特別支援学校からの発信「視覚支援(写真・絵カードと無料ダウンロードサイト)について」
視覚支援に使うのって写真かイラストかピクトグラムかどれがいいのかな?という話と、写真・絵カード用に便利なサイトをまとめてみました。
視覚支援とは?
支援教育に関わったことのある方は、視覚支援という言葉を聞かれたことがあると思います。支援学校では、①目で見て理解するのが得意(言葉の指示だけでは難しい)、②なにをしないといけないかを覚えておくのが苦手(で、気が散ってしまうとなにをなさいといけないかをわすれてしまう)、③いろんなことに気が散って、なにをしないといけないかがわからなくなる、④言葉や文字の説明では理解や伝えることが難しい(写真やイラストならわかるし伝えられる)、⑤流れや手順が分からなくて混乱してしまう、そんな子たちがたくさんいるので、「今なにをしないといけないのか、どうやってやるのか」が見てすぐにわかるような支援をしています。それが視覚支援です。
いくつか例を紹介します。
今からなにをするのかを提示します。
(画像はより)
道具箱にイラストを貼って示すとどこになにを置いたらいいのかが一目瞭然に。どこに収納したらいいのかわからなくて散らかることもなくなるかも。
(画像は発達障害サポートセンターピュアブログより)
取組みの流れや手順のカードに写真やイラストがあるとどうするのかがわかりやすくなります。スケジュールも同じです。写真やイラストだけ提示する場合もあります。このように場所や時間などがわかりやすくなるような支援を構造化といい、アメリカのTEACCH(ティーチ)プログラムで提唱されています。
(画像はPinterestより)
(画像はザ・プロンプトより)
(画像は先生のための教育辞典EDUPEDIAより)
写真・絵カードで自分の意思を伝えることもできます。写真・絵カードを使うPECS(ペクス)というコミュニケーションシステムがあります。
(画像はピラミッド教育コンサルタントオブジャパンより)
(画像は笑顔でいこう♪〜自閉症の息子とともに〜より)
写真とイラストとシンボルの違い
視覚支援のカードをつくるときに、写真にするかイラストにするのかで悩まれた方もいるかもしれません。
(画像はザ・プロンプトより)
見てすぐにわかりやすいのは、実物と同じ写真です。最近はスマホで撮影してすぐに編集ということができるので、作るのも手軽になりました。しかし、写真の背景など、こちらの意図したもの以外に本人の意識が向かってしまうかもしれません。
また実物の写真にこだわりすぎると、例えば自宅のお風呂とショートステイのお風呂と旅行先の大浴場の全ての写真を事前に揃えるのは大変になります。経験とともに、写真からイラストへと移り、見た目は違うけれど同じお風呂という理解に繋げていくという考え方もあります。
シンボルとイラストを比較すると、子どもの実態によってはシンボルから実物を連想しにくい場合があります。リアルなイラストの方がわかりやすいでしょう。
ただ僕の経験上ですが、重度と呼ばれる子どもたちでも、繰り返し確認していけば、イラストやシンボルと実物が結びついて理解できることが多いのかなとも思います。
もちろん家庭や校内などで同じイラストが使われていれば、子どもたちはわかりやすいでしょう。でも、多様なイラストで理解できたり、文字で理解できたりと、子どもの実態と身につけてほしい力を考えて作ることも大事かもしれません(文字をつけるのか、時間も提示するのかも)。
子どもの実態によってはカードではなく、実物やその取り組みと関連したアイテムを提示するということも考えられます。
でも、考えすぎたり、こだわりすぎて時間がかかるよりも、カードを作って活用していくことが大事だ!とこの動画でも言われていました。ということで、まずは作ってみましょう。
カードを作るときの注意点
まずは作ってみましょう!と言ったもののいくつかの注意点があります。
前述の通りですが、写真を使用する場合は背景などの情報がノイズにならないように注意しましょう。特にASDやADHDの子たちはそんなノイズが気になってしまいます。
(画像は保育者が行う絵カード作成の誤り および不適切な使用方法の分類より)
イラストカードの場合も同様です。こちらの意図していないノイズに子どもたちの意識がいかないように注意しましょう。またハサミを示しているのか、ハサミで切ることを示しているのかによっても提示するイラストは変わるはずです(適したイラストがなかなか見つからない場合も多いのですが…)。
(画像は保育者が行う絵カード作成の誤り および不適切な使用方法の分類より)
(画像は記者作成より)
同じようにイラストに複数の意味がある場合は子どもの混乱のもとになってしまいます。場所と行為のイラストは分けた方がいいでしょう。
(画像は保育者が行う絵カード作成の誤り および不適切な使用方法の分類より)
(画像は記者作成より)
実際の行動や物とイラストが違うと子どもが混乱したり、指示通り動けない原因にもなります。
(画像は保育者が行う絵カード作成の誤り および不適切な使用方法の分類より)
またこのように適したイラストが見つからない困ったときに便利な「ぬれよん」というイラストの色を変更できるサイトもあります。
(画像はぬれよんより)
無料で便利なイラストやアイコンをダウンロードできるサイトの紹介
インターネットの画像検索でもいろいろな写真やイラストを保存できる世の中になりました。家庭内で使うのは私的利用の範囲内なので大丈夫ですが、教育や療育での使用は著作権に気をつけましょう。
みなさんご存知のいらすとやさんです。多種多様なイラストが無料で利用できるので巷に溢れかえっていますよね。
(画像はいらすとやより)
ドロップスはドロップレット・プロジェクトが開発、デザインしたシンボル集です。一部データや保健行事手順表などは書籍『視覚シンボルで楽々コミュニケーション』付属CD-ROMから入手できます。学校行事などもたくさんあります。
(画像はドロップレット・プロジェクトより)
3.学校で使えるイラスト素材・先生と生徒・生徒同士のかかわりなどのカット
イラストレーターのわたなべふみさんのサイトで、学校や家庭、医療福祉で使えるイラストが多数掲載されています。
(画像は学校で使えるイラスト素材より)
和歌山市が交付している自分の意思を相手に伝えることが難しい方が、イラストを指して、相手とコミュニケーションをとるためのカードです。カードのイラストデータが和歌山市ホームページで公開されています。
(画像は和歌山市より)
5.素材ダス
いろいろなイラストがありますが、シンプルで、10分15分単位の時計のイラストが使いやすくて重宝します。
(画像は素材ダスより)
大阪府が作成しているもので、診察の手順や本人の痛いところなどを伝えたり確認したりできる駅カードです。PDFデータなので必要なところだけカットして使いましょう。社会福祉法人 大阪知的障害者育成会(06-6975-3370)で購入できるそうです。
(画像は大阪府より)
歯磨きや診察用にダウンロードできる写真とイラストのカードです。
(画像はふなびき歯科より)
お金の練習プリントや歯磨きカードがダウンロードできます。
(画像はユニバーサルデザインの支援ツールや学習教材より)
電車内でのマナーのイラストが掲載されています。
(画像はみんてつキッズより)
学校向けをはじめとした豊富なイラストや教室掲示用のテンプレートがあります。
(画像はイラストポップより)
教科や特別支援などに分類された動画像のデータベースです。
(画像はIPA教育用画像素材集ひむか版より)
12.みんなの教材サイト
世界中の日本語教師を支援する、ユーザー登録制のサイトで、絵カードに利用できそうなイラストや写真の他、会話集、語いリスト、例文などの素材が、非常に豊富で充実しています。利用には会員登録(無料)が必要です。
(画像はみんなの教材サイトより)
RICOHが運営する登録制のサイトです。身近な生活のカテゴリーごとに、大量のイラストデータが無料で提供され、EPS、EMF、PNGの3形式でダウンロードできます。
(画像はプリントアウトファクトリーより)
14.ICOOON MONO
モノクロのアイコン画像がダウンロードできるサイトです。
(画像はICOOON MONOより)
15.ソコスト
ちょっとリアルなタッチのシンプルなイラストがダウンロードできるサイトです。
(画像はソコストより)
16.ちょうどいいイラスト
こちらもシンプルなイラストがダウンロードできるサイトです。
(画像はちょうどいいイラストより)
17.マテリアルアイコン
Googleが作成したsimple, modern, friendly, and sometimes quirkyをコンセプトとしたマテリアルデザインによるアイコンフォントです。Googleサーバーにあるアイコンフォントデータを使う方法と手元にアイコンフォントデータをダウンロードして使う方法があるそうです(すいません、僕自身は使ったことはありません)。詳しい使い方はこちらの記事から。また参考にしたサイトにある、ペライチ大学さんにこのようなアイコンやピクトグラムが無料で使えるサイトが紹介されています。
(画像はWEBSAEより)
高知市が公開しているイラスト集です。PDFデータなので必要なところだけカットして使いましょう。
(画像は高知市より)
19.イラストレイン
人、動物、乗り物、自然、模様、ポストカード、食べ物、女の子、男の子、花、便せん、洋服、雑貨、文字、植物、果物、海、 他、たくさんの種類のかわいらしいイラストが無料でダウンロードできます。
(画像はイラストレインより)
20.性教育いらすと
名前の通り避妊具や生理、生殖、性器、プライベートゾーンなど性教育に特化した無料のイラストサイトです。
(画像は性教育いらすとより)
21.防災無料イラスト
防災学習に使える便利なイラストが無料でダウンロードできます。なかなか探しても見つからないグッズなどのイラストもあり、サイズも選べます。
(画像は防災無料イラストより)
絵カードメーカー
ザ・プロンプトさんの絵カードメーカーは、ホームページ上で簡単に写真・絵カードが作成できます。
コバリテ・イラスト(古林療育技術研究所)とドロップス・シンボル(ドロップレットプロジェクト)、さらに5分刻みの時計イラストや歯磨きと歯科治療のイラストがすぐに利用できるのも魅力的です。
(画像はザ・プロンプトより)
カードの大きさは、コバリテさんのスケジュールボードに対応しています。
(画像はコバリテ視覚支援スタートキットより)
作成したカードをコンビニですぐ印刷することもできます。便利な世の中になりましたねー。
スマホやタブレットで簡単に絵カードが作れ、家庭やコンビニのプリンターで印刷できるアプリ「絵カードメーカー.」もあります。
市販されている絵カード
1.『絵で見てわかる! 視覚支援のカード・教材100(青木高光/杉浦徹/竹内奏子)』
2.PriPri発達支援 絵カードシリーズ(佐藤 曉)
①食事・トイレ、②着替え、③清潔・片づけ、④きもち、⑤コミュニケーション、⑥ルール・約束、⑦集団の生活など多くの種類があります。
3.コバリテ視覚スタートキット
4.視覚支援のための絵カード
まとめ
視覚支援の写真・絵カードについてまとめてみました。写真や絵に限らずですが、動画や文字があるとなにをするのか、どんな話をしているのかがずいぶんとわかりやすくなります。
これはある盲学校であったそうですが、点訳された資料やデータのない全盲の先生方の大変さをわかってもらうために、全教職員が資料なしで職員会議を進めていくと、途中で「もう勘弁してくれ、わからない」という声があがったという話を聞いたことがあります。
耳だけで全てを理解するのは大変、なので視覚的な手がかりがあればみんなわかりやすくなりますよね。
もちろん紹介したような注意点もありますし、子どもの実態に合わせた提示の方法もあると思います。僕自身も調べてみて勉強になったことがありました。あくまでも何をするのかを本人がわかりやすくするためのツールだということは忘れないでください。
視覚支援に便利な写真・絵カード、作るのにかかる手間と負担を減らすのに、そしてわかりやすいカードを作るのに少しでもお役に立てば幸いです。
参考にしたサイト
②保育者が行う絵カード作成の誤り および不適切な使用方法の分類ー指示カードの誤りに着目してー(筑波大学 水野智美)
③りとみこ日記「視覚支援で使いやすいフリーイラスト リンク集 ①②」
④ペライチ大学「アイコン・ピクトグラム素材をフリーダウンロードできるサイト33選!商用可」
表紙の画像はPHOTOSHOPVIPより引用しました。