石丸市長の「財政説明会資料」ー所沢市版をつくってみた
安芸高田市の財政説明会が面白かった
広島県安芸高田市の石丸市長を知っていますか。京大経済学部卒業後、三菱UFJ銀行に就職。アナリストとしてNY駐在も経験されました。
2020年の河井夫選挙違反事件で、当時の市長が辞職したことをきっかけに、市長選に立候補・当選します。
YouTubeで見る地方行政
石丸市長を知ったきっかけはYouTubeのお勧め。
議員の居眠り問題を指摘したことから議会との対立が始まり、そのやりとりが面白おかしく切り抜きでまとめられています。動画の殆どはエンタメ要素も強いものですが、時々「地方行政」の講義を受けている気分になる。
自分がいかに地方行政に無関心であったかを突き付けられるとともに、ふと「我が故郷は大丈夫だろうか・・・?」と不安にさせられます。
体感3秒の財政説明会
3秒は言い過ぎかもしれないけれど、あっという間に見終わってしまうので是非見て欲しい。
行政からのお知らせは、堅苦しくて安眠効果抜群ですが、
この説明会は素人にも分かることを前提に作らています。
所沢市の「財政説明会資料」をつくってみた
このプレゼンを見ると、自分の故郷版の資料が欲しくなりませんか。
ということで、市が公開している「決算カード」の情報を元に、グラフを作ってみました。
所沢市は「財政トークス」という、市民向けに分かりやすく書かれた資料を発行している(初めて知った・・・)ので、それと答え合わせをしながら進めます。
経常収支比率は91超%ー自由に使えるお金は少ない
改善傾向にあるものの、所沢市も財政は硬直化していると言えます。
30万円の手取りだとすると、275,700円が固定支出。趣味や旅行、習い事等、自由になるお金は24,300円です。
歳入は1,000億円規模ー微増傾向?
歳入は21年度比で+3%(3.7億円)。
増加要因は繰入金(+67%)と繰越金(+25%)の影響が大きそうです。ただこれ、「基金(貯金)の取り崩し額や、前年度からの繰越額」とのことだけど、それはプラス要因なのか謎です。前年度の繰越利益剰余金が当期のPLに入ってくるような感覚があります。
2020年の国庫支出金は、新型コロナウイルス対策関連っぽいですね。
歳出は横ばい
安芸高田市の説明会でもありましたが、義務的経費は「支出が義務的で、市の判断で削減できない経費」です。
それ以外の項目を見てみると、21年度比で最も多く支出したのは「補助費等」で+17%(18.5億円)です。「各種団体への助成金ほか、市が支払う保険料などの費用」とのこと。内訳までは発見できませんでした。マイナンバー関連とか入ってくるのかな。
数字があわない公債費比率
公債費比率は「借金(市債)の比率が身の丈に合ったものか確認するための指標」。「公債費の一般財源に占める割合」ということで、歳入と公債費を用いて算出してみました。
ただ「所沢市財政トークス」と数字が合いません。令和3年度でみると、公債費を歳入で割ると6.1%。市の資料では3.9%です。
見過ごすには数字のギャップが大きすぎたので、検索してみると、どうやら「実質公債費比率」を出すための計算式がある模様。
うーん、分からん。「そういうものか」と思うことにします。
感想:
知っていることが、出発点
作ってみた感想は、思った以上に面白かったです。
純粋に勉強になりますし、市政について「なんでだろう?」という視点が持てるようになります。
例えば、行政にとって「経常収支比率」「公債費比率」が重要な指標で、この数字が悪いと自由な政策はとれなくなるんですね。逆にどれだけ余裕があると分かっていれば、更なる要望が出しやすくなるかもしれません。
それが分かると、選挙への向き合いかたも変わってくるでしょう。候補者に直接質問して、確かめてみたくなることも出てくるのではないでしょうか。
理解し考えることを前提に「情報開示」はされていない?
一方で、素人がまっさらな状態から地方行政の財政を知るのはかなり難しいと思いました。
今回は「石丸市長の解説に基づいてスライドを作ってみよう!」という、いわば地図がある状態で情報収集をしました。「経常収支比率」「公債費比率」で検索出来たのは、それが財政で重要な指標だということを、熱意をもって知らされていたからです。
「欲しい情報」の判断にも一苦労です。
市のHPに行くと、「財務書類」「決算版」等、色々なリンクがあります。どれも正しいはずなのに、なぜか歳入・支出の金額がファイルによって違うぞ?と思うことも。
結局「決算カード」を使うことになるのですが、今でもどのように辿り着いたのか分かりません(笑)
また、いざデータを加工してみようと思うと、ファイルの形式もPDFだったり、Excelのセルが謎の結合をされていたり・・・。
上下水道のスライドがないのは、内容が細かくて難しかったことと、本来1枚であろうスライドが、PFDで2枚に分裂されてアップロードされていて、心が折れたからです(笑)
情報が開示されていることは、あくまで素材が置いてあるだけで、一般市民が(各々の生活を営みながら)それらを理解し・考えられるようになるにはひと踏ん張りが必要です。
市民と行政が「理解し合う」ための熱量
手取り足取り政治のことを教えてくれ!というのは無理な話で、有権者が理解しづらい情報を必死に読み解くことで見えてくるものがあると思います。
ただ石丸市長のプレゼンの分かりやすさを目の当たりにすると、「有権者に状況を理解し、自分で考えて貰いたい!」ということへの熱量は、きっと大きな効果をもたらします。
そうしてお互いが歩み寄る(ように要望する)ことが、より良い街づくりへとつながっていくのではないでしょうか。
ちょうど10月22日に所沢市長選挙もあるということで、まとめてみました。
立候補者は小野塚勝俊氏、杉田まどか氏、藤本正人氏です。
出典
決算カード:https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shiseijoho/zaisei/kessan/kessantoke.html
実質公債費比率の計算式:https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shiseijoho/zaisei/zaiseijyouho/zaiseinotubo.files/tubo26.pdf