【ドローン宅配】大都市圏でのドローンデリバリーも好調
人口760万人以上を有するアメリカ第4位の大都市圏(metropolitan statistical area)であるテキサス州のダラス・フォートワース複合都市圏(Dallas–Fort Worth metroplex)で2021年の秋から開始されたAlphabet(Googleの持株会社)傘下Wing Aviation社によるオンデマンド商用ドローンデリバリーサービス(drone delivery service)が順調なスタートを切った。
これまでWing社などのドローン物流サービス企業はバージニア州などの地方部でオンデマンド商用ドローンデリバリーサービスを行なってきたが、今回のダラス・フォートワースがアメリカの人口密集地である都市部において初のドローンデリバリー(drone delivery)開始となっている。
払拭された不安と懸念
日本メディアのドローンデリバリーに対する報道には思い込みや憶測で懸念をミスリードしている側面が見受けられるが、実際にはアメリカにおいてWing社の無事故記録は続いており、安全性はもちろんプライバシーや騒音などが特段問題になるようなことはなかった。
Wing社が2019年からドローン宅配サービスを行なっているバージニア州クリスチャンズバーグ地域の全住民に対して実施された調査では、住民の実に87%がドローンデリバリーを好ましいサービスと回答。逆に問題としてワースト1位となった項目は騒音だったが、騒音が気になると回答した住民は僅か17%にとどまった。(詳細は以前の記事『【ドローン宅配】アメリカでの好感度は驚異の9割』を参照ください。)
アメリカ以外の事例ではオーストラリアの首都キャンベラにおいてWing社のドローンがデリバリーの途中でカラスに襲撃される事件が発生したが、墜落することなくデリバリーを完了している。Wing社は大事を取ってキャンベラにおけるネスティングシーズンのドローンデリバリーを一旦中断していたが、現在では再開されている。因みに、日本のマスコミはデリバリードローンがカラスに襲われてサービスを一旦中止したことだけ面白おかしくニュースにしたが、再開していることは報道していない。
エコでクリーンなドローンデリバリー
また、2017年にアイスランドの首都レイキャビクで世界初のオンデマンド商用ドローンデリバリーサービスを開始したオンラインコマース企業がドローンデリバリー活用による環境負担(環境負荷)軽減への貢献で「環境イニシアチブ賞」を受賞したように、ドローンデリバリーはゼロエミッション実現に向けたエコでクリーンなロジスティクス手段として普及が期待されている。(詳細は以前の記事『【ドローンデリバリー】が環境イニシアチブ賞受賞』を参照ください。)
さらに、これまでのデータでは配達コストまで抑えられる。ただ、都市部で頻繁に使用されるようになると社会全体でのコストは上がるかもしれないという研究も出てきたが、それでもドローンを活用することで自動車の交通量削減と排ガス低減によるゼロエミッションが推進され、社会全体における環境負担(環境負荷)軽減が実現できる確度が高いとされる。
マルチネストレットモデル
今回、アメリカ最大手ドラッグストアチェーンWalgreens社と提携し、FriscoとLittle Elmからダラス・フォートワース複合都市圏でのオンデマンド商用ドローンデリバリーサービスを開始したWing社だが、注文処理はWing社の拠点(メインネスト)での一括処理ではなくWalgreens社の従業員がWalgreensのネストレットで処理する運用に変更されている。
このマルチネストレットモデル(multiple nestlets model)がWing社による都市型ドローンデリバリーの最大の特徴と言える。その他、アプリなどのプラットフォームは従前と同じものである。
「レベル4」解禁の日本
世界ではダラス・フォートワースや上海といった大都市圏(都市部)でのドローンデリバリーが加速してきたが、やっと日本も今年(2022年)有人地帯でのBVLOS飛行「レベル4」が解禁となる。漸くこれで日本は実証実験ばかりの「ドローン後進国」から脱却するスタートラインに立つことができる。