見出し画像

部下が「打たれ弱い」のは誰のせい?:折れない部下を育てる2つの方法

 「最近の若者は打たれ弱い」といった言葉をよく耳にします。「部下を叱ったら、凹んでしまって中々立ち直らない」「あの子はプレッシャーに弱くて困る」と言った上司の声から、打たれ強い人を採用する動きや、研修で彼らのメンタルを鍛えると言った動きも見られます。しかしながら、ビジネスパーソンの打たれ強さは、必ずしも「本人の能力やメンタルだけの問題」ではなく、職場環境や周囲からのサポートにも大きく影響を受けることが、明らかになっています。  つまり、職場環境をデザインしていくことにより、  彼らの適応や立ち直りを支えていくことが可能です。この記事では、近年のレジリエンス研究から、折れない部下を育てる方法についてご紹介します。

折れない部下を育てる方法

 折れない部下を育てる方法は(1)変化や逆境への対処方法を学習する機会の創出と、(2)情緒的なサポートの提供に分類できます。

(1)変化や逆境への対処方法を学習する機会の創出

 変化や逆境に備え、その対処方法について学習することは、従業員の打たれ強さを導きます。例えば、以下のツイートにあるように、レジリエンスは学習文化、探求と対話、知識共有構造によって促されることが確認されています。スキルアップや新しい技術を学ぶ機会が継続的に提供されると、職場での変化にうまく適応するための知識や柔軟性が養われます。また、知識を共有することは、従業員の変化や逆境への不安を軽減するため、レジリエンスを向上させます。そのため、日々の仕事の中で、新しい知識や厳しい状況への対処方法を学ぶ機会を作ることは、部下の打たれ強さの育成につながると考えられます。

 加えて、高齢者ケアを行う看護師を対象としたインタビュー調査では、職場での経験を報告し、それを振り返ることが、彼らのレジリエンスの促進につながっていたことが確認されています(Cameron and Brownie 2010)。このように、職場で起きた出来事を振り返り次の機会に生かすような取り組みも個人の逆境への強さを導くと考えられます。

(2)情緒的なサポートの提供

 上司や同僚からの情緒的サポートもまた、従業員のレジリエンスを支える要因の1つです。ストレスの多い経験や、仕事で困難な状況を経験した後にその経験について話すことは、従業員の困難からの回復に寄与することが確認されています(e.g. Lamb and Cogan 2016Cameron  and Brownie 2010)。そのため、職場での辛い経験を聞いてあげるようなサポートも部下のレジリエンスを支え、折れない部下を育成することにつながると考えられます。
 また、Cooke et al.(2019)は部下の福利厚生に配慮し、彼らに友好的で支援的な職場環境を提供するようなリーダーシップが、部下のレジリエンスにポジティブな影響を与えることを確認しています。そして、この関係の強さは、仕事上のプレッシャーが高い場合、より強くなると言われています。すなわち、過酷な職場における、部下の打たれ強さを支えるには、「最近の若者は打たれ弱い」と言って、突き放すのではなく、彼らに対し友好的に接し、状況に応じた適切なサポートを提供していくことが重要になってくると言えます。

まとめ
①ビジネスパーソンの打たれ強さは、必ずしも「本人の能力やメンタルだけの問題」ではなく、職場環境や周囲からのサポートにも大きく影響を受ける
②折れない部下を育てる方法には、変化や逆境への対処方法を学習する機会と、情緒的なサポートがある

参考文献
Hartmann et al. (2020) Resilience in the workplace: A multilevel review and synthesis. Applied Psychology, 69(3):913-959





いいなと思ったら応援しよう!