自分の性別に関する自己認識はこれだけの幅があるんだってことがわかるし、そう考えると、「男」「女」のあいだにあるグラデーションは実は無限にあるということだよね。 2020/09/21
連休というのはとても良い。のんびりと娘と遊んだりできる。妻がちょいとお出かけだったので娘を連れてプラネタリウムに行ってみた。自分も学生の頃に行ったことがあり、相当久しぶりの来訪だったのだけど、なかなか混んでいて時間ギリギリに着いた時には満席だった。ネットで予約しておけばよかったと悔やまれる。プラネタリウム舐めてた。なので次の回を見ることにして、先にランチ。久しぶりの外食でランチなんだけどレストランぽいメニューを食べる。おいしい。
良い気分でプラネタリウムに行ってみたのだけど、正直思っていたのと違ってがっかり。星は私たちを見守ってくれている、とか星が導いてくれるかもしれません、とかなんというか、中身のない薄っぺらいナレーションがひたすら続いて萎えてしまった。非科学的で知性のかけらもない。あんな安っぽい語りに感動するのだろうか。とりあえずどうだったと娘に聞いてみたらすごくつまらなかったと言っていたので、時間が無駄になったことは残念だったが、感性がまともでホッとした。
佐久間裕美子+若林恵『こんにちは未来 ジェンダー編 それを感じているのは私だけじゃない』を読んだ。二人のポッドキャストを書籍化したものみたいでとても読みやすいし、アメリカでのマイノリティに対する感覚、みたいなのがリアルに感じられて日本との違いが興味深い。
例えば、「性別」に対する表現に関して、男と女という2元論がとっくに時代遅れであることは理解しつつも、「Refinery29」というウェブメディアが性別を表す表現を集めて用語集にする企画があったらしくて、なんとなんと85種類も集まったのだそうな。
たとえば「Aliagender」=男性でも女性でもない「その他」とか、「Non-binary」つまり男性と女性という二元論には属しませんよ、というものとか、あとは「Gender-fluid」これは性別流動性とでもいうのかな、性認識が常に変動する人とか、こういったジェンダーの認識の仕方が85個並べられていて、それぞれに解説がついている。自分の性別に関する自己認識はこれだけの幅があるんだってことがわかるし、そう考えると、「男」「女」のあいだにあるグラデーションは実は無限にあるということだよね。
佐久間裕美子+若林恵『こんにちは未来 ジェンダー編 それを感じているのは私だけじゃない』P.42
っていうことなんかは本当にこれ読むまでは知らなかったことなので、へぇぇって思ったしもはや会員登録などで性別聞くこと自体が時代遅れなんだろうなぁとは思う。もっとも、性別聞いているのは企業のマーケティング上の理由だと思うのだけど、これもそれを聞かなくても購買履歴やらなんやらからのデータ分析で最適なアプローチができれば良いだけの話で、分析がテクノロジーによって適切に可能になれば、性別欄なんてなくても分析の精度には変わりがない、なんてことにもなるのかもしれない。これはこれでテクノロジーが切り開くジェンダーフリーな世界なのかも。
そしてとても印象に残ったのが、このポッドキャストを聞いた人の感想を紹介するこのくだり。
やっぱり佐久間さんは女性だから「自分は、○○と思う」とか断定的ではない言い方をしていて、若林さんは男性だから言い切り型の発言が多い、というような趣旨のことを言ってて。そこに、パワーバランスというか性差、ジェンダー差みたいなものを感じるとか、って言っているのを聞いて、ほうっておもったわけ。
佐久間裕美子+若林恵『こんにちは未来 ジェンダー編 それを感じているのは私だけじゃない』P.152
僕はこれを本で読んでいて、さらに言うなら、「Wired」みたいなものに対してもなんか距離を置いて生きてきたのでそもそも若林恵さんが男性であると言う認識がなくて、それはそれでどうなのって話なのかもしれないけれど、先入観なくただ活字を読んでいただけなんだよね。そうなると、ここで指摘されているようなことは微塵も感じなくて、正直、そう言う風に聞き取ってしまう人の方にジェンダーバイアスがかかっている気がした。
もっとも、ポッドキャストで聞いていると語感とか、少なくとも声であぁ男性なんだな、とか活字にはない情報量があるから感じ取れる部分があったのかもしれないけれど、そうだとしても激しく違和感を感じるのは、そう言う特徴的なものが、性別の違いに起因するものだと結びつけてしまう発想そのものにある。
若林さんが仮に断定的な物言いをするような特徴があったのだとしても、それはその人の個性というか特徴で良くて、それが男性だからだっていう解釈はバイアス以外の何者でもなくないか。というわけでちょっと若林さんが気の毒になったのだけど、この発言が普段から佐久間さんの著作を読んでいる読者から発せられているということもまた味わい深いというか、本当に難しい問題なのだなということが多重的に表現されているエピソードで好きだ。