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第192話 胡蝶の夢


 朝起きると、“今日はこのスカートだな”と直感で服を選び出す。
 昔から、行く先々でお会いする神々や動かすエネルギーの質によって、手持ちの服から『これ』という一着を自然と身につけ出かけるのは、巫女の私ならではだと思う。
 中華風のタッセルのついた水浅葱(みずあさぎ)色のロングスカートは、今、潮風でその裾をユラユラと揺らしていた。


 横浜市、琵琶島神社。
以前お詣りした時と同じく、さっぱりとした性格のイチキシマヒメが笑顔で歓迎してくれていて、通りの向かいの瀬戸神社からも既にスサノオに見守られているのが伝わってくる。

 三次元の見た目にはただの祠に見えるけど、その日は奥に多くの人の出入りを感じ、改めて神社の内側とは異界なのだと思い出す。

 飛鳥時代や、もしくは中国を思わせる、ふわっとした裳裾(もすそ)の長い着物の女性の姿が視える。それに文台(ぶんだい)といって、書物や硯(すずり)などを載せる、持ち運び式のトレーのようなものを両手で持ってやってくる男性。彼もまた、文明の都、中国の漢学の知識に長けた方のようで、その時代の冠を頭に被っていた。

 その方々から、巻き物を一巻(いっかん)いただいた。おそらくそれの正体とは、彼らが保管している当時の何らかの知識だろう。
 それから“こちら次元の”隣では、「行くよー、いい?投げるよー。」と、けーこが何やら別件のエネルギーを祠に向かってお返ししている。
 ほぼ一年前と同じく、湾の内海は今日も波が穏やかだった。

 交通量のある道路を渡り、向かいの瀬戸神社で手を合わせると、やはりこちらにも今日は文人(ぶんじん)らしき方々を感じた。
 日本の歴史書である古事記や日本書紀、いわゆる『記紀(きき)』の成立は、私たち現代人が思っている以上に中国や韓国などが影響している。それ故今日は道の向こうでもこちらでも、つまらない三次元の国同士の低い分離を超えて、私への支援をしてくれているのだと感じた。大陸からの“秘蔵”が私に託される。


 それから神社の裏手へと回り、順番にご挨拶をしていく。十の耳で“一括参拝”を済ませたけーこはいつものように、とっくにその場を離れていた。

 イワナガヒメの前まで来ると、シンパシーから感極まって、やはり今日も涙が溢れる。
 ただそれでも、私も彼女も以前のままの自分たちではなかった。一年前の涙とは違い、泣いていることには変わりないのに一つの芯を獲得していた。

「あなたにかかっています。成し遂げてください。」

 目の前のイワナガヒメは美しく、そのエネルギーにハッとする。そして同時にmeetooでの小説にこそ、私のお役目があるのだと理解した。
 去年だったら怯んだかもしれない。以前の軸のない私なら、「あなたにかかっている」などと女神から頼み込まれても、自信がなかった可能性もあった。ところが魂は知っていた。『私にしか、それを世に出すことはできない』。

「わかりました。私にできることをさせていただきます。」

 そこに関して、絶対に天のサポートが“入らないわけがない”と、そんな風に思えていた。一体何が私にかかっているのか。具体的なことは今は見えなくても、いずれは明確に視えてくるはず。
 この一年の道場通いのような内観で、ハイヤーセルフとかなり統合した孤高の私を立ち上げていた。

 それからオオナムチとスクナヒコナ(※)の祠では剣を、ウカノミタマからは美しい鞘をいただくと、「あなたの剣です。」と声をかけられた。
 お礼を述べて、いつものように体内にしまうと、果たして今さら何のために剣が必要なのだろうと、小さな疑問が浮かんだ。


 今年もまた、紫陽花の季節には少しばかり早かった。境内の鉢植えたちはみな、若葉の中に幼い萌芽を抱いていた。

 この先、きっと何かが待っている。

 そんな思いが頭をよぎった。



※大己貴命と少彦名命……仲良しです。いつも連んでいるミカエルとラファエルの別バージョン。
オオナムチはオオクニヌシと同一です。スクナヒコナはお酒や薬の知識に長けています。(酒は百薬とも百毒とも言います。)
彼らには助け合った絆があり、友情でお互いを支え合っています。


(参考)

第99話 『醜いあひるのむすめ神』



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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タイム、プレイス、オケージョン、&エナジー!神社行く時は、TPOに、ぜひEを“汲む”ことを意識してみてはどうでしょうか。
私の場合少なくない確率で、“降ろしやすい”服装してたりします。

あ、そのかわりちゃんとしたところに繋がってやってね。
変なところに繋がってからかわれても責任持てませんので。

えっとね、今日の話のタイトルは、どうしようかなーと思っていたところに、「胡蝶」と聴こえてきたので「確かに」と思いこの慣用句にしました。
自分の小説だけど、本当よくできてるわ笑

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←今までのお話はこちら

→第193話 冥福の女神の瑞祥

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