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憧れの人とかっているのか?と問われ孟嘗君を思い出した私。

 この前、打ち合わせしてる時に、こんな話になった。どんな人に憧れるのか、憧れたのか、みたいな話。そう言われるとあんまり思いつかない。働いてこのかたメンターとかそういうのもいないし、憧れの先輩の背中を追いかけてきました、みたいなのもない。そういうのいたらいいなって思うときはあるけど、あまり想像もつかない。

 憧れじゃないだけで、話していて面白い人はたくさんいるし、あー、すごいなぁこの人、と思うことは多々あるのだけど、それはあくまでも敬意とかの類で憧れじゃないんだよなぁ。あの人みたいになりたいってあまり思ったことがない。

 なんて考えてたら、上司が「私はねー、勝海舟!」と言ったのよ。あぁ、なるほど。子供の頃に夢中になったというか、歴史上の人物とかでもいいんか、そうかそうか、それならあるぞと急に記憶が蘇った。

 小学校高学年から中学生の間、 KOEIの歴史シミュレーションゲーム(信長の野望とか、三国志とか、源平合戦とか)と共に歴史小説にどっぷりハマる時期を過ごしていて、多感な時代に浴びた歴史上の偉人の話は今につながる価値観の形成に思いっきり影響している気がしないでもない。

 歴史小説って、史実をベースにしながらも、脚色され、美化された物語。そう言った演出には賛否両論あるのかもしれないけれど、神話や伝承の類だと思えばそれはそれで面白いよね。吉川英治の新平家物語とか全16巻の文庫本を、1冊、1冊地元の本屋で買い求めながら読み進めていったのとか懐かしいわー。読んだけど、今や記憶に残っているのは平清盛が病に臥せったとき高熱でお湯が沸くほどだったとかっていう話だったりする。なんの役にもたたねーし、ありえねーし、ではあるのだけど、でもお湯が沸くほどって言っちゃいたいくらい高熱なんだな、そいつは大変だぜって乗っかってあげたほうが人生は楽しい気がする。

 で、そんなKOEIの影響による歴史小説読みの大きな転換点が中学生の時に世界史の授業で知った司馬遷。そう、『史記』です、『史記』。なんでか知らんけど、ものすごく読みたくなっちゃったのよね、『史記』が。KOEIからゲーム出てないけど、読みたいという新たな展開。

 そしたらちょっと大きな本屋さんにいった時に見つけてしまったのですよ、『史記』を。

 調べてみたらAmazonでまだ売られていた!別巻込みで全8巻。2万円くらいするのよ。これ、『史記』そのまんま、なのね。漢文(白文)と、書き下し文、現代語訳、という3つが載ってる『史記』そのもの。子供心にも、この本はちと高いぞという思いもあったのだけど、意を決して欲しいと言ったら買ってくれたんだよね。今にして思うと親もよくもまぁ、欲しいと言ったからって買い与えてくれたなぁ、と思う。読んでみたいという本は割と自由に買い与えてくれた環境だったから今の自分があるんだなぁ、としみじみ思うので世の親御さんも子供が読みたいという本は自分の理解の範疇を越えていてもなるべく買ってあげてください。

 閑話休題。話を本筋に戻すと、この『史記』の中には偉人についてまとめた列伝というシリーズがあって、そこで出会ったのが孟嘗君。僕の中で強烈に印象に残っている歴史上の偉人なのです。

 春秋戦国時代の偉人で、優れた人物を客として迎え、抱えた食客の数は3000人とも言われる。その中には盗みが得意だったり、物真似が上手と言った輩も混ざっている。学者や武芸者からするとそういう奴らはなんの役にも立たない人たちって蔑んでたりするんだけど、孟嘗君が秦で殺されそうになった時、窮地を救ったのはそういう一芸に秀でた人たちという逸話は、鶏鳴狗盗という故事として今も伝わっている。(とされてるんだけど、鶏鳴狗盗って言われてもほとんどの人ピンとこないよね、普通)

 夜明けと共に鳴く鶏の声を合図に門を開ける決まりを逆手にとって、鶏の鳴き真似で函谷関を突破するくだりは痛快。結局、人間得意なことはそれぞれだし、組み合わせ次第で思いもよらぬ結果につながるってことなのよね。だから組織には価値観も、得意なことも異なる人を集めて多様性を担保した方が良いし、その辺うまく組み合わせるのが肝でしょう、と。

 誰にでもできることはできなくても良いから、自分が得意なことは人に負けないっていう気持ちで取り組んでたり、こういうのが好きって自覚して取り組んでたりする人とか、いると助かるのよ。それなのに誰にでもできることができなかったりすると、すぐこんなこともできないのとかって話になりがち。良いのよできなくても。それはできる人がまた別にいるから。補い合ってりゃ問題ないわけで。同様に人と同じである必要なんてないと思うのよね。

 とか思うのも根っこに孟嘗君読んだってのがあるんだろうなぁ、としみじみ思うのです。ちなみに宮城谷昌光も孟嘗君について書いているけれど、実際読むと、あまり孟嘗君の出番なし。全5巻中、最後の1巻でようやく孟嘗君主体の話になってくるという展開。思ったより出番ないし、鶏鳴狗盗の話もあっさりだったからいまいち盛り上がらないんだけど、春秋戦国時代の偉人オンパレードみたいな内容になってるからこれはこれで面白い。ちょうど冒頭の打ち合わせで孟嘗君のこと思い出したから、ここ10日間くらい、20年ぶりくらいに再読したのよ、宮城谷孟嘗君。

 史記は横山光輝がマンガ化していて、個人的には横山光輝は三国志よりこちらの方がおすすめ。もっともっと読まれて良い作品だと思う。孟嘗君の話は文庫だと3巻に収録されてるらしいのでまずはこれ読むのが一番良いんじゃないかな。というか、自分もまた読みたくなってきた。。

 こう考えてみるとみんな歴史上の偉人憧れなら、結構あるのかもしれない。みんなどうなんだろ? 憧れの人、いますか??

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読書好きな会社員
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