【2022年版】新潮文庫の100冊について語る
本好きの夏の風物詩。私にとって夏の訪れは、「夏の文庫フェア」によって告げられる。
「今日も、読書。」を読んでくださる本好きの皆さんには、夏の文庫フェアについて、説明は不要だろう。いつもの書店が夏一色に染まる、あの「お祭り」のことである。
角川文庫の「カドブン」、新潮文庫の「新潮文庫の100冊」、そして集英社文庫の「ナツイチ」。書店に夏の文庫フェアの特設コーナーが並ぶと、心が浮き立ち、今年も夏が来たかと感慨に浸りつつ、冊子を持ち帰るまでが一連の流れである。
カドブン=緑、新潮文庫の100冊=黄色、ナツイチ=青と、それぞれイメージカラーがある。どのイメージカラーも、各社にぴったりな気がするから不思議である。講談社文庫あたりが、イメージカラー赤で入ってきてもいいのではと思うのだがいかがだろう。
夏の文庫フェアの最大の楽しみは、どの作品がフェアの対象に選出されるかである。新作が選ばれることもあるが、基本的には各社を代表するような、売れ筋・注目の作品が並ぶ。自分の推し作品が対象に選ばれていると、誇らしい気持ちになる。
そして注目すべきは、新潮文庫の100冊の目玉、「プレミアムカバー」である。プレミアムカバーにどの作品が選ばれるのか——私にとっての夏は、これが全てだと言っても過言ではない。
プレミアムカバーとは、新潮文庫の夏のフェアでのみ出版される、特別仕様装丁のシリーズである。単色のカバーに、書名と著者名が小さく箔押しのように印字され、高級感のあるデザインになっている。
書影を眺めているだけでテンションが上がるうえに、夏のフェアでしか手に入らないというプレミア感も相まって、私はこのシリーズが好きだ。毎年欠かさずチェックし、2014年頃から集めている。
プレミアムカバーとして出版されるのは、1年でわずか8冊のみだ。選出されるのは、国内・海外の「古典的名作」と呼ばれる小説ばかり。
太宰治『人間失格』と夏目漱石『こころ』をはじめ、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』やコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの冒険』、星新一さんのショートショート集など、名作揃いである。
今年のラインナップは、以下の8作である。そのうち、私は太字の作品を購入した。
購入作品をひととおり読んだので、一言で感想を書く。
向田邦子|思い出トランプ
直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を含む、13編の短編集。日常における心の機敏を鋭くとらえ、短い文章で的確に表現されている。
フランソワーズ・サガン|悲しみよ こんにちは
太陽と海が眩しく輝く夏の南仏で、指摘に紡がれる恋のヴァカンス。放蕩と安定の狭間で、息が詰まるほどに人を愛する、胸に刺さる小説。
星新一|妖精配給会社
「ある戦い」と「ひとつの装置」というショートショートがおすすめ。広大な宇宙の、連綿と続く時間の中で、人類が物凄くちっぽけな存在であることに気付かされる。
梶井基次郎|檸檬
著者の感受性があまりに強く、それ故に苦しんだり、反対に心が安らいだりする様子が、文章から伝わってくる。「過古」という詩的な短編が良い。
宮沢賢治|新編 銀河鉄道の夜
「銀河鉄道の夜」の宇宙の描写は、何度読んでも想像力が刺激され、テンションが上がる。宮沢賢治の文章は、音楽を聴くようにするすると頭に入ってくる。
また、毎年恒例の特典にも注目だ。新潮文庫の100冊の対象商品を購入すると、レジでノベルティをもらうことができる。
今年は、イメージキャラクターの「キュンタ」がデザインされた、「ステンドグラスしおり」だった。
めちゃめちゃ可愛い。綺麗。センス良い。
昨年までの「うちわしおり」よりも小さく、スタイリッシュで、普段使いしやすいしおりかもしれない。
そして、なんとなんと今年、遂に「純金キュンタしおり」に当選してしまった。
純金キュンタしおりとは、新潮文庫の100冊の本をTwitterやinstagramにハッシュタグをつけて投稿すると、抽選で当たるプレミアしおりである。
24Kの純金加工。小さいが、ずっしりと重たい。普段のしおりとして使いたいけれど、勿体無くて使えない。大切にしまっておく。
新潮社さん、素敵な文庫フェアをありがとうございます。新潮文庫の100冊を、もっともっと盛り上げていきたい。
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