#読書感想文 安斎響市(2022)『私にも転職って、できますか? 』
転職活動に行き詰まりを感じ、安斎響市の『私にも転職って、できますか? 〜はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話』を読んだ。2022年1月にソーテック社より出版された本である。
安斎響市さんはnoteやTwitterでも執筆されている方である。
この本を読んで、新しく知ったことはそれほど多くはなかったのだが、漠然と思っていたことや自分の中で未整理だった部分を可視化することができ、視界が開けるような感覚があった。
会社には文化がある(p.15-17)、世の中には意味のない、価値のない仕事で溢れている(p.26)、環境が大事(p.30)というのは納得である。
自分に「奇跡的なベストな求人」に出会うためには数多くの求人票に目を通すしかない(p.116-117)という部分にも、そうだよなあ、と深くうなずいてしまった。転職活動も、はじめのうちはテンションが高いので、こまめに複数のサイトを巡回するのだが、飽きてくると、それが億劫になってくる。それではまずいのだ。どこに自分に合う奇跡の会社が転がっているかはわからないのだから、まめに、忍耐強く続ける必要がある。
基本的に転職活動の面接は平日の午前9時から午後6時まで(p.120)というのも、再確認できた。そう、採用する側のワークライフバランスは、求職者によって乱されることがあってはならないのだ。
転職活動は実力勝負ではない、いかに面接で上手に振る舞えるかが勝負(p.142)という身も蓋もない話にも共感した。
面接の際に聞かれるのは、この三つ質問である(p.143-148)というのも、わかってはいたが、うまく自己PRまでもっていく意識が不足していたように思う。
①退職理由・志望理由
②過去の仕事の実績
③応募ポジションの仕事内容に対する適性
そして、決してネガティブなことは言わない、という原則も忘れかけていた。というか面接官が呼び水的な質問をしてくることがあるんだよな。「これまでに一番困ったのはどんな同僚でしたか」みたいな。
そして、転職はストーリーである(p.185)ところにも納得である。今は、まんじゅうや、帽子とか、商品を一つ売るにも物語が要求される時代である。わたしは、その手の商業主義に基づくストーリーは反吐が出るほど嫌悪しているのだが、転職市場において、人は人材という名の商材であり、売り込まなけれならないのだ。で、キャリアに一貫性がない、ストーリーがうまく組み立てられないときは、応募してもうまくいかない(p.187)というのは、とても耳が痛い。会社は、ストーリーを持った求職者を採用するのだ。
履歴書の職歴を職務経歴書で物語化して、点と点を線にする。その労を惜しまずにやるしかない(p.186-187)。そして、転職活動は実力勝負ではない水物で予測不可能だとも述べられている(p.200)。そうそう、企業側は欠員補充と言いながら、青い鳥を探していることがある。そんなスーパーマン、おまえの会社に行くかよ、とこっちだって思っているんだぞ(笑)
転職活動は最速で獲りに行かないとダメ(p.202)というところだけ、少し納得できない。わたしが受けているような中小企業はレスポンスも遅く、人事も現場の人も、それほど優秀ではないので、動きが遅い。だから、こっちが全速力でダッシュしても、反応がなかったりするので、じりじりしていると身が持たない。「履歴書をお送りしてもよろしいでしょうか」のメールに10日以上、反応がない会社もある。迷惑メールに入ってしまったのなら、仕方がない。チェックしている人がいないとか、募集は終了しているから返信しなくていいや、と考えられて無視されている可能性もある。会社って、本当にいい加減なものなので、きちきちやってもらえることを期待しても、空しい。しかしながら、問い合わせに返信もしないほど、やる気のない会社は応募するのを見送った方がいいだろう。無駄に個人情報を相手に渡したくない。
著者は、わたしと同世代で、実際に転職を何度もしているので、とても説得力があった。「転職回数が多いと、かなり印象が悪いので転職できません」などと読者を突き放す転職本を読んで脱力したこともある。あのね、転職していないエリートのほとんどは転職本なんて読まないの。読者は転職回数の多さを心配していて、そこをクリアしたいの。あとね、未経験の職種に挑戦したいけど、にっちもさっちもいかないから、転職本を読んでいるわけよ。上から目線で、否定されてはモチベーションだだ落ちである。(大手企業を新卒から勤め上げ、定年退職をした元人事部の人の本は、本当に参考にならない)
これからは、マイナスのことも全部プラスに変えてしまう、ハイパーキラキラ錬金術師のようにふるまい、内定ゲットを目指すぞ!
(はあー、人生、きついわ)