#3 火の鳥全部読む |巨匠・手塚治虫のスゴすぎる漫画表現をまとめてみた
手塚治虫の『火の鳥』を、全部読みました。
『火の鳥』は疑いようもない傑作で、人間とは何者か、生と死、罪と罰、現世への執着と輪廻転生について、どこまでも深く問いかけてくる作品でした。
「火の鳥全部読む」と題し、全4回に分けて、本作を好き勝手に掘り下げていくnoteを書いていきます。
もしまだ『火の鳥』を未読の方がいらっしゃったら、まずはぜひ読んでみていただきたいです。絶対に読んで後悔しない傑作です。
そのうえで、こちらのnoteに帰ってきていただけるとありがたいです。一度『火の鳥』を通読したうえでお読みいただいただ方が、より楽しめるnoteだと思います。
巨匠・手塚治虫のスゴすぎる漫画表現をまとめてみた
第3回目となる今回は、日本の漫画の歴史を作った巨匠・手塚治虫先生の、スゴすぎる漫画表現について。
手塚治虫(1928-1989)は、昭和日本を代表する漫画家・アニメーション作家。
『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『ブッダ』など、現代でも多くの人に親しまれる作品を数多く手掛けました。
彼の生み出す漫画やアニメーションは、後世の人々に大きな影響を与えました。
日本のMANGA・ANIME文化を創った先駆者とも言えるかもしれません。
そんな手塚先生の代表作でありライフワーク『火の鳥』には、あっと驚くような、革新的・実験的な漫画表現が数多く見られます。
手塚先生が試みた様々な漫画表現の模索は、日本の漫画文化の土台を築くうえで、なくてはならない取り組みだったと思います。
『火の鳥』に見られる少し変わった漫画表現が、現代の有名作品へと受け継がれていることを発見できるかもしれません。
黎明編
「黎明編」からは、以下のシーン。
ページの下半分、漫画のコマの枠を突き破り、ナギの荒ぶる感情を表現しています。なんだか4コマ漫画のようで、面白いシーンです。
一度破れたら直らないコマ枠や、地味に怪我をしているグズリなど、手塚先生の細かい遊び心を感じます。
未来編
「未来編」からは、以下のシーン。
右下から中心へと反時計回りに進む1コマで、時系列を表現しています。こんな伊達巻きみたいなコマ割りが成立するなんて驚きでした。
ページ右側、会議の場面を下からのアングルで見上げるように描いているところも、面白いと感じました。
宇宙編
「宇宙編」からは、以下のシーン。
文章で説明するのがめちゃくちゃ難しいのですが、「宇宙編」の前半では、宇宙船の乗組員4人の様子が、縦4分割で右から左に並行して描かれています。これがなんとも斬新。
こんなイメージです。横に並んでいるコマは同じ人物を描いていること、縦に並んでいるコマは同じ時間であることを表現しています。
乗組員はそれぞれ別の脱出ポットに乗っており、遠隔通信によって会話しています。全員が等しく危機的状況にあることがよくわかる、面白いコマ割りだと思いました。
復活編
「復活編」からは、以下のシーン。
「未来編」と少し似ていますが、ページの外側から内側へと時系列が進んでいくコマになっています。
同じコマの中の時系列は右上から反時計回りに進んでおり、非常に複雑な構成になっているのですが、不思議と違和感なく読めます。
火の鳥と邂逅したレオナの心の動揺が伝わってくる、どこか緊迫感のある表現です。
羽衣編
「羽衣編」は、全編を通じて面白い構成になっています。
『羽衣編』は、舞台上の演劇を読者が鑑賞するという体裁を取っています。
定点カメラのような感じで、背景は常に固定、その中を動く登場人物たちの会話劇で進んでいきます。
これがかなり新鮮で、登場人物たちが舞台上から捌けて、何もない背景だけが映し出されるコマがひたすら続く場面もあったりします。実験的な作品だと感じました。
望郷編
「望郷編」は少し趣向を変えて、作品に登場する様々な変わった惑星をご紹介。
ロミやコムたちが地球を目指して宇宙を旅する道中、いくつかの変わった惑星を訪れます。それらの惑星の描写が、想像豊かで面白いのです。
乱世編
「乱世編」からは、以下ふたつのシーン。
まずは奥羽平泉の豊年祭りのシーンで、人々が巨大な火を囲んで躍る見開きのコマ。
変わった漫画表現というわけではありませんが、迫力がすごく伝わってきませんか?
続いて、源義仲の軍勢が京に攻め入るシーン。武士の太刀筋が、漫画のコマごと人を切り裂く表現です。
漫画のコマごと切り裂くことで、戦闘シーンの迫力を最大限に伝えるとともに、そこまでグロくなりすぎないという絶妙なバランスを成立させています。
太陽編
「太陽編」からは、少し変わったコマ割りをご紹介。
ハリマが火の鳥と出会うシーンのコマ割りが、上のように左右対称の幾何学的な形になっています。
同シーンは太陽信仰の遺跡が舞台になっているということもあり、何か象徴・シンボルを表すような表現のようにも思われます。
おまけ
「乱世編」を読んでいたら、突然、私の好きなスヌーピーが出てきたので驚きました。
『火の鳥』にはこんなふうに、手塚先生の遊び心が随所に散りばめられています。
こういったシーンを探してみるのも面白いかもしれません。
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