炎上のしくみ ~2つの種類と炎上を避ける方法
毎日のようにどこかでネット炎上が起きているわけですが、その炎上の仕組みを知っておくことで、万が一自分や自分が担当する仕事がネット炎上した場合でも、対応することができます。
炎上はどこでどのように発生し、どう伝播していくのかを解説します。
炎上はどこで起こっているのか
まず炎上がどこで起こっているのかといえば、ほぼ100%X(旧ツイッター)です。その昔は炎上の着火点は2ちゃんねるでしたが、今ではその場所をXに移しました。
X以外のSNSでは炎上は起こりません。なぜXが炎上の着火点なのかといえば、Xにはリツイートという拡散機能があるからです。
リツイートのおかげ(せい)で、より炎上ネタが拡散されやすくなり、頻繁に炎上が起こるようになりました。
炎上には2種類ある
さて、最も重要なのは炎上には2種類あるということです。
1つめの炎上は、「不特定多数の誰しもが不快感を抱く炎上」です。これは誰しもが炎上の対象を不愉快に思う状態です。一時期バカッターとして話題になったお寿司屋さんのしょうゆをなめたり、おでんをツンツンしたりした事件が該当します。
2つめの炎上は、「特定層が不快感を抱く炎上」です。一部の人は特段何も追わないけれど、一定の人たちは炎上の対象を不愉快に思う状態です。
例えば以前に「月曜日のたわわ」という"月曜日が憂鬱な社会人に向け、豊満な体型をした女子を中心に描かれるショート作品”が、日経新聞に全面広告を出して物議を醸しました。
これは、未成年の女性を性的消費するコンテンツという、一定の女性には嫌悪感を抱かせるコンテンツの広告を、全国紙の全面広告として掲載するのは「不快な広告を見ない権利」をないがしろにされている、という炎上でした。
お寿司のしょうゆと違い、こちらの炎上は不快感を抱く人と、そう思わない人に分かれるため「表現の自由を守るべき」という主張もぶつかり、Xで論争となりました。
このように、炎上には2種類あるのですが、この違いはそのまま「炎上の広がり方に」に影響します。その理由を解説していきましょう。
2種類の炎上
誰しもが不快感を抱く炎上
醤油さしを舐めるなど誰しもが不快感を抱く
特定層が不快感を抱く炎上
性的な表現がされている広告など、特定層が不快感を抱く
X(SNS)のしくみで見る、2種類の炎上
その理由を解説する前に、まずはSNSのしくみについて説明します。
まず、これはXなどのフォロー、フォロワー型のSNSを図解したものです。
中央にたくさんのフォロワーを有するインフルエンサーのアカウントがあり、その配下にはフォロワーのアカウントがあります。このインフルエンサーアカウントをハブと呼びます。
ハブ(インフルエンサーアカウント)に紐づくフォロワーのアカウントは、ノードと呼びます。
ハブはたくさんのノードを有して巨大な塊を形成してます。ノードの下にはたくさんのフォロワー(別のノード)はありませんが、他のノードと結びついています。ノードのいくつかは、他のハブ&ノードの塊と繋がって橋渡しをしています。
この状態で、たいしたフォロワーを有しないノード(黄色)が何かをXでつぶやくとします。それが拡散されるためには、連続的にノードからノードに伝わっていかなくてはなりません。途中のノードが拡散を止めれば、拡散の連鎖は止まります。
つまり、インフルエンサーではない一般のフォロワー(ノード)アカウント起点で炎上を発生させるためには、連続的にノードからノードに拡散させなければならないので「誰しもが不快感を抱く炎上」である必要があるのです。
逆に、中央に位置するインフルエンサー(ハブ)が1つでも投稿をすれば、配下のノード全てに情報が伝わります。
つまり、ノードからノードに連続的に拡散されなくても、インフルエンサー(ハブ)が拡散すれば、一発で炎上が完成してしまうわけです。
つまり、特定層が不快感を抱く炎上が発生する場合は、ノードからノードに伝わりづらい炎上ネタのため、このインフルエンサー(ハブ)発信の可能性が高いのです。
企業の炎上は、インフルエンサー(ハブ)発信で広まることが多い
ということで、特定層が不快感を抱く炎上が発生する場合は、インフルエンサー(ハブ)発信の可能性が高いのですが、企業の炎上の多くはこの形です。
2021年に報道ステーションが若者用に制作したCMが炎上しました。
若い女性が、下記のようなセリフをカメラ目線で話します。
このCMが炎上した理由は「何の脈絡もない話を早口でまくしたてる」ことが、女性のステレオタイプとして描いているのではないか、という点と「ジェンダー平等」のスローガンが時代遅れであるという点が、いまだに日本においてジェンダーは進んでいないだろうという点が指摘されていました。
こういったジェンダーやフェミニズムに関わる炎上は、有識者や活動家のX起点で指摘されると一気に議論を呼びます。
つまり、ジェンダーなどに限らず、一定の有識者、専門家がいる領域に(逆に)刺さるコンテンツを作ってしまうと、炎上リスクが跳ね上がるわけです。
先日も、Xにて「ホラーと小説は相性が悪い(音や絵がないから)」という趣旨の投稿が、綾辻行人先生などホラー作家の先生方から反論されていて、小さく炎上していました。
何らかのコンテンツや広告を出す際には、特定層に属する有識者、専門家に(逆に)刺さってしまう可能性はないか、チェックをする必要があります。
まとめ 炎上の種類を理解しよう
ということで、炎上には
誰しもが不快感を抱く炎上
特定層が不快感を抱く炎上
の2種類が存在し、その種類はそのまま
誰しもが不快感を抱く炎上
→ノードが連続的にリツイートして炎上する
特定層が不快感を抱く炎上
→ハブ(インフルエンサー)がツイートして炎上する
という炎上の形態に繋がるのでした。
基本的に企業で起こる炎上の形態は「特定層が不快感を抱く炎上」となるので、そのコンテンツは誰のために何の目的で、どのように表現されたものなのか、文脈を多方向からチェックすることが重要です。