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特別支援学校からの発信「子どもたちが1人でできるためのヒント=プロンプト」

今回は子どもたちが行動を学んでいくための手がかりとなるプロンプトについて紹介していきます。

プロンプトとは?

子どもたちが課題や活動などをうまく遂行できないときに提示するヒント、手がかり、援助などをプロンプトといいます。

例えば、買い物をする場面で商品をカゴに入れた後にどうすればわからなくなってしまった子へ、「次のレジに並ぶ行動」をわかってもらうために、どのようなヒントや手がかり、援助などができるでしょうか?

スーパーでカートを押しながらメモを読んでいる男の子の写真

(画像はハピママより)

「一緒に並ぼうね」と伝えて身体を引っ張って誘導する、「先生と同じようにやってね」と実際にやってみて手本を示す、お店の中のレジやレジの写真を見せながら「レジに並んでね」と伝える、事前に作成していた写真付きの買い物のやり方マニュアルを見せる、「レジに並んでね」と直接的に言葉で伝える、「次はどうしたらいいかな?」のようなら間接的な言葉で伝える、手や口は出さずに見守る、などなどいろんな方法が考えられますよね。これ全部プロンプトです。

いろいろなプロンプト

プロンプトは大きく分けて、身体的プロンプト、視覚的プロンプト、言語的プロンプトの3つがあります。

身体的プロンプト

身体的プロンプトとは、身体に直接触れることによって行動を促したり、正しい身体の使い方をガイドしたりする方法です。まさに「手取り足取り」教える方法です。

スポーツ等の技術指導等でも用いられる場面は多いですね。ボールの投げ方、バットやラケットの握り方やスイングの仕方、身体の向き等を教える際に、よく用いられます。

(画像はシェークハンズより)

身体的プロンプト(身体的ガイダンス、身体的お手伝い)には、完全身体プロンプトと部分身体プロンプトがあります。

完全身体プロンプトとは、子どもの手など身体に触れて正しい行動に導く方法です。

例えば、歯磨きを上手にできない子に対して、後ろから手をとって、どう歯ブラシを動かしたらいいのか教えることや、クレヨンで絵を描くとき等に、子どもがクレヨンを握っている手を、上から握って一緒に絵を描くことで、クレヨンを使うときの腕や手首の動かし方を教えること、手洗いをする際に、子どもの両手首を一緒に持って、こすり合わせるように動かすことで、手洗いの仕方を教えることなどです。

歯ブラシの使い方、クレヨンの描き方、手の洗い方、フォークや箸の使い方、服の着脱など「身体で覚える」スキルを教えるのに向いています。

(画像はABAスクールTogetherより)

部分身体プロンプトとは、生徒の身体に軽く触れることで注意を促して正しい行動に導く方法です。

例えば、お絵かきをしている子の手が止まったら腕をちょんちょんと触ってあげることで、お絵かきを再開することができるようになったり、子どもの注意を引くために、肩を叩いたりなどです。 

(画像はABAスクールTogetherより)

視覚プロンプト

視覚的プロンプトは、目で見てわかるプロンプトです。標識や絵文字など、日常生活の中でも広く用いられている方法です。あるいは、お手本を示すような方法も、視覚的プロンプトに含まれます。

例えば、手洗いの手順を言葉や写真・イラストつきの手順書やマニュアルを掲示することで1人でできるようになるかもしれません。

(画像は看護roo!より)

「ここに立っていてほしい」ということを伝えるときに、身体的プロンプトを用いてその場所に連れていったり、言語的プロンプトを用いて、「ここに立ってて」と言ったりすることも有効ですが、スタートラインのようなイメージで、実際にその場所に線を引いたり、靴跡のしるしを貼ったりすることで、目で見て「ここに立てばいいんだ」と気づかせることもできます。構造化の視覚支援ですね。

(画像はいらすとやより)

「指差し」という視覚的プロンプトと併用することで、意図も伝わりやすくなるかもしれません。

(画像はABAスクールTogetherより)

また文字の書き取りプリントで、まずは薄い線をヒントにその上をなぞる、1文字目だけ薄い線で示すのような先行刺激や、正解の選択肢を目立つ位置に提示するのも視覚プロンプトです。

(画像はABAスクールTogetherより)

モデリング

視覚プロンプトの中でも、指導者が手本となって行動をやって見せてあげることをモデリングどいいます。

例えば、手洗いの方法を先生がやって見せて、生徒はその模倣をすることで手洗いができるようになるというものです。

(画像はABAスクールTogetherより)

モデリングについては別の記事でも紹介しています。

言語的プロンプト

言語的プロンプトとは、言葉での声掛けや指示によって、行動を促したり、正しいやり方のヒントを出したりする方法です。いわゆる言葉かけや声かけですね。日常的に、非常に多く用いられる方法です。

言語的プロンプトは直接、部分、間接の3つがあります。

直接言語プロンプトは、子どもが答える答えを全てこちらが言って、言うべき答えを教えてあげるというものです。

例えば、「今日は何曜日?」と聞いた後、すかさず「月曜日」と答えも言います。すると子どもは、答えるべき言葉「月曜日」と言うことができます。また子どもに「ありがとう」と言ってほしい場面で、「ありがとうって、一緒に言おうね。せーの、ありがとう」というようなやり方もあります。

(画像はABAスクールTogetherより)

部分言語プロンプトは、子どもが答える答えの一部をこちらが言う方法です。

例えば、「お水を飲むのに使うのは?」と聞いた後、すかさず「コ・・」と答えの一部を言います。子どもは、この手がかりを元に「コップ」と言うことができます。「ありがとう」と言ってほしい時に、「なんて言うのかな?ありが・・・」なんて途中まで言うのもそうです。子どもが言葉自体を覚えている段階に適しています。

(画像はABAスクールTogetherより)

間接言語プロンプトとは、子どもがすべきこと/答えるべきものの答えを伝えるのではなく、「どうしたらいいの?」「なんて言うんだっけ?」のように、自発的に行動できるよう促す言葉かけのことです。すでに行動自体は学習しているけれど、まだ定着していないような段階で使うのに適しています。

例えば、「トイレの後はどうするんだったかな?」と聞き、何かを忘れている(手を洗うこと)を思い出すように促します。

(画像はABAスクールTogetherより)

プロンプトの強弱

プロンプトには強弱があります。

強いプロンプトとは指導者の援助が強く、子どもが自力でする部分が少なくなるプロンプトです。逆に、弱いプロンプトとは、指導者の援助が弱くて控えめで、子どもが自力で行う部分が大きくなるプロンプトです。

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(画像はなるさ療育学習室より)

その子の特性によっても変わってきますが、一般的にプロンプトの強さは、身体的プロンプト>モデリング>視覚的プロンプト>言語的プロンプト>見守りとなります。

また身体的プロンプトの中では完全身体>部分身体、言語的プロンプトの中では直接言語>部分言語>間接言語といった段階があります。視覚的プロンプトの中でも、全てを提示するのか、一部を提示するのか、ジェスチャーで示すのかなどがその子の特性に合った段階があります。

強いプロンプトと弱いプロンプト、どちらにもメリットとデメリットがあります。

強いプロンプトには、失敗が少なくなる可能性が高いメリットがありますが、達成までに比較的多くの時間がかかるデメリットもあります。

逆に弱いプロンプトには、1人でできるという目標が早く到達される可能性が高いというメリットがありますが、失敗経験が多くなる可能性が高いというデメリットもあります。

ただ必要以上に強いプロンプトは、子どものやる気や自発性を奪い、過剰な援助が子どもに「自分でやらなくてもなんとかしてもらえる」という学習をさせ、指示待ち傾向や周囲への依存傾向につながりかねません。またプロンプトの度合いが高すぎると、「そんなの自分でできるよ!」と子どもの反発を受けることもあります。

そのため、プロンプトは「必要最低限」が原則になります(「必要最低限のライン」を見つけるには、弱いプロンプトを強めていく方法がオススメです)。

ただ完全に放任するのがいいわけではありません。ヒント、手がかり、援助などを受けられず、失敗を繰り返した子どもは無力感を学習し、やはり意欲や自発性を失っていきます。プロンプトは弱すぎてもダメなのです。

どの程度の手助けで、子どもの望ましい行動が引き出せるかは、その子によって異なります。実際に試しながら、調節していきましょう。

徐々に手がかりをすくなくするプロンプト・ファイディング

いつまでもプロンプトがないと行動できないではなく、子どもが、自分で何をするべきか気づいて、自分で行動を選択することを目指すなら、そのための支援が求められます。

その方法がプロンプトフェーディングと呼ばれるもので、プロンプトを徐々に弱めて、消していく手続きのことです。課題を細かく分け(課題分析)、そのステップごとに、どの程度のプロンプトが必要で合ったのかを記録していくことで、子どもの変化やプロンプトの調整が見えてきます。

例えば、「ありがとう」を言ってほしいときに、最初は「ありがとうっていうよ」と、すべて伝えていたものを、「あり?」や「あ?」でとどめておいて、その次はこちらが先に「どういたしまして」と言って、子どもが気づくのを待つようなイメージです。

フェーディングと課題分析については別の記事でも紹介しています。

その子のゴールを考える

プロンプトは必要最低限が原則と言いましたが、子どもによって目指すべきゴールは異なります。

「1人で全てできる」がゴールの子もいれば、「やることチェックリストや手順表といった視覚プロンプトの配慮があればできる」がゴールになる子もいます。

そのためにどんなプロンプトが必要(有効)なのか、例えばスケジュールや手順書などのプロンプトがあってできることをゴールにするのかなど、その子の特性なども考慮して考えていく必要があります。

まとめ

プロンプトというと難しく聞こえるかもしれませんが、多かれ少なかれ子どもたちに関わる方が日時的にされていることだと思います。

ただプロンプトには段階があることや、適切なプロンプトを提示できていないといのデメリット、子どもの実態や特性に合わせたプロンプトを選択することなどを知っていると、より効果的な支援につながります。

繰り返しになりますが、子どもの実態に即したプロンプトの提示と、その子のゴールに合わせたフェーディングが大切です。

よければ家庭や学校での支援の参考にしてみてください。


参考にしたサイト

1.なるさ 療育学習室「プロンプトフェイディング(引き算の支援)」

2.こども行動療育教室 みどりトータルヘルス研究所「プロンプト・フェイディング」

3.スタジオそら「教育や療育現場で用いられるプロンプトとは?種類や出し方、プロンプトフェイディングについて紹介します。」

4.ABAスクールTogether「プロンプト」

5.SlidePlayer「〜プロンプトとフェイディング〜」



表紙の画像はlootより引用しました。