午前中、校正で立て混んでいるときに、ひょっこり芥川龍之介氏が入ってきた。 2020/11/01
朝5時過ぎに起きて、荒木経惟『包茎亭日乗 完』の続きをパラパラと。
読みながら、そういえばアラーキー、#MeTooの時に、話題になっていたなぁ、ということを思い出して改めて調べてみたらKaoRiさんだと知った。目の前の本の写真にも日記にも頻出してくるので、改めて鮮烈に結びついたのだけど、彼女も全てを否定しているわけではないのと、この『包茎亭日乗 完』の時期はかなり初期の頃に当たるのだなということもわかった。
KaoRiさんのnoteは現在は有料noteになっているのだけど、改めてどういうことだったのかを知るのにはBuzzFeedの記事はわかりやすい。
『包茎亭日乗 完』もある種のフィクション、虚実ないまぜな日記のようなものなのだけど、それがフィクションかどうかである以前になんというかこのノリしんどいなぁ、と思ってしまった。
長女のプールの送りをし、終わる頃にみんな合流してボーリングへ。次女が人生初ボーリング。長女は2回目。次女、3点差でビリで泣く。負けず嫌いだ。ジャイアンツが優勝したみたいで東京ドームは大賑わい。屋台が出ていたりグッズ販売していたり、とにかくいつもより格段に人が多い。
香山哲『ベルリンうわの空』を読む。
紀伊国屋書店の建築コーナーにあって思わず手に取ったのだけれど、全然別のルートで妻が面白いらしいという噂を聞きつけてきたのが不思議。話題なのかな。都市によって雰囲気が違うことが、というか、時間の流れ方も違うような感じがして面白い。
続いて木佐木勝『木佐木日記 上』を読む。
若き『中央公論』編集者だった木佐木勝の日記。芥川龍之介が、ごく普通にひょっこり登場する。大正時代の編集者の日々が、読めてしまうのは面白い。
午前中、校正で立て混んでいるときに、ひょっこり芥川龍之介氏が入ってきた。
芥川氏は樗陰氏に向ってすこし手を入れるところがあるので、校正を見せてもらいたいと言い、出ていた校正刷を見ながら筆を入れていた。それが終ると芥川氏は、樗陰氏と話しながらいつものように盛んに警句を飛ばしていたが、ふと自分たちの机の上に校正の済んだ谷崎潤一郎氏の「鮫人」の原稿があるのを見て、熱心に読みながらときどき何か感心したように首を振っていた。そして「これが名文というんだろうなァ」と言いながら、皆に聞えるように「鮫人」の文章を二、三行声を出して読んでみせ、「名文というんだろうが、すこし間のびのした文章だなァ」とまた首を振ってみせた。
木佐木勝『木佐木日記 上』P.115 - P.116
選挙権はまだ全国民にない時代。滝田樗陰という『中央公論』編集長の金の使いぶりを金の切れ味と評しているところとかも面白い。見習い編集者の月給相当を一晩で使っておいしいものを周囲の人物に奢ってくれる剛毅な人物。
とにかくこの人の金の切れ味は見事だ。時には反感を持つこともあるが、実に惜しげもなくパッパッと使っている。
木佐木勝『木佐木日記 上』P.54
そしてめちゃめちゃ稼ぐが前借りもする、この豪奢な生活ぶりと精力的な仕事ぶりは別々のものではない、というのはなんとなくわかる気がする。猛烈に働いている時のテンションというのは平常時とはやっぱりどこか違うもので、それは知り合いを見ていてもなんとなくわかる。でも、まぁ人生浮き沈みがあるので、未来永劫そのテンションが続くわけでもなく、落ち着いたりもするのだろう、多分。人間、家を買うときなんかはピークで調子良い時で、でも好調不調は波のようなものなので、悪い時もくる。そんな時でも帰ってくる場所が家なので、ピークにあわせてデザインしちゃうと、調子悪い時に住めない家になる、と言った話を聞いたことを思い出した。
好きな豚のスペアリブ煮たやつを作ってくれたので、ご飯食べて、さっさと寝た。10月は無事に終了。ホッとしている。明後日、またお休みなのが嬉しい。