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[映画] 袴田巌さんの人生に向き合う 『拳と祈り』

○ 袴田事件をご存じですか?


無実を訴えながら、死刑囚に。2014年に再審請求が認められて47年ぶりに釈放された袴田さん。今年の9月に晴れて無罪となりました。
このドキュメント映画は2014年に釈放されてから、約10年間、袴田さんを撮り続けた人生の記録です。

袴田事件

1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)で、全焼した民家の焼け跡から刃物で刺された、味噌製造会社の専務一家4人の遺体が発見された。強盗殺人、放火などの容疑で逮捕されたのは、住み込み従業員の袴田巖さん。背景にあったのは、「元プロボクサーならやりかねない」という偏見。拷問を伴う長時間の取り調べにより「自白」を強要させられた。
裁判では一貫して無実を訴えたが、1968年静岡地裁で死刑判決、1980年最高裁で死刑判決が確定。獄中から無実を訴え続け、2014年に再審請求が認められ、釈放された。静岡地方検察庁による即時抗告、「再審開始取り消し」を経て、2023年再審公判が始まり、2024年9月26日には無罪判決が出された。
死刑囚の再審無罪は1980年代に4例あるが、それ以降一度もない。「袴田事件」の行方は、死刑制度の是非と共に世界的に注目を集めている。

映画の公式サイトより

事件の成り行きはこちらのサイトがわかりやすかったです。

再審請求を受けて再審開始が決定するのは、全体の1.1%と極めて低い。

○ 感想

釈放されたばかりの袴田さんは真っ白でツルツルの顔をしている。それはそうだ。自由のない拘置所に47年もいたのだから、日焼けなんて出来ないのだ。

しばらくは家から出れず、朝起きてから夕方まで家の中を歩き続ける生活。なぜずっと歩いているかは、秀子さん(袴田さんの姉)にも分からない。
食べて、寝て、歩く生活が、続く。

だんだんと外に出れるようになり、今度は外を1人で毎日数時間歩く。
昔暮らした記憶を辿っているのか、秀子さんの予想を超えた場所まで歩いてしまう。

街を歩くのは仕事だと言う。自分は神様だから、世界を見守っているのだと。

拘置所の部屋でもずっと歩いていたのか、80才を超えても歩き続けられる身体がすごい。元プロボクサーというのが関係しているのかもしれない。

拘禁反応で、現実世界と妄想の世界をいったり来たりする袴田さん。
でも、やっと自由になれたのだからと、否定せず暖かく見守る秀子さんと、周囲の人たち。

明るく笑い飛ばす秀子さん。

2人の世界には悲壮感があまりないように感じた。

場面変わって映し出されるのは、袴田さんに死刑判決を言い渡した熊本判事。
彼は袴田さんの無罪を信じながらも合議で敗れ、泣く泣く死刑判決書を書いたという。
袴田さんに直接謝罪がしたいとずっと思っていて。だけど、袴田さんに会える可能性は限りなく低い。そこで袴田さんが拘置所内で洗礼を受けたのを知り、自分も洗礼を受け、来世で同じ世界に行けるようにしたそうだ。

2007年1月19日、袴田巖さんの再審を求める会に、静岡地裁での第一審主任判事だった熊本典道氏から手紙が送られてきました。その中で、実は無罪の心証を持っていたが、最終合議で二対一で敗れ、信念に反する判決書を書いたことを告白したのです。そして、3月9日、衆議院議員会館で「死刑廃止を推進する議員連盟」の院内集会に参加。元担当判事として袴田巌さんの無実を訴えました。

袴田さん支援クラブHPより

熊本さんは、パーキンソン病を患ってしまい入院中。
終盤、袴田さんと秀子さんが九州の熊本さんを訪ねる場面。秀子さんが熊本さんに「巌が来たよ。」と何度も声をかける。身体は動かないが理解する熊本さんと、身体は動くが理解しているのかどうか曖昧な袴田さんの対比。

熊本さんの場面はとても印象に残った。

もう1人印象的だったのは、同じくプロボクサーで冤罪被害者のアメリカ人 ルービン・カーターさん。
同時代に似たような境遇にいたカーターさんは無罪判決が出て社会復帰していたが、袴田さんのことがずっと気がかりだった。

ボクシングを通じて関係のあったカーターさんは、ビデオで袴田さんへのメッセージを残している。

「今度は袴田さんが自由になる番だ」
「Free Hakamada!(袴田さんを自由に!)」
「Free   Hakamada!」
「Free   Hakamada!」

心のこもった素晴らしいメッセージだった。

そして、晴れて無罪となった袴田さん。長く辛い闘いだったが、勝利を勝ち取った。
この結末を知っているからこそ、辛いドキュメンタリーを最後まで観ることができたと思う。
秀子さんの最後の言葉は感動的だった。
穏やかな余生を過ごして欲しいと心から願う。。


最後までお読みくださりありがとうございました。
調べながら書きましたが、間違いがあるかもしれません。
事件については、詳しい記事をご覧ください。

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