特別支援学校からの発信「徐々に手を離していくという支援の在り方」
今回は徐々に支援の手を減らしていく「フェーディング」についてお話ししていきます。
子どもに合わせた支援の大切さ
子どもに合わせた支援の大切さは説明する必要がないかと思います。支援学校にいる子たちの多くは、一つひとつのことを身につけるのに時間がかかります。そのため、課題を細かく分けてスモールステップで取り組んだり、こちらが声かけや手伝う支援をしたり、環境を調整したり、便利な道具を使ったりします。
新しいスキルを身につけるのは大変なことです。なので、個人的には練習して練習して苦労してスキルを身につけることだけでなく(もちろんそういった経験が子どもたちの人生にとってプラスに働く面もあると思いますが)、環境を整えたり、道具を工夫するという視点をもっと多くの人にもってもらえたらと思います。
ゴールはその子によって異なる
身近なものでたとえれば、「自転車が難しいなら補助輪をつければいいじゃない」みたいな感じです。
他にも文字を書くのが苦手ならキーボードを使えばいいし、整頓が苦手ならどこに置いたらいいのかを視覚的に示せばいいし、黒板の文字を写すのに時間がかかって間に合わないのなら写真で撮ればいいというようなものです。
ただ、目指すゴールはその子によって異なります。
先ほどの自転車の例をだすなら、補助輪がゴールの子もいれば、補助輪を外す子も、スピードを競うことを目指す子もいます。
そして支援学校を卒業した先の進路では、学校と比べて職員数が少なかったり、自分から支援を求めていかないといけない場所が多いと思います。
子どもが一人でできるよう徐々に手を離していく(フェーディングという視点)
繰り返しますが、子どもによってそれぞれのゴールは異なります。
ただその子のゴールや先のことを考えると、徐々に支援の手を減らしていき、本人がひとりでできるようにしていくことも必要な場面が出てきます。
この徐々に手を離していくことを「フェーディング」といいます。フェードアウトなんかのフェードと同じだそうです。
僕はこのフェーディングを説明するときに、自転車の補助輪を外したての子の練習の場面をよく引き合いに出します。
最初は親御さんが身体や自転車の荷台などを支えてバランスを取る感覚を体感させるでしょう。でも、いつかは手を離しますよね。僕も手を離されました笑。子どもは「絶対に手を離さないで」と言うかもしれませんが、こちらは「持ってるよ、大事だよ」と言いながら、少しずつ手を離しつつ、また持ちつつを繰り返し、徐々に子どもが一人でバランスを保ちながら自転車をこぐ時間を伸ばしていき、最後に一人で乗れるようになる。あの感じをイメージしてください。
子どもとの関わり方でもそうです。最初は「静かにしようね」「このときはこんな風に伝えるといいよ」と具体的な方法や行動を提示し、こちらが見本を見せますよね。視覚的にわかりやすい絵や写真を提示してもいいかもしれません。そこから、子どもが実際に試す中で、ほめたり、サインを送ったり、具体的にどこを変えればいいかを伝えたりしていきます。
最初は見本を見せて手取り足取り教えても、子どもの進展に合わせて、徐々に声かけや写真カードの提示するような支援に変えていきます。声かけも「●●のときはこうしましょう」から「●●のときはどうするんだったっけ?」「●●できていていいね」のように少しずつ変わっていくはずです。そうして、徐々に支援の手を減らし、子どもが一人でできる範囲を増やしていくのです。
支援を減らす必要があるのかという声に対して
「そんなことしなくても支援を受ければいいじゃないか」「支援の手は手厚ければ手厚いほどいい」そんな声もあるかもしれません。
でも、それに対する1つの返答として、先程の支援学校を出た後の進路先のことが僕の頭の中にあります。支援学校というのはある意味では恵まれた環境で、進路先を考えて施設を見学して回る中でそのことに気づかれる保護者の方や子どもたちが沢山います。全ての希望が叶う夢のような場所はなかなか見つからないのが現実です。
もう1つは、自分でできるという選択肢がある方が自由で融通がきくからです。このことは以前別の記事でも書きました。
もちろん子どもによって目指すゴールは変わると思いますし、何を大事にするのかも人によって異なります。
日々子どもとの関わる中で、なかなか先のことを考える余裕がないこともしばしばあります。支援学校という場にいる僕がそうなるのですから、家庭でも同じかもしれません。
ですが、その子の進路や人生での自己選択自己決定を考えたときに、支援の手を減らしていくフェーディングという視点も大事なのではないでしょうかと思い、今回、紹介させていただきました。
拙い文章で恐縮ですが、そういったフェーディングの視点についてお話ししました。足すだけではなく引くという方法も支援を考えていく際に考慮に入れてみてはどうでしょうか。
表紙の画像は、しろくまテイル「ストライダーから自転車へ 子供4歳無事ステップアップ」より引用しました。