歴史を知れば悩みが吹っ飛ぶ「歴史思考」
今回のゲストは、歴史を面白く学ぶ「COTEN RADIO(コテンラジオ)」のメインスピーカーであり、『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』の著者である深井龍之介さんです。
歴史という長い時間軸でモノを捉えることで、今の自分を取り巻く状況を一歩引いて客観的に見られるようになる。そんなメッセージとともに、今という時代や人々が抱えている悩みについて、歴史的視点からお話を聞かせていただきました。
――はじめに、株式会社COTENの主な活動について教えてください。
深井さん
株式会社COTENは、世界史のデータベースを研究開発する事業をやっています。その広報活動として、Podcastで歴史の話をするCOTEN RADIOを2018年11月から開始しました。データベースの方は、2024年に経営判断に使えるツールとして、その次は国家か個人が使えるツールを目指して開発中です。会社のミッションには「メタ認知を高めるきっかけを提供する」を掲げています。メタ認知というのは、簡単に言うと「俯瞰して見る」ということ。今後、メタ認知が重要になってきます。
――それは、なぜでしょうか?
深井さん
過去2500年の歴史を振り返ると、今が一番、自分の人生を自分で選ばなければいけない時代になっています。仕事も結婚も全て自分で選ぶ時代です。
選ぶということは、オプションがあってその中から捨てていく作業ですが、常識に縛られているとオプションを用意することがそもそも難しい。「自由に生きていいよ」と言われているけど、社会規範に縛られる中途半端な時代なのです。だから、歴史を通してメタ認知を高めるきっかけを提供することで、判断の材料にしてほしいと思っています。
――会社を経営するにあたり、歴史を勉強しておいてよかったと思うことはありますか?
深井さん
はい。目の前で起こっていることや会議の様子を見ていて、「この人の言っていることは、きっとこういうことなのだろうな」とか、「今起こっている対立は、歴史上のあの人が経験したことと一緒なんだろうな」とか、俯瞰して見ることができます。
――COTEN RADIOのメンバーである楊睿之(ヤンヤン)さん、樋口聖典さんとの出会いについて、教えてください。
深井さん
ヤンヤンは、同じ大学で研究室が隣でした。話したことはありませんでしたが、独特の雰囲気を持っていて憶えていました。その後、社会人になって、たまたま共通の知人が主催する飲み会で再会しました。SNSを通じて彼が歴史好きだということは知っていたので、声をかけて一緒にやることになりました。
樋口さんは、福岡県のビジネスコンテストで出会いました。樋口さんが1位で、僕が2位で、その後の飲み会で意気投合しました。
――COTEN RADIOすごいですよね。2019年のpodcast awards大賞、Spotify大賞。ヒットすることを予想されていましたか?
深井さん
いや、まったく予想していませんでした。もともと何かのメディアで歴史の話を伝えていきたいと思っていたのですが、メディアには弱い方なので、全て樋口さんにお任せしていました。成功も失敗も考えず、とりあえずやってみようという感じで始めました。
――チームを組んで100冊ぐらいの本を読んで、徹底的に調べ尽くしてやっているじゃないですか。ひとつのテーマについて、どうしてそんなにたくさんの本を読むのですか?
深井さん
わからないことがあるからです。例えば、織田信長が楽市楽座をつくったことは知っていますが、なぜ、つくろうと思ったのかはわかりません。調べるにしても1冊に全て書いてあるということはありませんから、何十冊も読みます。たくさんの本を読むと見えてくることがある。だから、意識してたくさん読むようにしています。
――そんなにたくさんの本をどうやって探しているのですか?
深井さん
検索して出てきた本を全部買います。例えば、織田信長について調べるときは、織田信長について書いてある本をまず買います。その本を読んでいると、わからないキーワードが出てきますので、今度はそのキーワードの本を買います。そうやって、広げています。
――最近、ユーチューバーが本の要約をしていますけど、あれは、難しいものをやさしく、シンプルに伝えようとしている。一方COTEN RADIOは、「やさしずぎず、難しすぎず」というのを感じます。
深井さん
そこは、意識しています。意味のあるレベルで伝えようとすると、それなりの長さになる。簡単にしすぎると意味がなくなっていってしまうのです。でも、メディア特性があるので、耳で聴ける範囲のものを目指しています。
――さて、ここからは、みなさんから寄せられた深井さんへの質問を紹介していきます。
――質問「営業一筋で10年やってきましたが、昨年から事業部門への配属を希望して、新たなチャレンに明け暮れています。当初は数年後に営業に戻る予定でしたが、事業という単位で市場を開拓する今の仕事が楽しく思えてきています。ただ、私の得意な仕事は営業です。また、事業を立ち上げるという仕事で私が会社の役に立てているのかという不安もあります。得意な仕事とやりたい仕事、どちらの道を突き進むべきか悩んでいます。ぜひ、アドバイスをお願いします!」
深井さん
得意なことは自分の中にパラメーターとして持っておいて、やりたいことをやったほうがよいと思います。やりたいことはモチベーションを上げなくてもできます。それがあるのは幸せなこと。営業の経験は、事業開発でも生きてくるのではないでしょうか。
歴史上の人物も、晩年までやりたいことと違うことをやっている人は多い。やりたいことが見つかるかどうかは、運もある。経験を積んでいく中で、最終的にやりたいことを見つけて、そこで今までの経験が生きるということはよくあります。
不安になる必要はありません。ダメなときは結果が返ってくるので、それがわかるまでは気にしなくていい。だって、めちゃめちゃ成功するかもしれないですよ。やってみなければわからないじゃないですか。
――それでは、次の質問です。「COTEN RADIOを聞いてメタ認知が高まり、新しいことに挑戦したいと思っていますが、家族から反対されています。周囲とのギャップをどう埋めていったらよいでしょうか?」
深井さん
今の時代は、自分で選ぶ時代。この後、家族に決めてもらう時代はもう来ません。自分の人生を家族が引き受けてくれるわけではないので、やりたいことをやってください。時間が経てば経つほど、後悔するかもしれません。
歴史上、今のような時代はありません。ということは、10年前の考え方は古いと思っていい。親の言うことを聞くのもひとつの美徳かもしれませんが、思い切って自分の思う通りにやっていいと思います。
――最後の質問です。「深井さんが構想するポスト資本主義社会において、行政、自治体はどのような役割を担っていくべきだと思いますか?」
深井さん
これからは、国や自治体の役割の範囲が狭まって、企業の役割の範囲が広くなるのではないかと思います。これは、一定の傾向がある歴史的な状態と符合します。そうなったとき、国や自治体は、企業との連携を自然にできるようになっておくことが大事。10年後には、「税金を納めるのはイヤだ」という人が増えている可能性がとても高いです。
――それは、なぜですか?
深井さん
このままでは、福祉領域が充分にサービスを提供できなくなります。税金はどんどん上がっていくのに、介護施設には入れない。「それなのになぜ、税金払わなければいけないのだろう」ってみんなが思うようになる。次に起こるのが、国や自治体が得られる収入が減っていく。そうすると、人員を縮小しなければいけなくなって、代わりに企業がそれをやるようになると思います。
これは、歴史的に見ても再現性があります。キリスト教徒が教会に十分の一税を納めていたが、ペストが流行しても何もできなかった。アマゾンの租税回避問題も同じ。テスラが持続可能な社会を目指して、本来は国がやらなければいけないような電気エネルギー事業をやっている。大きな仕事をしている主体者が変わると、このような現象が起こります。
「ソーシャルインパクト投資」は、まさにこれです。国がやらなければいけなかったことを企業がやる。そこに投資していこうという流れができている。僕がCOTENがなんとかなると思っているのは、その流れを見ているからなんです。
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ライター 國分 聡 @uraraka_sato
meetALIVE プロデューサー 森脇匡紀 @moriwaking
meetALIVE コミュニティマネージャー 小倉一葉 @osake1st
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