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温度の低いコンテンツは、賞味期限が長い法則~Mステのタモリさんに学ぶ

温度の高いコンテンツと低いコンテンツ


先日テレビをつけたら「渡辺篤史の建もの探訪」のスペシャルバージョンを放送していたのですね。番組を知らない人に説明すると、俳優の渡辺篤史さんが個人の邸宅を訪問し、見学をするという番組なのですが、「え?まだやってるんだこの番組」と思うレベルの長寿番組で、初回放映日を調べたところ、なんと1989年4月1日となっており、30年以上も続いているのです。

「渡辺篤史の建もの探訪」は、渡辺篤史さんが玄関先で「良いアーチですね」とつぶやきながら淡々と家の中を案内する進行です。
テレビ番組に限らず、コンテンツには温度の高いものと低いものがありますが、建もの探訪は温度の低いコンテンツなのです。

温度が高いコンテンツは視聴者のドーパミンを分泌させ、ドキドキワクワクするコンテンツです。一方、低いコンテンツは興奮物質を分泌させずに落ち着いて見られるコンテンツです。

コンテンツ単位の賞味期限という視点で見たときに、温度の低いコンテンツの方が賞味期限が長いのです。

温度の高いコンテンツは刺激が強く、低いコンテンツは淡々としている


温度の高いコンテンツと低いコンテンツの例を挙げると、高いコンテンツには以下のようなものがあります。

温度の高いコンテンツ

  • 展開が気になるドラマやアニメ

  • 格闘技番組

  • 刺激の強いバラエティ番組

温度の高いコンテンツは、展開のスピードが早いため集中して観る必要があるし、内容が急展開するため、観ているとドーパミンなどの脳内物質が分泌されやすいという特徴があります。

一方で温度の低いコンテンツの例は以下のようなものです。

温度の低いコンテンツ

  • 日常を描いたドラマやアニメ

  • 落ち着いたトーンのトーク番組

  • 散歩番組

温度の低いコンテンツは、展開のスピードが遅いのでながら観が可能ですし、内容の緩急がないため、観ていても興奮するということがありません。トイレなどで途中で離脱しても、戻ってきてそのまま観ることが可能です。

さきほどの「渡辺篤史の建もの探訪」しかり、何十年も続く番組というのは、だいたい温度が低い方に属しています。

「徹子の部屋」などご長寿番組は、温度が低いコンテンツ


例えば1976年に放映を開始した「徹子の部屋」は落ち着いたトーンのトーク番組ですし、初回放映日が2015年の「じゅん散歩」は散歩番組です。「じゅん散歩」の前から同じ枠で散歩番組が放映されているので、2015年以前から続いています。

逆に、温度の高いコンテンツは、終わるまでの期間が短いのです。サスペンスドラマは1クール3か月で終わりますし、格闘技の番組も2時間程度です。
温度の高いコンテンツは、人々のアテンションを占有するため、消費期間を短く設定されています。

最後に残ったタモリさんのレギュラー番組


タモリさんといえば数々の番組の司会をしていますが、最近徐々にレギュラー放映が終わりつつあります。まず最初に終わったのは「笑っていいとも!」で、次に「タモリ倶楽部」が終了し、最近「ブラタモリ」の終了が発表されました。

最後に残ったのは音楽番組「ミュージックステーション」なのですが、Mステにおけるタモリさんはものすごいテンションが低いんですよね。そもそも音楽に興味がないといういうのもありますが、笑いの緩急をつけていた「笑っていいとも!」に比べて、日常会話のように力が抜けたトークをしているのがMステです。

最後に残ったレギュラー番組がMステであるというのも、タモリさんのMCが温度の低いコンテンツ足り得る要素になっていることも、要因のひとつであるような気がします。
Mステと同時期に放映していた「HEY!HEY!HEY!」や「うたばん」はトークの面白さに重きを置いていましたが、Mステよりも早く終了してしまいました。

温度の低いコンテンツの賞味期限が長い理由


温度の低いコンテンツの賞味期限は、なぜ長いかというと、それは温度の低いコンテンツが「日常」だからです。
緩急が弱く、日常に溶け込むため日々接種しても気にならず、食べ物に例えたら白米のような存在なのです。

一方温度の高いコンテンツは、食べたらドーパミンが分泌されるステーキのようなもので、特別な日にはピッタリですが、毎日欲しいかと言われると…ということになります。

カフェで交わされる日常会話に耳を澄ませてみると、ほとんど会話の緩急はなく、で成り立っています。

「新しいカフェができたから行ってみたんだけど」
「うん」
「チーズケーキがすごい美味しくて
「わかる、チーズケーキって美味しいよね」
「すごいたくさん食べちゃって、さらにテイクアウトしたんだけど」
「テイクアウトまでしたんだ」
「でもたくさん買いすぎて食べ切れないんだよね」
「え?でも冷凍できるくない

という風に、会話のほとんどは同意で、相手の意見表明は1割くらいなのです。「日常」にはほとんど緩急がないので、日常的に接種するコンテンツも緩急がない方が長続きするのですね。

ということで、究極の温度の低いコンテンツというのは、すなわち日常になるので「日常」のコンテンツが最も賞味期限が長いということになります。

究極の「日常」コンテンツはサザエさん


結論として「温度の低いコンテンツ」はすなわち日常なので、つまり「サザエさん」や「ちびまる子」ちゃんが最も賞味期限の長いコンテンツ足り得るということになります。

「サザエさん」を観ていても、アドレナリンが分泌されるような衝撃的な事件は起こりません。あくまでも日常の延長線上で起こる、ちょっとしたエピソードがあるだけです。さきほどの日常の会話の9割は同意で、1割が意見表明というのと同じ塩梅なのです。

何も起こらないからこそ、毎週毎週定時刻に観てしまう、日常に溶け込んだコンテンツになり得るのです。

個人クリエイターは温度の低いコンテンツの方が有利


ということで温度の高いコンテンツと低いコンテンツについて解説してきましたが、個人のクリエイターにとっては「温度の低いコンテンツ」の方が有利です。なぜならば、プロのクリエイターの多くは「温度の高いコンテンツ」を提供しているからです。

温度の高いコンテンツはNetflixなどの配信プラットフォームにて多額の予算をかけて制作されるため、なおのこと「温度の低いコンテンツ」を目指した方が良いでしょう。

ちなみに大ヒットした「水曜どうでしょう」も、通常のバラエティとは一線を隠す日常の緩さを醸し出すことにより、温度を低めの方に振り切ったように見えます。


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とりさん
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