十八世中村勘三郎十三回忌追善 猿若祭二月大歌舞伎。その中から昼の部ラスト、十八世中村勘三郎が襲名披露でも演じた「籠釣瓶花街酔醒」を観劇。
今更、2月の記録を….とも思うが、個人の備忘録なので一応書いておく。
この兄弟を応援したい
内容に入る前に、今回の興行に臨むこのご兄弟のお姿・発言の数々に胸を打たれた。
自分も昨年の1月に父を亡くしている。そして、男兄弟2人だ。重なる部分を感じるからか、彼らの発言・表情に見入ってしまう。
この動画は10年前のものだが、七之助が兄弟を代表して父への想いを語っている。すでに泣ける。
そして、こちらが今年の動画。何なんですかね、この2人の歌舞伎に対する純真さ・誠実さ、そして清潔感は。応援したいという気持ちがむくむくと湧き上がってくる。
こんな動画まで見つけてしまった。泣ける。
「籠釣瓶花街酔醒」あらすじ&ネタバレ
さて、肝心の「籠釣瓶花街酔醒」ですが…
当世風に要約すると、田舎から出てきた男が、都会の店の女に一目惚れ。真面目に足繁く通っていい関係になるも、告げ口によって一番彼氏にその関係がバレてしまい、縁を切らねばならぬことに。女は別れたくない気持ちを隠しながら、しかし、田舎の男からすれば、「もう会いに来ないで」「最初から嫌いだった」とか結構酷いことを言われて一旦は田舎に帰るも、復讐に舞い戻るという話。
個人的な見所
1. 吉原のシステム
今まで深く考えてこなかったからか、興味深く見た。例えば、すっかり吉原に通い慣れた次郎左衛門が、恐らくは同郷の若い童貞2名を連れ立って女郎小屋に赴く場面。
玄関横の座敷に座って女将さんとお茶を飲み、世間話でもしながら、この若い男たちに良い女の子を付けてくださいとお願いをすると、一方で女将さんはその若い男たちを見ながら、それぞれに適切な女の子をアサインしていく。
吉原は現代で言えば風俗街なのだと思うが、写真で選ぶ現代のシステムとはずいぶんと違った形態で営まれ、もはや異なる文化とすら思える。
2. 佐野次郎左衛門
前半の田舎感丸出しで陽気な人柄、中盤の丁寧且つ熱を帯びた旦那、クライマックスにおける狂気の夜叉。佐野次郎左衛門は大きく3つの顔を見せることになる。勘三郎が愛した役柄と聞くが、たしかに目に浮かぶようだ。自分は生で勘三郎を見たことはないが、勘九郎は勘三郎が憑依したかのような演技だったのではないか。
補講
歌舞伎漫画「かぶく者」の2巻・3巻では、正にこの「籠釣瓶」が題材となっている。市坂新九郎、芳沢恋四郎、仲村宗太郎の演技合戦、かぶき合いが展開され、シリーズでも屈指の名エピソードとなっている。
※なぜ、途中で打ち切りになってしまったんだ…。
※孤高の女形・恋四郎は玉三郎そっくり。