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第124話 ヒカリトカゲと



 おかしい。何かがおかしい。
封印は解除されたはずなのに、未だ右半身からたくさんの恨みの感情が伝わってくる。

 過去世で私の兄だったというヤマタ先生からの念は、以前よりも少しは落ち着いてきたのだろうか。わからない。あまり変わったようにも思えない……。
 ベッドの上で輾転反側しながらも、抜けていった闇感情が頭の血流を圧迫し、それから吐き気も襲ってくる。

 あれからさらに数日。私は徐々に、兄妹説そのものに疑問を抱き始めていた。

 何か間違っていないか、どこかに騙されていないか……。

 感情を、感覚を精査する。スキャンするように、全てを透視して見極めるように。

 フラフラと起き上がって洗面台まで行くと、鏡に写った自分の顔に違和感を覚えた。顔の右半分がどす黒い。私の中に何かがいる……。

「お前、誰だ?」

 私の肉体の中から、私のものではない挑むような低い声が出てきてゆっくりと問いかける。

「お前、ヤマタじゃないな。誰だ。龍か?姿を現せ。」

 いつだったか視た、大きな黒龍のことを思い出した。得体の知れない何かから、「そうだ。」と言われたような気がする。

「お前、龍か。
私に取り憑いてどうするつもりか?ヤマタ先生と一緒になって“こいつ”の性に取り憑き、旨そうにしてから食うつもりだったのか?」(※)

 続けて今度は自分の内側が、その黒い思念体へと切り替わった。巫女である私は、どうやら肉体の中身をコロコロと入れ替え表出させられる特異体質らしく、その“発現”は以前よりも格段に精度が増していた。

 そいつは鏡に写る私に向かってものすごい形相で睨みながら、時に目を見開いてシャーッと威嚇を繰り返してきた。

「図星か。」

 そいつの『悔しさ』が伝わってきて、こちらが挑発するたび牙を剥いて吠えてくる。

 右のこめかみのあたりからおでこにかけて、赤黒い翳(かげ)が射している。その上には薄っすらと、ウロコのような模様が重なっている。

 もしかして!

 私は一気に階段で二階に上がり、ベランダの窓から顔を出すと、直射日光をその顔に受ける。抵抗するかのよう始まった細かい瞬きが、もはや痙攣を連想させる。

 やっぱりだ。右目が光を感知してない。太陽が真っ赤に透けてる左目とは対照的に、右の視界はどこまでも暗い。


 思い出した。

 いつだったか一度だけ、けーこに誘われ爬虫類カフェ(※)に行ったことがあった。確か、あきらが中学校にあがったことで、部活でお迎えまでの時間に余裕ができたことから電車で出かける流れになったのだ。
 そして、店内で一番大きな南米産のトカゲと触れ合った時。
 そのトカゲの眉間を撫でると私の松果体の奥(※)に明滅する光を感じ、何故だかとても愛おしさが込み上げ、涙が出そうになってしまった。帰りがけまで離れがたく、けーこに「連れて帰りたい」と言いながら、仕方なく別れてきた記憶がある。

 そして思い返せば、その直後から始まった右目下の痙攣。松果体から段々と移動し、右頬を経て時間をかけて私の右半身に取り憑くと、やがて子宮の中に棲みつくまでになっていたらしい。


「龍ではなく、トカゲ、お前か。」

 私の舌が、高速でチロチロと出てきた。

「ヤマタ先生、あなたはレプティリアン(※)なのか。」

 またも舌が返事をかえす。警察官たちのビジョンも次々と上がっては消えていく。

 過去の私を恨んだところで、起きてしまったことへの取り返しなどつかない。
 どれだけ時間を巻き戻したいと思っても、現に今、私にトカゲが憑いている。

 それでももし、あの日あそこに出掛けなければ、その後ヤマタ先生に好意を抱かれることもなかったかもしれないし、なによりレプティリアンなどという卑怯な闇に憑依されることなどなかったのにと考えると、悔しさが込み上げて仕方がなかった。

 泣きたかった。どうしようもなく泣きたかった。私の内側に、トカゲに対するとてつもない殺意が湧いていた。




※“こいつ”呼ばわりした私……「自分は自分」だと思って生きていると思いますが、本来自分とは複数の人格で出来ています。人はデフォルトで多重人格です。

※レプティリアン……四次元の、爬虫類型の意識存在。(今後の連載にて後述します)

※爬虫類カフェ……生き物としての爬虫類、そして爬虫類カフェそのものも動物園なども安全ですし、彼らはとても愛おしい子たちですのでご安心ください。
ただ、爬虫類に限らず何にしてもそうですが、“飲まれやすい”自覚がある方は、ハイヤーセルフとよくよく繋がってくださいね。

※松果体……サードアイのところ。

(参考)
第45話 『翳り』

written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

さて。12月です。

12月を観察してから「今月こんなかんじだよね」って体感をお伝えしたいと思ったんですが、
うーん、一日じゃわからん笑

だけど昨日はものすごい浄化から一日がスタートしましたね。洗い流し感が半端ない。
逆に11月末はなんだか、駆け込み感があったように感じました。

そして、おかげで昨日は夕方の雲が美しくて、あきらと二人で「エモい!日傘をさす女(モネ)みたい!」と大騒ぎしながら帰宅しました。

その勢いで、meetoo読者さんへ向けての今月は?とハイヤーセルフに尋ねたところ、
『二極化』『集大成』『出港』というワードを貰いました。

音で貰ったので、『出航』?『出港』?どっち?
となったのですが、
意外なことに今回は、港を出るほうのニュアンスだそうです。

頑張って取り組んできた人に対しては、『ステージが変わる』ということのようですよ。

⭐︎⭐︎⭐︎

←今までのお話はこちら

→第125話 歌声に花のひらく

(明日はちょっと楽しいお話♪るんっ)

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