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映画『アトランティックス』(2019)の感想

映画『アトランティックス(Atlantique)』を映画館で観てきた。

マティ・ディオップ監督の、セネガルを舞台にした作品である。上映時間は106分、フランス・セネガル・ベルギー合作で、第72回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞している作品だ。

セネガルが舞台の映画を観る機会はあまりない。せっかくだから、と観に行った。

ちなみに、Netflixでは、すでに配信されている。

主人公の17歳の少女のエイダには好きな人がいるが、金持ちとの結婚がすでに決まっている。反発を抱えながらも、親に反抗はできず、ずるずる結婚式を迎えてしまう。彼女はスペインへ密航し出稼ぎに行ってしまったスレイマンという若者を今も思っていて…、という映画である。

この映画は古くて新しくて、なんだか懐かしい。

エイダとスレイマンは、ロミオとジュリエットである。

結婚式のあとから起こる出来事は、いわゆる怪奇現象なのだが、恐山のイタコスタイルだったり、憑依された人は体調悪化を訴えていたりと、もうなんだか、この雑な設定が懐かしい。

給料未払いの建築会社の社長を幽霊たちがリンチする感じも最高だった。幽霊に墓地に呼び出され、そこにちゃんと金を持っていく社長も変だ。そのうえ、社長は「墓を掘れ」と幽霊たちに命じられ、地面を掘り続ける。そんなに素直なら、最初から払っておけよ、とツッコんでしまう。

キョンシー的な趣きと因果応報的、ある種の前近代的な世界観の作品は、ここのところ見ていなかった。そのせいか、ノスタルジーを感じ、ちょっと好ましく感じられた。

ただ、こういう作品は、一歩間違えば興ざめ、観ていられない、という作品にもなりかねない。

セネガルの荒波と、夜の中にある光、映像的な美しさがあったからこそ、物語が成立したのだという気がする。

因果応報を信じたい気持ちは、セネガルの人たちも同じなのだな、と思うと、アジア人でもアフリカ人でも、人間はそれほど大きくは変わらないのだ改めて思った。

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佐藤芽衣
チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!

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