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第60話 バランスがうまく保てない


ブレーカーが突然落ちた。

その日私は、けーこのイベントの搬入を手伝っていた。
私自身の切り絵作りは、スサノオの娘であるイチキシマヒメが出現したのを最後に止まってしまったていたが、彼女は変わらずアクセサリーなどを作り続けており、再び個展を開こうとしていた。

ディスプレイの什器や小物の買い出しにも付き合っていたため、どれくらい大荷物になるのかも最初からおおよそ把握していた。直接頼まれたわけではないけれど、車での運搬をあてにされていたこともわかっていたので、私から手伝いを申し入れたのは事実だった。
ただ、「それは惰性からなんでしょ。」ともしも誰かに指摘されたら、きっと否定はできなかったと思う。

元からランチに連れ出されることに加えて、それ以外にも、けーこは再び私個人の時間にどんどん侵食してきていた。
「ひぃーみぃー、ヘーループー。」
あきらを送った8時半。だるそうな声と共に早速電話が始まって、お迎えのために通話を切ってホッとできるのも一瞬。帰宅の頃合いを見計らっての再びの着信音にはげんなりすることもしょっちゅうだった。

「ひみと話したり出かけると、気づきが起こって闇が抜けるんだよね。」
能天気にそんなことを言うけーことは対照的に、こちらは次第に参ってきていた。

一人の時間が欲しいのに、どうしてこんなに邪魔するの?なんで私を利用するの?

人の誘いを断ることに、「責められる怖さ」や「自信のなさ」という種類の闇をたくさん抱えていたこの時期。けーこの電話を適当にあしらうという芸当は難易度が高く、とても私にできたものではなかった。結局毎回こらえにこらえ、無理して我慢してしまっていた。

一人になりたい。無性に内観したい。ただでさえヤマタの意識が纏わりついてて溺れそうな時に、まともに内観に集中することすらできないなんて。

その我慢が崩壊するまで、もう時間はかからなかった。気力で抑えて乗り切れる時期はとっくに過ぎていて、そしてあまりに闇を溜め込みすぎてしまっていた。

毎日電話でいいように呼び出されるけど、私はけーこのわがままを受け入れるための都合のいい彼氏じゃないし、奴隷でもない。私だってもっと大切に扱われたいのに。
もうどこにも行きたくない!もう着信音聞きたくない!静かな場所で誰とも話さず、とにかく一人で内観がしたい!!

荷物の運び入れを手伝って帰宅すると、心が死んで、気づいたら涙が出ていた。限界なことがわかっていたので何としても一人になって、気持ちを回復させなければならなかった。

2年前と同じだった。おそらくけーこにしてみたら、何の前触れもない突然の絶交で、私を酷いと思うかもしれない。前に彼女とした約束も未だに果たせていなかった。だけどもう、ここまで自分が壊れたら、構ってなどいられなかった。

一方的にLINEを入れた。
『やっぱりもう、電話とか無理。
けーことはしばらく会えない。
お母さんのこと、反故(ほご)にしちゃってごめんなさい。』

そして再び、けーこのいない生活が始まった。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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人間関係に限らず、今目の前に現れている“現象”って、どこかの時点の心の状態の「過去」なんだよね。
言ってることわかる?
過去の心の状態が、今、答え合わせとして目の前で「現象化」しているの。それがプラスでもマイナスでも。
「映像化」しているとも言える。
そしてね、未来を変えるのももちろん、「過去」を変えるのも、それは「今」しかないんだよね。

(わかんねー!って口で言いながら、みんなわかろうとすることから逃げとるよ。こないだ、meetoo読者さん達の集合意識、あなたがたの本心が泣きながら「本当は助けてほしい、どうしようどうしよう」ってエグいsosしてきて私とけーこでギョッとしたんだけど、こっちはずーっと助けようとしてるのにおいでって言って浮き輪投げても来ない。
それでいて、「meetoo助けて、どうしよう。自分このままじゃどうなっちゃうんだろう」だって。
だったら未来永劫そこで溺れていなさいな。meetooにおいでって言ったって来ないんだから。「愛と感謝」って耳触りのいいことしか言わない紙の船に助けを求めればいいじゃない。紙の船職人ならこの時代たくさんいるんだから。)

(あとこういうの書くと、一部の読者さんから「その通り!!」って熱烈にわかってもらえる笑
わかってる人もたくさんいるんだよね。自分軸ができてる人。
だからこそわからない人は来なさい!笑)

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