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#読書感想文

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文芸書から自己啓発書まで、読書感想文として書き留めています。ご参考になれば幸いです。
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2022年2月の記事一覧

アーサー・ビナード(2008)『空からきた魚』の読書感想文

アーサー・ビナード(2008)『空からきた魚』の読書感想文

アーサー・ビナードの『空からきた魚』を再読した。2008年に集英社文庫から出されたエッセイ集である。著者はアメリカのミシガン出身で、詩を書き、翻訳家としても活躍されている。解説は文芸評論家の斎藤美奈子さんだ。

わたしに限らず、日本人は、異文化からの目を好む。それが歪んだナショナリズムに利用されることも、昨今少なくない。「日本、スゴイ!」は、もはや笑えない。しかし、それが日本人の所得が減り、コミュ

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MOMENT JOON(2021)『日本移民日記』の読書感想文

MOMENT JOON(2021)『日本移民日記』の読書感想文

MOMENT JOON(モーメント・ジューン)の『日本移民日記』を読んだ。2021年11月に岩波書店より出版された本である。

著者のモーメント・ジューンさんは、ソウル出身、大阪在住のラッパーだ。この本は「移民」として生きることを決めた人によって書かれている。

わたしは外国に長期滞在した経験はなく、言語能力にも限界があるため、移民になることは、いつのまにか、あきらめてしまった。

わたしが今、ロ

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#読書感想文 マイケル・ギルモア(1996)『心臓を貫かれて』

#読書感想文 マイケル・ギルモア(1996)『心臓を貫かれて』

マイケル・ギルモア、村上春樹訳の『心臓を貫かれて』を読んだ。1996年10月に文藝春秋より出版された単行本である。

父親による暴力に苦しんだ家族の物語である。被虐待児であるゲイリー・ギルモアは数々の犯罪を犯し、死刑を言い渡される。死刑制度を復活させたユタ州で、ゲイリーは上告せず、死刑執行してほしい、と州に対して主張した。そのことで、一躍時の人となった。

暴力は連鎖し、トラウマは遺伝する、という

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