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【ドローンにパイロットは不要】日本でも全自動ドローン運用開始

日本のグリーンエネルギー企業である株式会社afterFITは今月(2022年2月)18日付のプレスリリース「再エネの低コスト化へ全自動ドローン導入、点検を省人化・コスト削減」で、2022年2月17日から同社が管理する栃木県内の太陽光発電所において全自動ドローンによる点検・監視業務の運用を開始したと発表した。

ドローンによる全自動点検・監視システム

afterFIT社が独自に開発したと見られるドローンによる全自動点検・監視システムは栃木県那須町芦野にある発電所(1,924KW)に導入された。ドローンによる点検のための操作はすべて東京本社から遠隔で実行する「レベル3」(目視外・補助者なし)での運用となる。

発電所にはドローンインボックス「DroneNest」(充電ポート)とドローンを設置。東京本社のパソコン画面上で飛行開始のボタンを押すとドローンは予め決められた点検ルートに沿って飛行、赤外線カメラで太陽光パネルの撮影をし、自動的にドローンインボックスに帰還する。

1回の点検時間は20分程度で、充電にかかる時間は60分。また、防犯監視システムとも連係。監視システムが異常検知した場所へドローンを飛行させ、侵入者への警告を行うことも可能となっている。

省人化・コスト削減・盗難対策

afterFIT社が全自動ドローンを開発・導入した理由は主に人件費カットによる保守コスト削減や省力化、警備システムとしての盗難防止にあると言う。もちろん、全自動ドローンであるためドローンのパイロット(「操縦士」あるいは「操縦者」)も必要ない。

また、当然ながらドローンはエコでクリーンなので環境負担(環境負荷)低減のためのゼロエミッション(カーボンニュートラル)に貢献する。

中国DJI社製品の使用がネック

今後、afterFIT社は自社管理以外の発電所に向けても導入を提案を進める方針である。ただ、世界的にサイバーセキュリティ上の懸念からエネルギー関連など重要インフラや施設で中国DJI社製ドローンおよびフライトコントローラーを含むシステムの使用は忌避される傾向にある。ところが、残念なことに同社は開発に当たってDJI製の汎用品を活用したとのことなので他社への売り込みは苦戦するかもしれない。また、使用しているドローンが自律型ではない恐れがあるのも懸念材料である。

世界の自律型ドローン監視ソリューション

自律型ドローンによる自動警備・監視・インフラ点検システムとしてはフランスのAzur Drones社の「SKEYETECH」、イスラエルのPercepto社の「AIM」(Autonomous site inspection and monitoring)が世界的に知られている。両社とも全天候型の自律型ドローンとドローンインボックスをベースとしたAI(人工知能)プラットフォームである。

Azur Drones社「SKEYETECH」

ヨーロッパで初めてドローン完全自律飛行の認可を受けたAzur Drones社は自律型ドローンによる自動警備・監視・インフラ点検システムのパイオニア的存在である(ただし、基本特許ではDPS社に敗訴)。このシステムにより警備員などの遠隔監視者はドローン操縦免許なしでドローンをリモート操作してBVLOS(目視見通し外)飛行運航あるいは運用することが可能となった。

2019年には既にダンケルク港の港湾警備に導入されていたという実績がある。現在では精油プラントや発電所など多くのエネルギー関連施設で導入されており、原子力発電関連施設でのテストも実施されている(原子力発電関連施設用「Skeyetech-DIZI」はAVNIR Energy社と共同開発)。

Percepto社「AIM」

アメリカ『TIME』誌の「2021年の発明ベスト100」に選出されたPercepto社の自律型ドローンによる自動警備・監視・インフラ点検システムは、アメリカのエネルギー施設で初となるBVLOS飛行運用の認可をFAA(アメリカ連邦航空局)から受けるなどアメリカでの実績を重ねている。

Percepto社のドローンインボックスシステムは「レベル5」ハリケーンの暴風でも運用できるのが特徴のひとつである。また、Boston Dynamics社の四足歩行ロボット「Spot」との連携オプションも用意されている。

水素ドローンによる点検ソリューション

また、水素燃料電池ドローンによる太陽光発電施設の検査・点検ソリューションでは韓国の斗山モビリティ・イノベーション(Doosan Mobility Innovation)社のプラットフォームが「Sustainability, Eco-Design & Smart Energy」部門で『CES 2022 イノベーション賞』を受賞したことは以前の記事「【韓国】水素燃料電池ドローンなどゼロエミッションで世界をリード」で触れた。

DMI社の水素PEMFC(Proton-exchange Membrane Fuel Cells)技術を活かした最大飛行時間120分(2時間)を誇る水素燃料電池マルチロータードローンにより1回の飛行で数十万枚のソーラーパネルを撮影し、12MWクラスの太陽光発電所を監視することが可能となっている。収集されたデータはクラウドに送られAI(人工知能)によって分析されたレポートがユーザーに送信される。

自律型ドローンフリート集中管理

さらに、先日(2022年2月16日)スペインのTelefónica傘下Telefónica Ingeniería de Seguridad(TIS)社とイギリスのUnmanned Life社は、警備・監視・インフラ点検などを実行する自律型ドローンフリート集中管理プラットフォームを発表した(「Telefónica launches autonomous drone fleet management solution to maximise security」)。

このようにドローンの「フリート(艦隊)運用」を前面に押し出したプラットフォームも続々登場している。TIS社とUnmanned Life社が共同開発した当該プラットフォームはドローンからの情報が5G通信で即時データ共有される。また、悪意あるドローンを無力化する機能、つまりカウンタードローンシステム(C-UAS)を組み込むことも可能なのが特徴である。

自動運用化するドローン産業

ドローンデリバリーなどのドローン物流やドローン測量、ドローンによるインフラや施設の検査・点検・警備・監視、災害時におけるドローンによる情報収集、農業用の作物収穫ドローンや園芸用の害虫駆除ドローンといったドローン産業(ドローンサービス産業)はもちろん、所謂「空飛ぶクルマ」と呼称される「乗用ドローン」ないし「エアモビリティ」を含めた「Advanced Air Mobility」およびそのサブセットである「Urban Air Mobility」(都市型空域交通あるいは都市航空交通システム)はそもそもが自動操縦(自律飛行による自動運航)を前提としたコンセプトである。

日本がドローン後進国となっている原因のひとつに「ドローンにはパイロットが必要」という誤った思い込みがある(AIの遅れや規制などに比べれば「遠因」と言えなくもないが)。今回の日本エネルギー企業による全自動ドローン運用開始が日本のドローン産業にとって刮目に値する理由はここにある。


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