【3分でわかる】『関心領域』レビュー
あらすじ
綺麗に整えられた大きな庭。
大きな犬が自由に駆け回り、子供達のはしゃぐ声が響く家。
美人な妻はいつも笑顔で夫を出迎え、夜には家に暖かな光が灯る。
その家は平和そのもののように見えました。
家がアウシュビッツ収容所の真横にあることを除いては…。
豊かな暮らしの中に潜む闇。
笑顔の裏にある残虐な顔。
無邪気さの裏に潜む狂気。
正義の境界が曖昧な世界で、『幸せ』を求め続けた家族の物語です。
続きは本作でご覧ください。
みどころ
1)無関心という恐怖
この映画では、その人にとって重要ではない部分、つまり関心領域以外のところはまったく目に入らなくなってしまうということを如実に描いています。
家からは毎日何千人もの罪のないユダヤ人を焼き殺している大きな煙突が見え、耳をすませば銃声や看守の怒鳴り声が聞こえてくる。
そんな異常な状態でもこの作品に出てくる家族にとってそこは重要ではなく、自分たちの暮らしが穏やかで豊かであることが大切なのです。
他人にとってはとても耐えられない光景でも、自分たちにとってそれが『日常』になってしまえば、それは関心の外に追いやられてしまう。
人は見たいものしか見ない、ということを改めて感じることができた作品でした。
2)危うさの上に成り立つ幸せ
物語の後半になるにつれて、家族達の心のうちに潜む闇がだんだんと見えてくるようになります。
兄は弟を虐めることに楽しさを見出すようになり、妻は愛する夫よりも贅沢で裕福な今の暮らしを優先するようになります。
そして夫も次第に司令官という役目に魂を吸われていっているように見えました。
異常な環境に置かれた家族の心が少しずつ闇に侵されていく様子を観ていくうちに、この家族の行く末が気になってしまいました。
賛否分かれる作品かと思いますが、歴史が好きな方はより楽しめる映画かと思うので、気になる方はぜひ一度ご覧ください。