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第19週 金曜日 芸術家 辰巳 芳子
19人目の芸術家は日本の料理研究家、随筆家の辰巳 芳子さんです。
辰巳 芳子(たつみ よしこ)さんは1924年東京・目黒・長者丸(東京都品川区)に父・芳雄氏(大成建設常務取締役)、母・浜子さんの長女としてお生まれになりました。
5歳の時に最愛の祖父が亡くなっておられます。
辰巳家は加賀藩の家臣で、祖父は横須賀海軍造船校舎へ入学され18歳でフランス留学された日本で初めての軍艦を造ったのちに三菱造船の創立に関わった方だそうです。
1941年高校2年の時、カトリックの洗礼を受けられます。洗礼名は「テレジア」だそうです。
その後、父の赴任先の名古屋で柳城保育専修学校(現・名古屋柳城短期大学 )に進学されます。
1944年 早春に結婚されます。3週間余りで夫はフィリピンに出征され9月に戦死されます。
1945年芳子さんは 東京の実家に戻られます。国立教育研究所の実験保育室に勤務されますが、結核を発症されます。快復して慶應大学の心理学科へ入学するが、結核がまた再発されます。その後15年に及ぶ療養生活を余儀なくされています。
1964年 40歳の時、料理家として活躍し始めた母・浜子さんの手伝いを始められます。包丁を持っても、火加減の感覚も鈍っていなかったことに自信を取り戻されたそうです。
1965年 鎌倉・雪の下(神奈川県鎌倉市)から、浄明寺(神奈川県鎌倉市)に移り住まれます。そしてお母さんの代わりに、自宅で料理を教えるようになられます。
その後、イタリアで料理を学び、フランス料理は宮内庁大膳寮で修行を積んだ加藤正之氏に13年間指導を受けられます。
イタリア料理をローマで学んだときに出会った生ハムを鎌倉で再現したいと試行錯誤を20年間繰り返し、成功させておられます。また久里浜(神奈川県横須賀市)の少年院篤志面接員を10年間務められています。
1972年 お父さんが脳血栓の再発で入院されます。嚥下困難になったお父さんに、母娘でスープを作って日参されます。これは介護食「いのちのスープ」と呼ばれるようになりました。芳子さんは恩師・加藤氏に教えられたスープの大切さが父の命を支える事を実感されます。
1977年 お母さんの浜子さんが72歳で死去されます。
1980年 お父さん芳雄氏も死去されます。
その後鎌倉のタケダ訪問看護クリニックでスープのサービスを始められます。4年間週1回弟子を連れて、30人分のスープを届けられます。
1994年70歳の誕生日を祝う会で芳子さんはNPO「良い食材を伝える会」を発足させられます。
1996年 鎌倉の自宅で「スープの会」を始められます。そしてスープの本の執筆を始められます。
2004年 芳子さんの呼びかけに長野・信越放送が賛同し、NPO「大豆100粒運動」を発足します。この活動で1900人以上の児童が大豆をまきました。
2006年 高知・近森病院でいのちのスープを600人の患者に提供されます。
2009年 滋賀・大津市民病院緩和ケア病棟でもスープサービス開始されます。この活動によって芳子さんは日本緩和ケア学会のシンポジウムに招かれる。
2010年 独自の流動食を提案されます。
そして現在まで多くの料理本を執筆され、病苦に苦しむ父への介護食「いのちのスープ」に代表される家庭料理の大切さを雑誌、著作、テレビなどで伝えている。
2012年11月3日ドキュメンタリー映画
『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』 -というドキュメンタリー映画が公開されました。
近年は安全で良質な食材を次世代に残したいとNPOの活動を通して「命に直結した食の大切さ」を訴え続けておられます。
たくさんある著書の中のいくつかをここに紹介します。
『辰巳芳子の旬を味わう いのちを養う家庭料理』、NHK出版 1999年
『辰巳芳子の「さ、めしあがれ。」』クロワッサンBooks、マガジンハウス 2016年
『あなたのために いのちを支えるスープ』、文化出版局 2002年
『辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部』、文春新書 2011年
『食といのち』、文藝春秋 2012年、文春文庫 2014年
仕込みもの』、文化出版局 2013年
『辰巳芳子の野菜に習う』クロワッサンBooks、マガジンハウス 2016年
『お肴春秋』、岩波書店 2020
芳子さんには以下の名言があります。
「スープに托す」
人の生命のゆきつくところは
愛し愛され、ひとつになることを願い
それをあらわさずにはおられぬ仕組みを
生きるところにあると思います
人間の尊厳も自由も
互いに愛惜せねばならぬ根源も
ここに、見だされてなりません
これが、スープの湯気の向こうに見える実存的使命です。
以下のページから様々なスープ教室などの情報を得ることが出来ます。
めぐめぐがすごいと思う辰巳芳子さんのこと
1特に戦時期に苦労され、ご自身も病気になられていること。そして40歳になってから生涯のお仕事に出会われること。
2ご両親の介護の際スープの素晴らしさを痛感され、そのスープ活動を全国の多くの病院でで展開されていること
3また大豆を播く活動などでこれからの世代に料理の素晴らしさを伝えている活動を続けておられること。
美しい料理を作るという意味で芸術家の分類に入れました。益々のご活躍を祈っております。
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