#読書感想文 うめざわしゅん『ダーウィン事変』
うめざわしゅんの漫画『ダーウィン事変』の1~4巻までを読んだ。
主人公のチャーリーは、ヒューマンジーと呼ばれる人間とチンパンジーから生まれた人物である。彼の存在を利用しようというテロ組織「動物解放同盟(ALA)」が現れるところから物語はスタートする。
多くの人に指摘されていることではあるが、アメリカのドラマ、映画を観ているような気分になる。そして、霊長類研究やヴィーガン、アメリカの政治などもたくさん調べたうえで描かれた作品であることがよくわかる。
「なぜ、ヒトを食べてはいけないのか」というよりは、「なぜ、人間は動物を食べるのか」といったことが問われているのだと思う。動物を保護しよう、肉食は野蛮だからやめるべきだ、という人たちの主張もよくわかる。日本でいえば、屠畜に関わる仕事をしてきた人々に対する差別もある。動物を殺して食べることに対する罪悪感を誰かに押しつけてきた文化でもある。
しかしながら、食習慣はなかなか変えられない。わたしも、ヴィーガンのような、ベジタリアンのような食生活にしたいと常々思ってはいる。でも、かつ丼を食べたくなるし、無性にハンバーガーなどのジャンクフードを食べたくなったりする。可能な限り減らすことを目標にすべきなのだが、外食をしてしまうと、それを続けるのはかなり難しい。
先鋭化されたアメリカのテロ組織であるALAの主犯格の一人は黒人であり、黒人への差別の歴史も語られていく。人間は歴史や過程のなかで、「正しさ」や「正義」を学んでいくのだ、と。そういった政治的なことと、なぜ、チャーリーが生まれたのかが今後明らかになっていくのだろうと思われ、それが楽しみである。
この漫画でわくわくするのは、人間とチンパンジーの「ヒューマンジー」のチャーリーのとぼけた感じとその身体能力である。それにチャーリーの雰囲気は初期のクレヨンしんちゃんのぶっきらぼうで怖いもの知らずのふるまいに、どこか似ている。それが親しみやすさに繋がっているとも思う。
父子のねじれた関係は鉄腕アトムを想起させるし、浦沢直樹の『MONSTER』や『20世紀少年』を読んでいたときのような、次の展開が待ち遠しい、といった感覚も久々に蘇ってきた。(どちらの作品も、オチはひどいと思う笑)
次巻の発売を待ち遠しく感じるし、うめざわしゅんさんのほかの作品も面白そうなので読んでみたいと思っている。