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伊吹有喜(著)『ミッドナイト・バス』を読了。

伊吹有喜(著)『ミッドナイト・バス』という本を購入しました。
伊吹有喜さんの作品を読むのは、2021年の本屋大賞で3位となった『犬がいた季節』以来、2冊目です。

今年のお盆休みは、長く取ることができました。
節約ということもありますが、ゆっくり読書をしたいと思い、大阪への帰省は新幹線でなく、高速バスにしました。

大阪駅JRバスターミナルに到着して、地下鉄御堂筋線に乗る前に、「ブックスタジオ大阪」という本屋さんに立ち寄りました。
そこで平積みされていたのが、伊吹有喜(著)『ミッドナイト・バス』です。

私の母は昨年の9月に他界し、実家には父が一人で暮らしていました。
しかしその父も、今年の6月に狭心症で倒れて入院し、現在は介護施設に入居しています。
そんなことで、今年は初めて両親のいない実家でのお盆となりました。

私には、兄と姉がいます。
兄弟三人が育った実家で過ごしながら、空いた時間に『ミッドナイト・バス』を読み進めていきました。
読み進めながら、家族とは一体何なんだろうと考えていたのです。

本文を読み終えて、解説を読んでいると、書評家の吉田伸子さんが、以下のように書かれていました。

家族というのは、共に過ごした時間の記憶である、と私は思っている。

『ミッドナイト・バス』解説より

私たち兄弟三人、それぞれが実家を離れ、別々の人生を歩き出して数十年が経っています。
それでも、育った実家にいる間、三人は家族に戻っていた気がしました。

伊吹有喜(著)『ミッドナイト・バス』は、ちょっと複雑になってしまった家族の物語です。
そして、恋の物語でもあります。
その物語に欠かすことのできないアイテムが、夜行バスです。
そして、家族と恋と深夜バスにまつわるスピンオフが、いい感じに配置されています。

どこかに旅をするとき、往路と復路では精神状態が全く変わります。
特に深夜バスでの復路は、考える時間が長すぎて、精神衛生上あまりよくありません。

深夜バスには、新幹線や飛行機にはない、哀愁が漂っています。
東京駅八重洲南口や新宿バスターミナルに出入りするバスを見ると、なぜか切ない気持ちになるのは、私だけでしょうか。

伊吹有喜(著)『ミッドナイト・バス』は、複雑な人間関係の物語です。
しかし、ジメジメした雰囲気はありません。少し長い目での小説ではありますが、とても楽しく読むことができます。
そして読み終えると、家族だけでなく他人に対しても、優しい気持ちにさせられのです。


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