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スタバに学ぶ「意外な」リピート率の上げ方

日本最大のコーヒーチェーンの座に君臨するスタバ

日本のコーヒーチェーン業界で、圧倒的な存在感を放っているスターバックス。そのマーケティング戦略において、意外なリピート率の上げ方があるのではないかというお話です。

店舗ビジネスにおいて最重要となるのがリピート率なのですが、スタバさんはこのマーケティング施策が本当に上手いんですよね。

主な成功要因としては、「一人作業の聖地」というブランディングの確立や、定期的なシーズナルドリンクの告知など、オーソドックスな施策が挙げられます(実は昔より座席の間隔は狭いのですが)。

しかし、そういう正攻法の施策の陰に隠れて、意外な成功要因があるのではないかと思っています。その方程式はこうです:

突発性 × イベント性 = 定期的なチェック意欲の創出

突発性=スターバックは急に何かをやって、急に終わる

スターバックスでは、驚くほど短期間の限定メニューや期間限定店舗を展開しています。具体例を見てみましょう:

  • 「サンセット パイン フラペチーノ」:わずか9日間の限定販売

  • COFFEE fun WEEK:2週間限定の特別イベント開催

  • 「初雪店」:4日間限定でのポップアップストア展開

通常、飲食チェーン店の限定メニューは、シーズン中継続して提供されることが一般的です。開発コストや原材料の調達を考えると、9日間限定というのは採算が取れないようにも思えます。

でも、こういった「急な展開→素早い終了」のパターンを繰り返すことで、人々の中に「スタバって、突然何かを始めて、あっという間に終わっちゃうんだよね」という認識を定着させることができます

結果として「見逃したくないから定期的にチェックしなきゃ」となり、自然とアプリもダウンロードしちゃうわけです。実際、スターバックスリワードの会員になると、限定メニューの先行購入特典なんかもあったりします。

それと、たまにフードの無料配布とかもやってますよね。これも同じく突発性の演出の一環だと考えられます。

イベント性=イベントの本質とは"何かやってる感”の演出

2つ目のポイントは、スターバックスという空間が持つイベント性です。「えっ、スタバってそんなにイベントやってるの?」と思う人も多いかもしれません。私もそう思います。正直に言うと、スタバで行われるイベントって、大したことないんですよね。

例えば以下のようなイベントが開催されています:

  • テイスティング パーティー:季節のドリンクやフードを学べるイベント

  • コーヒーセミナー:バリスタからコーヒーについて学べる機会

  • ミュージックライブ

でも、これらのイベントに参加したことがある人は少ないのではないでしょうか。私自身、一度も参加したことありません。

ではなぜこれらのイベントがリピート率向上に貢献していると思うのでしょうか。その答えは「なんかやってる感」にあるんです。

イベントには人が集まりますその本質を突き詰めると、そこに「なんかやってる感」があるからなんです。以前、10名以上のイベント参加者にインタビューを実施したことがありますが、「これがあるからイベントに参加する」という明確な理由を挙げた人は誰一人いませんでした。

音楽フェス常連の方に毎年の参加理由を尋ねても、「なんか音楽が流れてて、人がいて、お酒があって、なんか良い空気流れてる」というような、実に曖昧な回答でした。

つまり、イベントに足を運ぶ人々は、必ずしも強い目的を持っているわけではないのです。「なんかやってる感」のある場所に身を置くこと自体が、心地良いんですね。
地域のお祭りだって同じです。さほど美味しくもない露店の食べ物のために行くわけではありません。屋台が並び、人々が集まり、時折お神輿が通る—そんな「なんかやってる感」満載の空間に身を置くことが心地良いわけです。

スタバも同様で、常に「なんかやってる感」を醸し出している空間を作ってると思うんですよね。

脳の報酬系への働きかけ

こうして見ると、先ほどの方程式が見事に当てはまります:

突発性 × イベント性 = 定期的なチェック意欲の創出

これは完全な私見ですが、けっこう的を射ているのではないでしょうか。

要するに、これは脳の報酬系を刺激する仕組みなんですよね。ギャンブルと同じで、ドーパミンを分泌させるには、当たりが出たり出なかったりするランダム性が必要です。脳はその快感を覚えて、当たりを引くまで通い続けてしまうわけです。

もし期間限定メニューの提供期間が毎回同じだったり、フードテイスティングが毎月決まった日に開催されていたら、それは予測可能なことなのでドーパミンは分泌されません。
実施日や期間をランダムにすることで、「今日行ったら何かやってるかも」「そのうちまた何かやるかも」という期待感やワクワク感が生まれるのです。

ちなみにこれはコンシューマー向けのあらゆるサービスに転用できる考え方ですし、組織作りや恋愛にも応用できます。
例えば毎週金曜日に従業員にピザがふるまわれるより、たまに突発的にピザが振るわれた方が喜ばれます。
恋愛においても毎日プレゼントをくれるより、ランダムでプレゼントをもらえた方がうれしいわけです。

ということで、スタバが実施している(と私が勝手に思っている)報酬系の刺激施策は、あらゆるシチュエーションに転用可能だと思うのです。


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とりさん
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