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#映画感想文180『プリンセス・ダイアナ』(2022)

映画『プリンセス・ダイアナ(原題:The Princess)』を映画館で観てきた。 

監督はエド・パーキンズ、2022年製作、109分、イギリスのドキュメンタリー映画である。

クリスティアン・スチュワート主演の『スペンサー』を観た、その勢いで、映画館に足を運んだ。

この作品は、イギリスのダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリーなのであるが、証言映像などはない。メディアやパパラッチによって撮影された映像が再構成されたものである。膨大な映像の中から、彼女の人生が浮き上がってくるような作りで、非常に抑制的で、派手さには欠けるが、それによって、メディアとイギリス王室の関係性が浮き彫りになっている。

1981年のチャールズ皇太子とダイアナの婚約映像からスタートする。保育園に保育士として、小さな車で出勤する、労働者階級のような19歳の女の子の姿にイギリスの庶民が熱狂したのも、わからなくもない。

幸せな日々は長くは続かない。「単なる政略結婚に過ぎなかった。1980年代の結婚の仕方としては不自然だ」とまで言われていた。皇太子がダイアナと結婚した目的は、世継ぎを作るためだったとも、はっきり言われていた。

チャールズ皇太子は、ダイアナ妃と結婚する前から、カミラ夫人と関係を持っており、その関係はずっと続き、ダイアナ妃が亡くなってから、再婚までしており、今ではカミラ夫人は「女王」でもある。

チャールズ皇太子とカミラ夫人の録音されたテープなんて、聞いていられないような代物である。週刊文春に暴露された某カップルのLINEのことを思い出してしまった。(チャールズ皇太子とカミラ夫人の会話は、あれよりも、ひどかったけれど。ただ、恋をして愚かになるって素晴らしいことだとも思う。醒めてしまえば卒倒するようなやりとりなのだけれど)

そして、双方のゴシップ合戦となり、ダイアナの妊娠中の自殺未遂なども明らかになっていく。

イギリス国民のみならず、イギリス王室の醜聞に世界中が熱狂した。時代も一つの要因だっただろう。テレビや新聞、雑誌にパワーがあり、世論を惹きつける手段、大衆が接することのできるメディアは限られていた。特定の有名人、いわゆるセレブのゴシップで稼ぐ方が効率も良かったのだと思われる。人間は怠け者なので、新しい有名人より、既知の人間の新情報を好む。もし、ダイアナ妃が存命であれば、Twitterやインスタを駆使して、結構、うまく利用できていたのではないだろうか。

激動の人生で、その死の原因も、パパラッチの車やバイクだったというのは、悲劇的であるが、予測できていた事故だとも言える。もちろん、彼女にも欠点もあっただろうし、パーフェクトではなかった。

ただ、弱者にごく自然と寄り添えるのは、彼女の一つの才能だったことがよくわかる。ホームレスに気さくに話しかけ、HIVの患者の頬にキスをすることができるプリンセスはそうそういない。

チャールズ皇太子の若い頃と、エリザベス女王が並んでいる儀式のシーンでは驚いた。顔がそっくりなのである。おそらく、女王は息子が可愛くて仕方がなかったのではないか。そして、チャールズ皇太子は、結婚後も、息子たちが生まれてからも、趣味のポロや乗馬をやめることはなかった。家庭を顧みることはなく、献身的ではなかった。そして、妻が自分よりも、大衆の注目を集めることに不満を持つようになっていく。でも、これってチャールズ皇太子の落ち度というよりは、男性文化の一端という気もする。皇太子でなくとも、仕事や趣味を理由に家庭のことを何もしない男性は少なからずいる。

また、ダイアナ妃は身長が178cmもあり、かなり大きな人であったし、顔も、鼻が高く、顎の骨格もしっかりとしていて、どちらかといえば、男性顔である。で、やはり、こういった彼女の容姿自体が華やかさや存在感に繋がっていたとも思われ、稀有な人だったことを改めて認識させられた。

(日本公開の映画のエンディングにはZARDの坂井泉水の声が流れ、面を食らってしまった。そして、席を立ち、足早に去る人がめちゃくちゃ多かった。ZARDは何も悪くない。ただ、イギリスのドキュメンタリー映画には合っていなかったと思う)

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佐藤芽衣
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