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動物園に暮らす動物のシアワセって何だ?動物視点から広がる世界

タイトル:

クマが肥満で悩んでます

キーとなる言葉解説:

 市民zooネットワーク:市民が正しく動物園を理解するために動物園・水族館と市民の架け橋になる活動をしている(本文抜粋)。
 動物にとっても、人間にとっても、ウィンウィンでいられる方法を探す組織なのだと思われます。

 動物福祉:動物に与えてしまう痛みやストレスを最小限に抑えようとする考え(wiki情報)。

 エンリッチメント:動物たちのイライラを解消するための工夫。

 エンリッチメント大賞:動物園・水族館でトライされてるエンリッチメントから選ばれる賞。

 ハズトレ:ハズバンダリー・トレーニング(Husbandry Training)の略。
 ペット犬に「お手」→「ご褒美」という流れを教えるのと同じ。
 それをライオン(など?)にする訳です。ハズトレが定着すると、ライオンは爪切りごとに麻酔かけなくて良くなる。

 趾瘤症(しりゅうしょう):ツルツル床に長時間立っていると、ペンギンの足に負担がかかりできてしまうイボの様なもの。歩けなくなる事もある。

 おが粉:おかくずを粉状にしたもの。フカフカ。木くずのリサイクルなのでエコロジー面もバッチリ。しかも軽いから持ち運びしやすい。

本の要点:

 同じ言語を話し、同じ会社に所属し、同じコミュニティの人間同士でも、「アイツの幸せって何?」となる事は、多いと思う。そんな、普段は居酒屋でしか話題にならない探求を、動物園の動物にしようという試みを紹介した本。
 コミックなので、小学生でもサクサク読める(漢字のルビは少なめ)。筆者は、市民zooネットワークという団体の一般会員さん。動物園好きが高じると、推し(動物)ができて、定期的に動物園に推し(動物)を2~3時間眺める様になり、推し(動物)の食住環境や、生息域に興味関心を持ち、そして動物園全体を考えたくなっちゃう。「ファンのパワーは無限大」を体験させてくれる。

 動物園の動物は、野生本来の動きとは違う。その負荷を可能な限り取り除きたいけれど、そうすると逆にニンゲンのお客様からクレーム来ちゃう。困っちゃう。こんなケースがある。

[ドウブツとニンゲンのお客さんとのギャップ]

 ・カバ:生息域の水が濁ってるので、ちょっと濁ってるのが好き。でもニンゲンのお客さんは、管理が行き届いてないと感じる。

 ・カメ:ひっそり生きてるタイプなので、そもそもオモチャとか要らない。でもニンゲンのお客さんは、(以下略)

 ニンゲンのお客さんは、動物の基準に立って判断してない(そして気づかない)というのが、問題なのですね(だってニンゲンだもの)。ただし動物はコメントできる訳じゃないので、飼育員さんたちの試行錯誤で上手くいったアイデアを、エンリッチメント大賞として(多分毎年)表彰してるそうです。

 そんなギャップ、まずは動物の生態について知らなければ、試行錯誤はできません。なので飼育員さんや獣医さんの観察と記録によって、動物の生活はデータ化されます。健康管理もそうですが、そのデータから野生での生態との違いや、お財布(予算)と相談して改善できそうな箇所を洗い出し、実践していきます。大牟田市動物園では、すべてのエンリッチメントがリスト化され、全職員共有という、マンパワー総動員の体制。より良い動物たちの動物園ライフを応援していたりします。

クマザップ
 クマは定期的なエサで、サファリパークでもメタボ指数高めな動物さんです(とても親近感が湧きますね)。

 でもそんなクマ、野生ではあり得ません。

 なのでメタボ対策に、定時の餌を少なくしつつ、クマが食べる木や草、果物の樹木などをエリア内で栽培し始めました。またクマは昆虫も食べるので、棲家となりそうな朽木もいっぱいセットしたところ、運動量が回復。食べ物を求めて歩き回り、運動も食生活の改善にも効果がありました。そして自然に近い環境になったそうです。オスのクマは強くて怖いので、他のクマたちが逃げ込めるような場所も作り、むしろ運動量アップに貢献しているそうです。また冬眠を促すのに、冬籠の準備(食べ放題)からの冬眠。そんな自然な流れを作れたところ、繁殖や換毛期までできたそうです。

ヒルズ族への道
 フンボルトペンギンは、雪と氷なエルザの国の住民ではありません。南米チリに棲息し、魚は海で取るけれど、巣穴は陸地に作ります。だけど動物園のペンギンは、だいたい雪と氷を模したエリアに居ます。そこでフンボルトペンギンのために、水場から距離をとった丘の斜面に巣穴を設置し、土埃と草むらにまみれたフンボルトペンギンエリアを作りました。ペンギン福祉。

「行っていいんかな?」「どうやろな」

 しかし当初、ペンギン達は立派な巣穴を見上げるだけ。誰も近寄らない。飼育員さん達は、新築物件のセールスを開始しました。丘の上のランチ会、水辺近くにモデルハウスの設置などなど。その中でも効果的だったのは、新築物件の横にペンギン(ライバル?仲間?)の写真を置くという、あざといアイデア。
 既に仲間が入居してるという焦燥感と共に、俺ならもっとイイ物件ゲットだぜという自尊心をくすぐられまくった(?)フンボルトペンギン達は、ペンギンヒルズの住人となり、新居にて繁殖も成功。水場と丘の登り降りで足が鍛えられ、動物園のペンギンに起りがちな「趾瘤症(しりゅうしょう)」という足の病気とも縁がなくなったそうです。

ゾウさんの快適寝室ビフォーアフター
 みなさま、コンクリートの床で素足生活したことありますか?私はプールの監視員バイトをして、素足でプールサイドを毎日歩いていたら、ある日、カカトが浅くぱっくり割れて血が滲んできました。痛くて歩けないとはなりませんが、水が地味に滲みます。そこに靴下の繊維片が引っかかると、やっぱり地味に痛いです。
 動物園のゾウも、コンクリートの床で蹄が割れたり、怪我の原因になることが多いそうです。その傷から命取りになるような病気に発展してしまうこともあり、巨体を支える足のケアは、飼育員さんがとても気を配る項目の一つ。
 でもゾウさんの寝室って、一面コンクリートの床なんです。1日の中で、もっとも長く過ごす場所なのに、足には良くない環境でした。ゾウさんの足のために、飼育員さん達は海外研修や資料収集などをしつつ、試行錯誤をしていきます。
 その中で選ばれたのが「寝室にフカフカおが粉を敷く」という取り組みでした。厚さ10~20cm!しめて4トン!さすがゾウさん。規模が大きい。
 おが粉ベットで、ゾウさんの睡眠時間が増加!時には二度寝まで!羨ましい!2018年スタートなので、まだ4年経ってないと思いますが、ゾウさんの足はまだ良好です。

などなど、こんなエピソードが他にも散りばめられています。


エンリッチメントを試行錯誤する(主な)動物園

[動物福祉の柱、大牟田市動物園]
・ボルダリングするレッサーパンダ
・駆除したイノシシまるごとプレゼント企画(ライオンに)

[キャンプ場と温泉が隣接する 秋吉台自然動物公園サファリランド]
・アフリカハゲコウのフリーフライト(でもショーじゃない!自主的にやってくれる!気分次第!)

[ヒルズ族が棲息する 埼玉県こども動物自然公園]
・ペンギンヒルズ

[アクアマリンふくしま]
・ユーラシアカワウソの自然派子育てのススメ

ターゲットとしてる人達:

 動物好きな方々
 動物園好きな方々
 環境問題や動物福祉について関心のある教育関係の方々

心に刺さった内容:

 「動物園 もう一歩踏み込んでみよう」

 エンリッチメント大賞は、自薦も他薦もオッケー。

読了日:

 2022年1月

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