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【2024年版】今年読んで良かった本10選。

引っ越しで慌しかった年の瀬に、少し一息ついて、今年の読書の振り返りを。

今回は、私が2024年に読んだ中で、特に良かった本を10冊ご紹介します。


選んだ10冊のうち、ほとんどが小説です。

今年も様々なジャンルの小説を読みましたが、特に以下のような作品が刺さったように思います。

・戦争の歴史を扱った重厚な小説
・海外を舞台にしたハードボイルド風の小説
・愛、人間について深く考えさせられる小説

皆さまの2025年の読書を豊かにしてくれる、素敵な作品が見つかりましたら幸いです。





逢坂剛|カディスの赤い星


フリーのPRマン・漆田亮は、得意先の日野楽器から、ある男を探してくれと頼まれる。男の名はサントス、二十年前スペインの有名なギター製作家ホセ・ラモスを訪ねた日本人ギタリストだという。サントス探しに奔走する漆田は、やがて大きな事件に巻き込まれてゆく。直木賞を受賞した、著者の代表傑作長編。第96回直木賞、第40回日本推理作家協会賞、第5回冒険小説協会大賞受賞作。


逢坂先生の処女作にして、1986年の直木賞受賞作。
フランコ体制のスペインを舞台に、様々な人々の思惑が複雑に絡み合う、本格ハードボイルド小説です。

一本のギターを巡り、日本とスペインをまたにかけた、命懸けの駆け引きが繰り広げられます。
主人公・漆田のやや昭和風な格好良さにも惹かれますし、幾多の苦難を潜り抜けた先に待つラストも素晴らしかったです。

海外を舞台にしたハードボイルド・冒険小説が好きな方におすすめです。
上下巻ですが、スリルとロマンスに魅了されるうち、あっという間に読み終わります。





池上永一|ヒストリア


第二次世界大戦の沖縄地上戦で家族とすべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉(ちばなれん)。戦後の闇市で一時の成功を収めたのも束の間、米軍のお尋ね者となった煉は、新天地を求めて南米ボリビアへと渡る。しかしそこも楽園ではなかった。移民にあてがわれたのは伝染病が蔓延する未開の地。呆然とする煉に、米諜報機関CICの魔手が迫る。一方、魂が分裂したもう一人の煉は、若き革命家チェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまった……。


第二次世界大戦下の沖縄で全てを失い、遠く離れた南米の地で再起すべく奮闘する、ひとりの女性の生き様を描いたハードボイルド小説。
第8回山田風太郎賞受領作です。

主人公・知花煉の人間の描き方が素晴らしく、どんな逆境にも身ひとつで立ち向かう強かさと、人心を掌握する巧みな知性をあわせ持つ、奥の深いキャラクターでした。

チェ・ゲバラなどの実在した人物が登場し、キューバ危機など有名な歴史的事件の”裏の物語”として描かれている点が、とても面白かったです。

そこに、魂(マブイ)が分裂したふたりの主人公が、それぞれ別の人生を生きるというファンタジー要素も合わさることで、深みのある小説に仕上がっています。





V・E・シュワブ|アディ・ラルーの誰も知らない人生


誰の記憶にも残らない人生の誰にも忘れられない物語——1714年、フランスの小さな村。アディ・ラルーは、広い世界に憧れ、運命の恋人との出会いを夢見ていたが、望まぬ結婚を強いられてしまう。 追いつめられたアディは、古い神々のひとりと取引し、望みどおり自由に生きる時間を手に入れる。しかし、その取引には落とし穴があった。 アディは誰の記憶にも残らなくなってしまったのだ。家族からも忘れられ、世界中の誰からも消えた存在になった……。〈ニューヨーク・タイムズ〉ベストセラーリスト44週ランクイン、31カ国で翻訳が決定した、話題のロマンティック・ファンタジイ。


神の呪いによって「誰の記憶にも残らない存在」になってしまった女性の生涯を描く、壮大なファンタジー小説。

主人公アディ・ラルーは、「人々に一瞬で忘れられる呪い」をかけられると同時に、永遠に歳を取らない不老不死になります。

彼女は幾世紀もの間、様々な国々をひとりで渡り歩く、長い孤独の旅を続けます。
全世界の全人類から忘れ去られるという絶望的な孤独に、胸を締め付けられました。

そうして彼女が人の心を失いかけた頃、数百年ぶりに、自分のことを忘れない男性と出会い——というお話です。
こんな物語、面白くないわけがない。





ビル・パーキンス|DIE WITH ZERO


お金の「貯め方」ではなく「使い切り方」に焦点を当てた、これまでにない「お金の教科書」。経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙なども絶賛!あなたの人生観をガラリと変える「人生が豊かになりすぎるお金の使い方」とは?
・一刻も早く「経験」に金を使う
・「収入の〇割貯金する」をやめる
・子供には死ぬ「前」に与える
・45〜60歳には資産を取り崩し始める
・「死ぬまでにやりたいこと」は時期で考える
・ゼロで死ぬ……
私たちの人生をがらりと変える「人生が豊かになりすぎる究極のルール」を紹介。さまざまな気付きを与えてくれる人生のバイブルとなり得る一冊です。


今回唯一のビジネス書です。
老後に備えてお金を貯めることが絶対的正義と考えていた私に、新しい価値観をもたらしてくれた一冊です。

本書では、「今しかできないことにお金を使う」ことの重要性が説かれています。

たとえば海外旅行は、歳を取ると、場所によっては体力的に行けなくなってしまうことが起こりえます。
若いうちに積極的に投資しないと、気づけばもう行けなくなっていた……という事態に発展しかねません。

年齢や時間の流れによる機会損失は、後から取り戻せない。
これまでの自分の生き方を改めるきっかけになった本でした。





米澤穂信|冬期限定ボンボンショコラ事件


小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。冬の巻ついに刊行。


2024年にアニメ化された米澤穂信さんの「小市民シリーズ」。
前作からなんと15年ぶりとなる、待望の最終巻が本作です。

高校生の頃から大ファンで、ずっと待ち侘びた小市民シリーズの最新刊。
刊行のニュースを見たときは、本当に驚きました。

「小市民シリーズ」は「日常の謎」というジャンルのミステリで、一癖も二癖もある高校生たちが、日常に潜む謎を推理していきます。

作中に多種多様なスイーツが登場することも特徴で、今年シリーズ全作を読み返した際に、登場するスイーツをひたすらまとめるというnoteを書きました。
こちらもぜひお読みください!





朝倉かすみ|平場の月


朝霞、新座、志木——家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、恋の太い女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる——。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。


第32回山本周五郎賞受賞作。
事前情報なく、何の気もなしに読んだ本作が、とにかく心に刺さりました。

本作は50代の男女の、不器用でもどかしい恋の物語。
幼少期に知り合ってから、互いに別々の人生を歩み、壮年期に入って再会するところから、新たな恋愛が始まります。

互いにそれまで積み重ねてきた人生の重みを背負い、ぎこちなさを抱えながらも不器用に支え合う姿に、胸が熱くなりました。

本作の魅力は、青砥と須藤が交わす会話文。
うまく言語化できませんが、ふたりの会話文には、他の恋愛小説にはない本作ならではの魅力が詰まっていると思います。





平野啓一郎|本心


愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか?「母を作ってほしいんです」——AIで、急逝した最愛の母を蘇らせた朔也。孤独で純粋な青年は、幸福の最中で〈自由死〉を願った母の「本心」を探ろうと、AIの〈母〉との対話を重ね、やがて思いがけない事実に直面する。格差が拡大し、メタバースが日常化した2040年代の日本を舞台に、愛と幸福、命の意味を問いかける。『マチネの終わりに』『ある男』に続く傑作長篇小説。


2024年に映像化もされた話題作。
AIを主テーマに据えて、愛や人間の本質に迫る傑作小説です。

自ら〈自由死〉を選択した母の本心を探るため、AIで母を蘇らせた朔也。
AI技術の発展が目覚ましい昨今ですが、その技術によって人間の命を扱うことは可能なのか、という点に注目です。

もしも自分の親が「もう十分」と自由死を選択したとき、私はその意見を尊重することができるだろうか——と考えさせられる作品でした。





早瀬耕|未必のマクベス


IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、 東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。 同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、 澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―― 「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。 やがて香港法人の代表取締役として出向を命ぜられた優一だったが、 そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。 異色の犯罪小説にして恋愛小説。


本作は、シェイクスピアの悲劇『マクベス』を下敷きにした、壮大なクライムノベルです。
今年最も印象に残っている小説かもしれません。

IT企業の管理職・中井優一は、東南アジアで謎の娼婦から「あなたは王として旅に出る」という予言を受けます。
その後に彼は、会社の不正に巻き込まれ、命を賭けた駆け引きに挑むことになります。

物語はシェイクスピアの『マクベス』の筋書きをなぞりつつ、独自の展開を見せていきます。
そこに高校時代の淡い恋心を引きずる中井と、謎めいた同級生・鍋島冬香との運命も絡み合います。

香港やマカオなど東南アジア諸国を舞台に、緊張感あるサスペンスが展開されます。
犯罪小説としてのスリリングさと、青春時代の恋愛の切なさが融合した作品です。

本作は、海外が舞台のクライムノベルが好きな方に特におすすめ。
複雑で濃密な物語は読み応えがあり、最後まで読者を飽きさせません。





川越宗一|熱源



樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。


サハリン/樺太を舞台に、近代日本の激動の波に揉まれたひとりのアイヌと、社会主義革命の最中で人の摂理と戦ったポーランド人学者の生涯を描く、壮大な歴史小説です。

国家の政策や戦争によって従来の文化・生活を脅かされた人々が、時代に翻弄されながらも、自らが守り継ぎたいものを見出していく物語に、ただただ感動しました。

故郷とは何か、文明とは善か、人が生きるとはどういうことか。
人類が繰り返す非道な歴史と、変わらずあり続ける人の信念について、考えさせられる作品でした。





カズオ・イシグロ|クララとお日さま


子供の成長を手助けするAF(人工親友)という人工知能搭載のロボットのクララは、ジョジーという病弱な少女の家庭で暮らすことになる。やがて二人は友情を育んでゆくが、一家には大きな秘密があった……愛とは、知性とは、家族とは?生きることの意味を問う感動作。


ノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロによる、受賞後1作目の長編小説。
AIが広く普及した世界で、AIの一人称視点を通して、愛や人間の真理を描こうとする作品です。

『わたしを離さないで』のように、序盤で靄がかかったように散りばめられた謎が、物語が進むにつれて明らかになっていく展開が面白かったです。

AIが搭載されたアンドロイドは、人間と共存できるのか——。
人類が直面しているこの問いに、AI側の視点から切り込んでいる点に独自性を感じました。

















◇本とインテリア、暮らしのあれこれ◇


◇マシュマロでご意見、ご質問を募集しています◇


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