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彼女はバージンだった①

台湾の南にはいくつもの島がある。

台北から電車に乗って南下し、台東という街へ向かった。
台北の滞在ではすっかり屋台にハマってしまって夜はいつも、
ビール飲みながら、夜市を歩いて好きなものを食べていた。
台湾はスタイルの綺麗なミニスカ女子の宝庫だった。
女の子はみんな細くてセクシーだし、
歩いている子は全員可愛く見えた。

台東につくと空の青さに感動した。
市場で売っているマンゴーやパパイヤが南国らしくめちゃくちゃデカかった。
青い空を見ているともうすぐ誰か素敵な人に出会う予感がした。

台湾には綺麗な島がいくつもある。
緑島や、台湾原住民の島と言われる蘭嶼(ランユ)島が有名だ。
西側には澎湖島などもあるが、そこは太平洋戦争時の日本軍との関わりが深い。

蘭嶼島にピンときた。
この島に行ってみたい。
町外れのフェリーターミナルで台東から蘭嶼島へのチケットを買って、
翌朝フェリーに乗る。
数時間で着いた。
海は沖縄ほど透き通ってはいないが、十分綺麗だった。

蘭嶼島に着くと、フェリーターミナルでバイクを借り宿を探す。
予定を決めず、いつも行き当たりばったり。
もしいい宿が見つからなければ、テキトーなとこにハンモック吊るして寝ようと思ってた。
木が2本あればいい。
バイクがあるから無敵だった。

しばらく走ると、ゲストハウスは見つかった。
荷物を置いてすぐに泳ぎに行く。
海は道路沿いに面しているから、いつでもどこでもバイクを止めて泳げる。
どこかいいスポットないかなーと思って走っていると、前を歩く短パンにTシャツの女の子。

「どこまで?乗せてってあげようか?」


この時はただの親切心で聞いた。
「助かります」
彼女は英語が通じた。
「行きたいとこがあるの?」
「ないです、ただ泳ぎたいだけ。。」
「じゃあ僕と同じだね、一緒に泳ぐ?」
「いいよ」

しばらくバイクを走らせてると、高台から少年少女たちが海に向かって、
飛び込みジャンプして遊んでた。
みんな真っ黒で、結構高いとこから飛びこんでる。
「楽しそう、あそこ行く?」
「うん、いいよ」

子供達に混ぜてもらって海に飛び込んだ。
あー気持ちいい、
なんか青春感じる。
海外に出るまで綺麗な海を見たことがなかった。
思春期にやりたかったことを20代で経験し直しているみたいだった。
いや、青春はいつでもどこでもその気になれば手に入るのかもしれない。

高台に登っては海に飛び込んで、また登っては飛び込んで。

「そういえば名前は?」
「ミンチー」
「何歳?」
「19歳」
「この島に住んでるの?」
「ううん、私は台中に住んでいて、友達がこの島に住んでるの、
だから宿代とかはタダなの。いいでしょ?」

ミンチーは笑うと子供みたいだった。
夕方に一旦別れて、夜涼しくなってから、
ミンチーのいる友達の家にバイクで向かった。
ミンチーは可愛いワンピースを着て出てきた。

「今から一緒に散歩しよう」
「うん、いいよ」

行けるところが限られているので、結局また昼に遊んだ高台に向かった。
もう子供達はいない。
海からは、生温かく強烈な風が吹いていた。

テトラポット沿いの先端に座って話をする。
台中で通っている大学のことや、両親のことを教えてくれた。
英語を話せるようになりたくて、独学で覚えたんだそうだ。
英語の勉強法が僕と似ていた。
今夏休みで、しばらくこの島にいるらしい。

いろんな話をたくさんしたけど、
会話が途切れても、波の音が心地よかった。
マリファナはなかったけど、ナチュラルハイだった。
見上げるとこれでもかと星があった。
本当に自然に近いところでは夜がとても夜らしかった。

何も言わずにミンチーにキスをした。
彼女は硬直して唇が動かない。

「ごめん、突然。でもキスしたかった」
「私のファーストキス…」
「え、ファーストキス?」
「そーだよ。あなたに人生初のキスされた」
「今日一緒にいてすごい楽しかった。なんか俺、もうミンチーのこと好きになった」

真っ黒い空には月があった。
月明かりに目が慣れてきて、彼女の表情もわかるようになった。

「あなたはプレイボーイ?」
「違うよ、なんで?」
「ねえもう一度キスして」

今度は肩を抱き寄せてもっとちゃんとした長いキスをした。
ミンチーの目がトロンとしてきた。
何時間か過ぎて、気温が低くなってきた。
夜風を浴び過ぎて身体も冷えてきた。

「今日はもう帰ろう、明日また迎えに行く」
「うん、いいよ」

彼女を送って、別れ際にもう一度キスをして自分も宿に帰った。
台湾で誰かと出会える予感がしていたのは、当たっていた。

次の日彼女を迎えに行った。
彼女は僕が一緒の部屋に泊まれるか友達に聞いていた。
「ここなら宿代もかからないよ、おいでよ」
「じゃあ浮いたお金で一緒にご飯食べよう」
ということで、彼女の友達にもOKが出て彼女と同じ部屋を使わせてもらった。
流れがスムーズでとんとん拍子にすすむ。
旅とはこうあるべきだと思った。
人生もこうあるべきじゃないのか?
どうしていつもうまくいかず、モヤモヤしたり時間がかかるのだろう。
ひとりでにパズルのピースがはまっていく方が気持ちいいに決まってる。
望んだことがすぐに現実になっていく。






























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