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[読書] ツユクサナツコの一生

図書館をふらふらしていて、益田ミリさんの比較的新しい本を見つけました。
益田ミリさん、ananで連載している『ぼくの姉ちゃん』シリーズが好きです。
ドラマ化もしましたよね〜 とっても良かった!
漫画の雰囲気そのままの、期待以上のドラマでした。

そんな益田ミリさんの本。
前情報なしに読みました。

日常のクスッと笑えるエピソードや、そうそう!というエピソード。あ〜あるある!!というエピソードを期待していたら、違った。

全編を流れる、どことなく不安定な空気感。
先が読めない展開。
漫画家ツユクサナツコの日常と、ナツコが描く春子の話がリンクしたり、ナツコの心情がポロリと漫画に現れたり。

どうやらコロナの時代をナツコは生きているらしい。マスクをしてワクチンを打っている。
マスク飽きた〜!と言ったり、父のワクチンの予約が取れない〜ムキー!と怒ったり。
かと思えば、マスク生活でお互いの素顔を知らない大学生アルバイトの子に、
「マスクとったら、私こんな顔やから〜。またねー」とお別れしたり。

あぁ、そうだ。休校になったり、ステイホームになったりコロナに振り回されたな〜と私も思い出す。

理由もわからないまま
ある日突然
日常を奪われ
ついさっきまで誰かと笑い合っていた時間までもが
消えてなくなったら?
〜中略〜
人生で大切なことって
帰りたいとこに帰れることや

「いつ終わるんやろな 戦争」とナツコは言う。

そうか、戦争か。。
コロナもそうだし、ウクライナ情勢に、パレスチナ、ウイグル自治区もそう。

そして、予想外の急展開に言葉が出ない。すぐには理解できなかった。

ナツコはいつも飄々としていて、バイト先の人間関係もそつなくこなし、同居の父親とも仲良く見える、モヤモヤしたことは漫画に描き出し、精神面も落ち着いている。
が、毎日オーバーオールなのだ。夏は半袖の上にオーバーオール。秋は長袖Tシャツ、冬はタートルネックの上にオーバーオール。
そのことに多少の違和感はありつつ、読み進めていました。

すると、理由というタイトルの漫画で語っていた。

職場の人間関係に疲れ果てた
という理由だけでは収まらぬ何かが
わたしの中で渦を巻き
どこへも行かれなくなってしまったのでした
〜中略〜
どうすることもできず
どうしたいかもわからず
かと言ってどうでもいいとも思えず生きていた
そんなある土曜日の午後
高校時代に着ていたオーバーオールを思い出し
なんとなく着てみたくなったんです
オーバーオールが鎧のように思えた
わたしを守ってくれそうに思えた

ナツコにとって、オーバーオールは鎧だったんだ。
そして、今でも鎧が必要なんだな。

私は昔の友達を思い出していた。
その子はある時から外出する時にマスクを着けるようになった。
電車に乗るのが怖いと言っていた。
とても心配したけど、なにも出来なかった。実家に帰ったはずだけど、今頃どうしてるんだろう。


いろいろな気持ちが呼び起こされるお話しでした。
しばらく余韻が残り、パラパラともう一度読みたくなります。

今の感覚を掬い取った本なので、忘れっぽい私は何年かしたらまた読みたいと思いました。


お読みいただきありがとうございました。

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