[映画] 袴田巌さんの人生に向き合う 『拳と祈り』
○ 袴田事件をご存じですか?
無実を訴えながら、死刑囚に。2014年に再審請求が認められて47年ぶりに釈放された袴田さん。今年の9月に晴れて無罪となりました。
このドキュメント映画は2014年に釈放されてから、約10年間、袴田さんを撮り続けた人生の記録です。
事件の成り行きはこちらのサイトがわかりやすかったです。
再審請求を受けて再審開始が決定するのは、全体の1.1%と極めて低い。
○ 感想
釈放されたばかりの袴田さんは真っ白でツルツルの顔をしている。それはそうだ。自由のない拘置所に47年もいたのだから、日焼けなんて出来ないのだ。
しばらくは家から出れず、朝起きてから夕方まで家の中を歩き続ける生活。なぜずっと歩いているかは、秀子さん(袴田さんの姉)にも分からない。
食べて、寝て、歩く生活が、続く。
だんだんと外に出れるようになり、今度は外を1人で毎日数時間歩く。
昔暮らした記憶を辿っているのか、秀子さんの予想を超えた場所まで歩いてしまう。
街を歩くのは仕事だと言う。自分は神様だから、世界を見守っているのだと。
拘置所の部屋でもずっと歩いていたのか、80才を超えても歩き続けられる身体がすごい。元プロボクサーというのが関係しているのかもしれない。
拘禁反応で、現実世界と妄想の世界をいったり来たりする袴田さん。
でも、やっと自由になれたのだからと、否定せず暖かく見守る秀子さんと、周囲の人たち。
明るく笑い飛ばす秀子さん。
2人の世界には悲壮感があまりないように感じた。
場面変わって映し出されるのは、袴田さんに死刑判決を言い渡した熊本判事。
彼は袴田さんの無罪を信じながらも合議で敗れ、泣く泣く死刑判決書を書いたという。
袴田さんに直接謝罪がしたいとずっと思っていて。だけど、袴田さんに会える可能性は限りなく低い。そこで袴田さんが拘置所内で洗礼を受けたのを知り、自分も洗礼を受け、来世で同じ世界に行けるようにしたそうだ。
熊本さんは、パーキンソン病を患ってしまい入院中。
終盤、袴田さんと秀子さんが九州の熊本さんを訪ねる場面。秀子さんが熊本さんに「巌が来たよ。」と何度も声をかける。身体は動かないが理解する熊本さんと、身体は動くが理解しているのかどうか曖昧な袴田さんの対比。
熊本さんの場面はとても印象に残った。
もう1人印象的だったのは、同じくプロボクサーで冤罪被害者のアメリカ人 ルービン・カーターさん。
同時代に似たような境遇にいたカーターさんは無罪判決が出て社会復帰していたが、袴田さんのことがずっと気がかりだった。
ボクシングを通じて関係のあったカーターさんは、ビデオで袴田さんへのメッセージを残している。
「今度は袴田さんが自由になる番だ」
「Free Hakamada!(袴田さんを自由に!)」
「Free Hakamada!」
「Free Hakamada!」
心のこもった素晴らしいメッセージだった。
そして、晴れて無罪となった袴田さん。長く辛い闘いだったが、勝利を勝ち取った。
この結末を知っているからこそ、辛いドキュメンタリーを最後まで観ることができたと思う。
秀子さんの最後の言葉は感動的だった。
穏やかな余生を過ごして欲しいと心から願う。。
最後までお読みくださりありがとうございました。
調べながら書きましたが、間違いがあるかもしれません。
事件については、詳しい記事をご覧ください。