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読書で世界一周

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世界の文学を辿る旅。各国の文学作品を1冊ずつ読み繋ぎ、世界一周を達成しようという人生をかけた挑戦です。
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記事一覧

#13 読書で世界一周 |コロナ禍のオランダを静かに勇気づけた小説 〜オランダ編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みです。 前回はドイツを訪れ、巨匠ヘルマン・ヘッセの『デミアン』を読みました。今回は、西に進路を取ってオランダを訪れます。 おそらくこれが、私にとって人生初のオランダ文学。選んだのは、サンダー・コラールト『ある犬の飼い主の一日』という小説です。 サンダー・コラールト|ある犬の飼い主の一日 著者のサンダー・コラールトさんは、オランダ・アムステルフェーン市出身の小説家。現在はスウ

#12 読書で世界一周 |ヘッセ『デミアン』 自分の人生を決定づけるのは、自分でしかあり得ない 〜ドイツ編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 前回は北欧旅の最後の1カ国、デンマークを訪れた。すっかり久しぶりとなる今回は、陸続きに南下してドイツを訪れる。 私が選んだのは、ヘルマン・ヘッセの『デミアン』。さて、今回はどんな旅になるだろう。 ヘルマン・ヘッセ|デミアン ドイツ文学を読むにあたり、どの作家のどの作品を選ぶべきか、非常に悩ましかった。 フランツ・カフカやトーマス・マン、ミヒャエル・エンデなど、ド

#11 読書で世界一周 |どうしようもない男たちによる北欧史 〜デンマーク編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 前回は”スカンディナヴィア半島編”最終回として、ノルウェーを訪れた。今回は、長かった北欧旅も残すところ1カ国、デンマークを旅する。 私が選んだのは、ヨハネス・V・イェンセンの『王の没落』という小説。さて、今回はどんな旅になるだろう。 イェンセン|王の没落 著者のヨハネス・V・イェンセンは、1873年生まれ、デンマーク出身の作家。20世紀デンマークで最も偉大な作家と

#10 読書で世界一周 |誰もが内に抱える、静かな狂気 〜ノルウェー編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 これまでお届けしてきた”スカンディナヴィア半島編”も、いよいよ最終回。今回は、半島最西端の地、ノルウェーを訪れた。 ダーグ・ソールスターさんの『Novel 11, Book 18』という小説を読む。 ダーグ・ソールスター|Novel 11, Book 18 ノルウェーと聞いて思い浮かべた小説は 「読書で世界一周」は、その国出身の作家の作品や、その国が舞台となって

#9 読書で世界一周 |”アイスランド×ミステリ”の化学反応 〜アイスランド編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 ”スカンディナヴィア半島編”、ここまでフィンランドからスウェーデンへと、陸続きに進んできた。ここで一度、北大西洋へと船を出し、アイスランドを訪れる。 アーナルデュル・インドリダソンさんの『湿地』という小説を読む。 アーナルデュル・インドリダソン|湿地 偶然にも、アイスランド スウェーデンで『ミレニアム』を読み、当初はそのまま陸続きに、ノルウェーへと移動する予定だ

#8 読書で世界一周 |スウェーデン発、北欧ミステリの世界 〜スウェーデン編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 前回から”スカンディナヴィア半島編”がスタートし、フィンランドを旅した。今回は陸続きに、スウェーデンの地に足を踏み入れる。 スティーグ・ラーソンさんの『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』という小説を読む。 スティーグ・ラーソン|ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 スウェーデンと聞いて私が思い浮かべるのは、「フィーカ」という習慣である。 フィーカとは、家族や

#7 読書で世界一周 |フィンランドの地で、少女とともに歩む人生 〜フィンランド編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 今回から、スカンディナヴィア半島編がスタートする。バルト三国から北上し、フィンランドの地へ。 フランス・エーミル・シッランパーさんの『若く逝きしもの』という小説を取り上げる。 フランス・エーミル・シッランパー|若く逝きしもの 前回の「読書で世界一周」から、気がつけば2ヶ月が経っていた。すっかり更新が遅くなってしまい、大変申し訳ございません……。 2ヶ月間ラトヴィ

#6 読書で世界一周 |ヘヴィメタルと、青春時代にしか没頭できないこと 〜ラトヴィア編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 現在は、北欧のバルト三国を周遊中。6カ国目の今回は、ラトヴィアを訪れる。 ヤーニス・ヨニェヴスさんの『メタル'94』という小説を取り上げる。 ヤーニス・ヨニェヴス|メタル'94 著者のヤーニス・ヨニェヴスさんは、ラトヴィアの首都リガから南西に約40キロ、地方都市イェルガワ出身の小説家だ。本作『メタル'94』で鮮烈なデビューを飾り、「ラトヴィア文学界の新星」と称され

#5 読書で世界一周 |エストニア語で書くからこそ、伝わるものがある 〜エストニア編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 5カ国目の今回から、北欧のバルト三国に入る。 初めはエストニアだ。メヒス・ヘインサーさんの『蝶男 エストニア短編小説集』を取り上げる。 メヒス・ヘインサー|蝶男 エストニア短編小説集 どこか手作り感を感じさせるペーパーバックの本作は、「葉っぱの坑夫」という団体から発行されている。 葉っぱの坑夫は、2000年に発足した非営利のウェブパブリッシャーだ。様々な国籍・ジ

#4 読書で世界一周 |「逃亡派」とポーランド文学 〜ポーランド編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 4カ国目である今回は、ポーランド。オルガ・トカルチュクさんの『逃亡派』を取り上げる。 オルガ・トカルチュク|逃亡派 著者のオルガ・トカルチュクさんは、ポーランド出身の小説家・エッセイスト。ポーランドで最も権威のある文学賞「ニケ賞」を受賞しており、自身で文学専門の出版社「Ruta(ルタ)」を設立するなど、精力的に執筆活動を行っている。 本作『逃亡派』は、彼女が「ニケ

#3 読書で世界一周 |戦争は女の顔をしていない 〜ベラルーシ編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 3カ国目である今回は、ベラルーシ。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの『戦争は女の顔をしていない』を取り上げる。 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ|戦争は女の顔をしていない 著者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんは、ウクライナに生まれ、ベラルーシで育った。大学卒業後はジャーナリストとして活動し、時に国家や政治と対立しながら、偏見に満ちた戦争の見方を問い直

#2 読書で世界一周 |ペンギンの憂鬱 〜ウクライナ編〜

「読書で世界一周」は、様々な国の文学作品を読み繋いでいくことで、世界一周を成し遂げようという試みである。 ロシア(ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』)から出発し、今回は2カ国目のウクライナ。 アンドレイ・クルコフさんの『ペンギンの憂鬱』を取り上げる。 アンドレイ・クルコフ|ペンギンの憂鬱 著者のアンドレイ・クルコフさんは、ロシア語で文学作品を書かれているウクライナの作家である。キエフ在住で、本作『ペンギンの憂鬱』が、国際的なベストセラーとなっている。 『ペンギン

#1 読書で世界一周 |カラマーゾフの兄弟 〜ロシア編〜

「読書で世界一周」とは、読んで字の如く、本を読むことを通じて、世界を一周しようという試みである。 最近は解消されつつあるものの、新型コロナウイルスが流行し、気軽に海外へ行くことができなくなった。元来インドア派の私にとって、海外は一層、手の届かない場所になってしまった。 そんな状況下、せめて本の世界の中で、海外を巡ってみたいという思いがあった。本の世界だからこそ、それができると考えた。 それが、「読書で世界一周」だ。 ルールは至ってシンプルだ。 国ごとに1冊、その国出