【2024年版】今年読んで良かった本10選。
引っ越しで慌しかった年の瀬に、少し一息ついて、今年の読書の振り返りを。
今回は、私が2024年に読んだ中で、特に良かった本を10冊ご紹介します。
選んだ10冊のうち、ほとんどが小説です。
今年も様々なジャンルの小説を読みましたが、特に以下のような作品が刺さったように思います。
皆さまの2025年の読書を豊かにしてくれる、素敵な作品が見つかりましたら幸いです。
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逢坂剛|カディスの赤い星
逢坂先生の処女作にして、1986年の直木賞受賞作。
フランコ体制のスペインを舞台に、様々な人々の思惑が複雑に絡み合う、本格ハードボイルド小説です。
一本のギターを巡り、日本とスペインをまたにかけた、命懸けの駆け引きが繰り広げられます。
主人公・漆田のやや昭和風な格好良さにも惹かれますし、幾多の苦難を潜り抜けた先に待つラストも素晴らしかったです。
海外を舞台にしたハードボイルド・冒険小説が好きな方におすすめです。
上下巻ですが、スリルとロマンスに魅了されるうち、あっという間に読み終わります。
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池上永一|ヒストリア
第二次世界大戦下の沖縄で全てを失い、遠く離れた南米の地で再起すべく奮闘する、ひとりの女性の生き様を描いたハードボイルド小説。
第8回山田風太郎賞受領作です。
主人公・知花煉の人間の描き方が素晴らしく、どんな逆境にも身ひとつで立ち向かう強かさと、人心を掌握する巧みな知性をあわせ持つ、奥の深いキャラクターでした。
チェ・ゲバラなどの実在した人物が登場し、キューバ危機など有名な歴史的事件の”裏の物語”として描かれている点が、とても面白かったです。
そこに、魂(マブイ)が分裂したふたりの主人公が、それぞれ別の人生を生きるというファンタジー要素も合わさることで、深みのある小説に仕上がっています。
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V・E・シュワブ|アディ・ラルーの誰も知らない人生
神の呪いによって「誰の記憶にも残らない存在」になってしまった女性の生涯を描く、壮大なファンタジー小説。
主人公アディ・ラルーは、「人々に一瞬で忘れられる呪い」をかけられると同時に、永遠に歳を取らない不老不死になります。
彼女は幾世紀もの間、様々な国々をひとりで渡り歩く、長い孤独の旅を続けます。
全世界の全人類から忘れ去られるという絶望的な孤独に、胸を締め付けられました。
そうして彼女が人の心を失いかけた頃、数百年ぶりに、自分のことを忘れない男性と出会い——というお話です。
こんな物語、面白くないわけがない。
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ビル・パーキンス|DIE WITH ZERO
今回唯一のビジネス書です。
老後に備えてお金を貯めることが絶対的正義と考えていた私に、新しい価値観をもたらしてくれた一冊です。
本書では、「今しかできないことにお金を使う」ことの重要性が説かれています。
たとえば海外旅行は、歳を取ると、場所によっては体力的に行けなくなってしまうことが起こりえます。
若いうちに積極的に投資しないと、気づけばもう行けなくなっていた……という事態に発展しかねません。
年齢や時間の流れによる機会損失は、後から取り戻せない。
これまでの自分の生き方を改めるきっかけになった本でした。
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米澤穂信|冬期限定ボンボンショコラ事件
2024年にアニメ化された米澤穂信さんの「小市民シリーズ」。
前作からなんと15年ぶりとなる、待望の最終巻が本作です。
高校生の頃から大ファンで、ずっと待ち侘びた小市民シリーズの最新刊。
刊行のニュースを見たときは、本当に驚きました。
「小市民シリーズ」は「日常の謎」というジャンルのミステリで、一癖も二癖もある高校生たちが、日常に潜む謎を推理していきます。
作中に多種多様なスイーツが登場することも特徴で、今年シリーズ全作を読み返した際に、登場するスイーツをひたすらまとめるというnoteを書きました。
こちらもぜひお読みください!
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朝倉かすみ|平場の月
第32回山本周五郎賞受賞作。
事前情報なく、何の気もなしに読んだ本作が、とにかく心に刺さりました。
本作は50代の男女の、不器用でもどかしい恋の物語。
幼少期に知り合ってから、互いに別々の人生を歩み、壮年期に入って再会するところから、新たな恋愛が始まります。
互いにそれまで積み重ねてきた人生の重みを背負い、ぎこちなさを抱えながらも不器用に支え合う姿に、胸が熱くなりました。
本作の魅力は、青砥と須藤が交わす会話文。
うまく言語化できませんが、ふたりの会話文には、他の恋愛小説にはない本作ならではの魅力が詰まっていると思います。
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平野啓一郎|本心
2024年に映像化もされた話題作。
AIを主テーマに据えて、愛や人間の本質に迫る傑作小説です。
自ら〈自由死〉を選択した母の本心を探るため、AIで母を蘇らせた朔也。
AI技術の発展が目覚ましい昨今ですが、その技術によって人間の命を扱うことは可能なのか、という点に注目です。
もしも自分の親が「もう十分」と自由死を選択したとき、私はその意見を尊重することができるだろうか——と考えさせられる作品でした。
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早瀬耕|未必のマクベス
本作は、シェイクスピアの悲劇『マクベス』を下敷きにした、壮大なクライムノベルです。
今年最も印象に残っている小説かもしれません。
IT企業の管理職・中井優一は、東南アジアで謎の娼婦から「あなたは王として旅に出る」という予言を受けます。
その後に彼は、会社の不正に巻き込まれ、命を賭けた駆け引きに挑むことになります。
物語はシェイクスピアの『マクベス』の筋書きをなぞりつつ、独自の展開を見せていきます。
そこに高校時代の淡い恋心を引きずる中井と、謎めいた同級生・鍋島冬香との運命も絡み合います。
香港やマカオなど東南アジア諸国を舞台に、緊張感あるサスペンスが展開されます。
犯罪小説としてのスリリングさと、青春時代の恋愛の切なさが融合した作品です。
本作は、海外が舞台のクライムノベルが好きな方に特におすすめ。
複雑で濃密な物語は読み応えがあり、最後まで読者を飽きさせません。
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川越宗一|熱源
サハリン/樺太を舞台に、近代日本の激動の波に揉まれたひとりのアイヌと、社会主義革命の最中で人の摂理と戦ったポーランド人学者の生涯を描く、壮大な歴史小説です。
国家の政策や戦争によって従来の文化・生活を脅かされた人々が、時代に翻弄されながらも、自らが守り継ぎたいものを見出していく物語に、ただただ感動しました。
故郷とは何か、文明とは善か、人が生きるとはどういうことか。
人類が繰り返す非道な歴史と、変わらずあり続ける人の信念について、考えさせられる作品でした。
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カズオ・イシグロ|クララとお日さま
ノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロによる、受賞後1作目の長編小説。
AIが広く普及した世界で、AIの一人称視点を通して、愛や人間の真理を描こうとする作品です。
『わたしを離さないで』のように、序盤で靄がかかったように散りばめられた謎が、物語が進むにつれて明らかになっていく展開が面白かったです。
AIが搭載されたアンドロイドは、人間と共存できるのか——。
人類が直面しているこの問いに、AI側の視点から切り込んでいる点に独自性を感じました。
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