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臨床心理士、3歳児健診で見つかった遠視性不同視弱視の子どもの気持ちの変遷を予想する
こんにちは、近藤ろいです。
今4歳の上の娘は弱視治療をしています。
「遠視性不同視弱視」といいます。
左目が強い遠視であまり見えておらず、治療をしなければ将来眼鏡をかけても視力が出ないかもしれない状態です。
前回と前々回では、ひっつさんという方から頂いたコメントをもとに、子どもにとっての治療はいかなるものかを掘り下げました。
そして忘れがちな設定ですが、私、臨床心理士で、曲がりなりにも子どもの精神発達など扱ったりします。
そこで、前回の考察から少し発展させて、「3歳児健診で不同視弱視が見つかり、アイパッチ治療をすることになった子どもが、成長とともにどんな風にアイパッチを受け止めていくか」のモデルを作ってみました。
ざっくり言うと「この子いつまでアイパッチ嫌がるんだろうモデル」です。
仮にでもモデルがあれば、予想が立てられるので、「ここが踏ん張りどころ」など対処がしやすいかな、と。
前回も触れましたが、アイパッチ付きの生活という異文化に慣れるにあたり、キム氏の「異文化への適応における螺旋状図」がわかりやすいなと感じましたので、そちらをベースにしています。
(解説 https://www.hamasensei.com/u-curve/)
要は、「嫌がる → 親としても踏ん張る → 子どもも親も成長する → 嫌だけど続けるようになっていく (→また嫌になる時はくる)」
という風に、嫌と適応の波を繰り返しながら、徐々に慣れていくというものです。
臨床心理士、アイパッチ適応のモデルを描いて見る
この「子どもの成長」と「負担感の軽減」の繰り返しは、アイパッチを子どもにさせている親としても体感するところです。
そこで、私にとってはなじみ深い子どもの3歳半~就学前までの精神発達の過程と先のキムの螺旋状図と合わせ、こうしたモデル図を作成してみました。
次の通りです。
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詳しく解説すると、こんな感じです。
3歳半〜4歳前半(黄色の時期)
視力イベント
不同視弱視が見つかる。しばらく治療用眼鏡を掛けて、4歳前後くらいからアイパッチ開始。身体および精神発達
急速に言葉の力が伸び、自分や周囲について言語化できるようになる時期。
「やっぱり外しちゃだめ」など、言葉による自制が始まるようになるが、「したかないのに我慢できてしまう自分」への動揺(=4歳の壁、4歳の癇癪)。
身体の使い方も巧みになり、鉄棒でしばらくぶら下がる、ちょっとした技を編み出すなど、緩急つけた粘りある動きができるようになる。
おむつが外れるなど、「いっぱしの子ども」としての自信がつく。
→健康な意味での"クソガキっぽさ"が出てくる。急速な自我の拡大。
一方で、気持ちを立て直したり、自分でやろうとする意気込みが強くなる。起きること
眼鏡に関しては驚きつつも受け入れる。
自分を他者との対比で客観的に見ることはまだできないので、「見栄えが悪いから眼鏡やアイパッチは嫌」という抵抗は少ない。嫌がるなら生理的に不愉快だから。或いは、嫌がることで親の注意を引きたいから。
アイパッチに関して、根本的には親の価値観が絶対だという時期なので、「着けなくては」と思っている。
一旦は適応を試みる。
一方で、単純な幼さの名残で「嫌なものはイヤ!」と言ったり、
少々我慢ができるからこそ「やっぱり我慢なんかしたくない!」と言ったり。
自分が納得していないのに着けたくない、タイミングや時間数など、自分のことは自分で決めたい!という本能的な反発から、イヤイヤが増大。
言葉でかなりやり取りができるようになるが、まだまだ感情的な反応も多くて、親もイライラする。
でもここがピーク?(前半の山場)
アイパッチ時間中にやる取り組みとしては、受け身でも成り立つYoutubeやスマホゲームなどが受け入れられやすい。
3歳半~4歳前後くらいまでがこんな予想です。
「あっ、やべーこいつ発達オタクじゃん」と思われた方、正解です。
もう遅い。続けて語るよ!!
4歳半〜(ピンクの時期)
視力イベント
根気強く着けていたので、弱い方の目の視力が上がってくる。
親も子も達成感。
片目で過ごすことの不快さ、不安が軽減されてくる。精神発達
4歳半は発達の重要な節。
「…だけど、…する」という、次元の異なる2つのものを統合的に扱えるようになる時期。
例:飛びながら前に進む=スキップ、縄を回しながら跳ぶ=縄跳び、歌詞を思い出しながら音程も取る=歌唱力の口上
精神的にも、「僕はイヤだけど、必要だからする」といった、自分の気持ちは尊重しつつも目的に応じた行動が少しずつできるようになる。起きること
慣れもあり、上記のような精神的な成長もあり、アイパッチ着用が少しずつ習慣化する。
アイパッチ時間中にする取り組みも、ワークブックやビーズなど、集中力が必要なものへとバリエーションを広げやすい。
一方で、やっぱり自我の拡大時期なので、波はある。
不安や不快から嫌がっていたのが、「いつまでしなくてはならないの?」という面倒くささからの抵抗も混ざってくる(後半の緩やかな山場)。
「着ける」ことをベースにしたおふざけが始まる(例:両目にして遊ぶ、人形にしてあげる、着ける前に踏んづけて遊ぶ)。
5歳半〜(オレンジの時期)
視力イベント
視力の感受性の臨界期。
努力が実を結び、アイパッチ終了となる子も多いが、一旦終了したけどもう一度視力の低下が見られたりして悲喜こもごも。
就学前健診で異常が見つかり、クラスに眼鏡の子どもが増える。精神発達
5歳半~6歳も発達の重要な節。
「白か黒か」の二分化思考から、客観性や多面性を持ったものの見方ができるようになる。
親の想いや出来事の背景をとらえ始める。
(例 親は私のことを嫌いではないが、立場上しろと言っている)起きること
(我が子で経験していないので予想が難しいですが…)
アイパッチは随分習慣化。
周りとの比較で、恥ずかしいという想いから嫌がることはある? しかし周りに眼鏡の同級生が増えてくることもあり、孤独感は軽減。むしろちょっと眼鏡歴の先輩っぽい気分、自負になる。
という風ではないかと予想しました。
これはひっつさんのコメント
アイパッチ嫌の前半の山場は視力が上がる半年くらいの間
後半の山場は何でし続けるのというイヤイヤ
子どもの成長と視力の向上により少しずつ生活に溶け込み、抵抗は少なくなる
にも合致するかと。
子どもの精神発達って半年くらいムラがあるので、万人にぴったり当てはまる訳ではないと思いますが、一つのモデルということで。
どのくらい当たってるかな?
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今回で「アイパッチ嫌」シリーズは今回で一旦終わり。
お付き合い下さりありがとうございました。
次回からは、みんチャレのチームで話題に挙がった
「アイパッチ治療時間にどんな取り組みをしていますか?」
我が家の場合40本ノックをお送りしたいと思います。
ちょっと準備にお時間頂きますので更新しばらく滞ります。
ではまた!