ある夕方 お月様がポケットの中へ自分を入れて歩いていた 2021/01/25
終日在宅勤務。運動不足であるが、寒いと外に行く気がしないのと、今は読みたいモードなので時間があったら走るより読む方を取ってしまう。
必然的に、この日記も丁寧に書くよりは、読みたい訳で、少し簡略化されてきているような気もする。まぁ平日は仕事して本読んでたら終わってしまうから、そもそも書くことないだけなのかもしれないけれど。
先日積読を整理したら、稲垣足穂コレクションが発掘されたので、読んでみようと思う。まずは、稲垣足穂『一千一秒物語』から。足穂曰く「ぼくの書くものは、すべて『一千一秒物語』の註にすぎない」ということらしいので、この月、星、夜で出来上がったような幻想の塊に彼のすべてが込められているんだろう。
ココアのいたずら
ある晩 ココアを飲もうとすると あついココア色の中から ゲラゲラと笑い声がした びっくりして窓の外へほうり投げた
稲垣足穂『一千一秒物語』p.35
ココアが突然笑いだす、いや、ココアの中から笑い声がする、のか。
街かどのバーへ土星が飲みにくるというので しらべてみたら只の人間であった その人間がどうして土星になったかというと 話に輪をかける癖があるからだと そんなことに輪をかけて 土星がくるなんて云った男のほうが土星だと云ったら そんなつまらない話に輪をかけて しゃれたつもりの君こそ土星だと云われた
稲垣足穂『一千一秒物語』p.51
ポケットの中の月
ある夕方 お月様がポケットの中へ自分を入れて歩いていた 坂道で靴のひもがとけた 結ぼうとしてうつ向くと ボケットからお月様がころがり出て 俄雨にぬれたアスファルトの上をころころころころとどこまでもころがって行った
稲垣足穂『一千一秒物語』p.24
お月様が背広でも着て歩いているのかなと思うとポケットに自分が入っていると言われてなんかこう、次元がぐにゃりと歪む。
こんな調子で詩のような小品が集まっているので、密度が濃い。。何冊も読んだような感じがしながら、読み終わった時にはふぅとため息をついた。
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