていくこと。医師が土木工事をするなんて、あまりにも突拍子がない。しかし、中村医師は必要だと思えばやり遂げる。大河から水を取り込むのがうまくいかなければ、自身の地元である山田堰を参考にして成功させたりする。(最新の技術や理論より、江戸時代の人々の知恵の方が有用性が高く模倣しやすいというのは皮肉な気もする)洪水が起きて、用水路が崩壊しても、修繕・補修をしていく。決してあきらめない。
中村医師の著作からの引用で「裏切られても裏切り返すことはしない」と彼は述べている。それが彼の本質的な強さだと思う。弱い人間は裏切るし、ずるさもある。自分はそこを超越した人間であることを心に決めている。
中村医師のような生き方を見ると、自分自身をとても薄ぺらっく感じる。テック企業の経営者たちが自分たちだけが生き残るための核シェルターなんかを作ったりするのを見ていると本当に馬鹿馬鹿しいと思う。(全人類が滅んでも生き残りたいのか。すごいな。その金でもっとできることがあるだろうに)
中村医師は人生をアフガニスタンの人々に捧げた。それは誰もが真似できることではない。神様に選ばれた人でもあったのだろうし、神様のような人でもあった。彼の人間観には、生命に対する全肯定がある。
資本主義に洗脳され、毒されていると、自己本位な損得勘定ばかりが先行してしまう。無私は無理でも、親切な人間にはならなければと思った。