見出し画像

第171話 人生でいちばん受け入れ難い日


「自分は、愛されてはいけないのではないか。」

 そんな思いが頭を掠める。
この前、スサナル先生に抱きしめられたことで出てきたおかしな違和感。これを自分なりに探っていくと、そんな答えに突き当たった。自分で自分を許せない何かが、さらに奥底に沈んでいた。

……

「ひみさん。相変わらずじゃんじゃん進んでいきますね。もう、“ひみさん”っていうのは一つの職業だね。おしごと。」

 次から次から課題を自ら掘り起こしてくる私に対し、宇宙子さんはまたも笑ってそんな感想を述べてくれた。

「何で“愛されてはいけない”のか。この辺が今日のテーマかな。」

「なんかそれと、プレアデスが気になります。そこに引っかかっているかんじ。」

「いいですね出てきてますね。そこら辺も含めて視ていきましょう。」


 今回、宇宙子さんが選んだルートは私の過去世ではなくて、プレアデスカウンシル(評議会)に会うことだった。
 プレアデス星人といえば青い皮膚を持つことでも有名だったけど、お会いした男性はそんなことはなく肌色に近いようだった。既に頭髪の殆どなくなった少しふっくらした年配の方で、ガウンのようなゆったりした高貴なボルドーに、袖なのか襟なのか、金色が少し入っているのがなんとなく視えた。
 司祭さまだと思われる彼は、柔和な笑顔で両腕を大きく広げて“さぁさぁ、よく来たねよく来たね”と来訪を歓迎してくれていて、いずれ私が来ることをわかっていたようだった。

「あったかーい、Welcome back(お帰りなさい)ってかんじでしょ?」

 宇宙子さんの一言で、涙が止まらなくなってしまった。“大丈夫だよ。許されているよ。”と、彼はまだ見ぬ私の傷に先回りして安心させてくれたのだ。

 この司祭さまを交えた今回のセッションは、私という魂の存在意義をまったく違ったものへと塗り替えた。あまりに夢物語のようであったため、少なからずショックを覚え、頭を整理する必要もあった。
 私がプレアデスにいたということ。
それはいつかの私の魂が言った、「誰かがやらなきゃいけない“使命”」を、文字通り『命を使い果たすことで“果たした”』私の過去世の記憶だった。


……かつて、私はそのペールブルーの輝く星において、誰よりも大きな魂だった。それはつまり星の方針は私の判断によるものが大きく、それほど重要な存在だった。
 私というプレアデスの女性が持っていた力とは、全てを愛せる『愛』。実際、当時の私に愛せないものなど何ひとつなかった。
 それはまた、宇宙の男性性にも匹敵する大きな大きな力でもあり、そんな私の影響もあってプレアデスとは永いこと平和な星だったのだ。

 そんな穏やかな光の星にも、ある時闇が忍び寄った。それが自分たちの望まない戦争であっても、標的となれば嫌でも巻き込まれてしまう。
 全てを愛せてしまうが故に私の『愛』はつけ込まれた。オリオンという男性の闇に、私は唆された(そそのかされた)のだ。




 星が…………散った。


 許せない!!
許せない許せない!騙された、間に合わなかった、私の力が悪用された!

 彼らを信用したばかりに、愛する星が崩壊してしまった。

 オリオンが許せない。男が許せない。だけどそれより一番は、大切な星の人たちを巻き込んでしまった自分のことこそ許せない!!


 ふっと意識が、地球を想う。
今、プレアデスという愛と平和な世界にいた人たちは、私の判断に従ったせいでこの地球へと“追いやられた”。多くの人を守れなかった。多くの犠牲を出してしまった。彼らから愛する故郷を奪ってしまった。
 この責任は重く、背負っても背負っても、自分が償わなければならないと思った。


 司祭さまは言う。

「プレアデスは、闇を知らなかった。本来あるべき闇がなければそれは完全とは言えない。
 あなたは今回、許せない自分を許すためにここに来たのでしょう。その後闇を学び、そんな自分を受け入れるために今日ここに来たのでしょう。
 地球には闇があります。それは素晴らしいことです。
あなた方は、プレアデスの希望。
あなた方こそ、悲願なんです。」

 宇宙子さんもまた言う。

「ひみさんがね、失敗だと思ったことも、宇宙の目で見ればただの通過点。それが必要だから起こったの。闇と統合できるからこそ、今この方も“悲願”なんだって言ってるよね。プレアデスも光だけでは、統合とまではいかなかったの。」

 星であろうと“形あるものはいつか壊れる”のだと彼女も言うけど、それでも私のこの傷が、癒える日など来るのだろうか。どこまでも優しい司祭さまの意識に抱きしめられると、『希望を託された志願兵』だと自分の立ち位置を思い出す。

「あなた方は、宇宙の悲願。プレアデスはいつだって、あなたと共にあります。」

……

 春分のその日。
あきらのお迎えのない私は、セッションを終えると夕方までこんこんと眠った。
 受け入れ難い現実であっても、知り、少し眠ったことで、僅かながらでも自己統合が始まっていた。
 薄暗くなった窓の外を見ながら、私のこのカルマを克服するために、スサナル先生が戦国武将として同じ経験を選んでくれたのだということがわかった。私がお侍さんに掛けていた言葉こそ、宇宙やハイヤーセルフが私に対して掛けてくれていた言葉そのものなのだと気がついて再び涙が込み上げる。

「自分は愛されてはいけないのではないか。」
 そんな想いの正体は、ズルズルと宇宙から引き摺られ続けてきたものだった。

 開けてしまった扉はあまりにも大きかったけど、必ず全部、受け止めよう。

 そんなことを誓うと、泣き腫らした顔を洗いたくて洗面所へと向かった。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

私にとってのこの“癒しの旅”は、まだ現在も少し続いています。
お話が進むともうちょっとだけ全貌が見えてくるのだけど、それであっても苦しかった。

愛と光だけだったプレアデスに、私も並々ならぬ郷愁がありました。昔からずっと、プレアデスに帰りたいってそればかりを望んでいました。
ただ振り返って言えるのは、いずれ光だけの世界をずっと続けることなどできなかったということです。己とは光だけでも、闇だけでも成立しません。光があるから統合できる。闇があるから統合できる。そしてそれは、宇宙の悲願。

だからこそ今は、プレアデスに闇をもたらすことができた自分を誇りに思っています。例え多くの地球人のトラウマになったとわかっていても、そんな闇を授ける役目は私にしか果たせなかった。

闇を、大切にしてください。400光年以上前から私が命懸けでみなさんに授けた闇です。

愛と光と闇を込めて。ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

←今までのお話はこちら

→第172話 蠱惑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?