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「パンガシウスという魚」
パンガシウスという魚を知ってから、まだ数カ月しか経っていない。確か昨年の秋か冬、スーパーの鮮魚売り場で偶然見かけたのが最初だった。
見慣れない、そしておよそ魚らしくない名前に興味が引かれた。カタカナ6文字を連ねた、日本人にとっては余所よそしく空虚な響き。絶滅した古代魚みたいで、近寄りがたい違和感を覚え、すぐに「ものは試し」と飛びついてみる気にはなれなかった。
が・・・、売り場をあとにしてから、その魚のことが妙に気になり始め、踵を返した。
そして改めて、ダメモト覚悟で試してみる気になった・・・、という次第。
レジを済ませて、自宅に向かう途中、今買ったばかりの魚の名前がなかなか思い出せない。その親しみの感じられない6文字は、まるで覚えられることを拒否してそっぽを向いているかのようだ。
調理するため、冷蔵庫からその魚の入ったパックを取り出し、まな板の上で包丁を入れながら、どうやってその名前を覚えようかと考えた。
若い頃に比べると明らかに記憶力が低下しており、ダジャレでも考えないと新しい単語がなかなか海馬に定着しないことを自覚している。
そして思い至ったのが、「パン+菓子+薄」。
水煮して、酒粕と酢味噌で食べてみたが、癖のない淡泊な味で、パサつきのないしっとりとした食感。食べやすいと思った。
魚にしては柔らかい食感で味が淡泊、食べる前に何の気なしに考えついた「パン+菓子+薄」という三語による記憶法は、結果としてイメージ的に結びついた。
我ながらうまい方法を考えついたと、人知れず小さな満足を感じていた、
のだが・・・、
弊害もあった。
「パンガシウス」という単語が、すんなりとは思い出せない。
まず最初に、頭にロールパンの形と「パン」という響きを同時に思い浮かべる。
それに続いて「パン+菓子」とパンから菓子を連想し、さらに、薄い味だから「薄」をくっつける。
「パン・・・、ガシ・・・、ウス」
三つの言葉を、一歩一歩ステップを踏むように引き寄せる。
いちいちこんな思考過程を経なければ「パンガシウス」にたどり着かないのである(笑)
そんな状態がしばらく続いたが、最近になって、ようやく「パンガシウス」という言葉がすんなりと浮かぶようになったのであった!
このパンガシウスという魚、ナマズの一種でインドシナ半島を流れるメコン川やチャオプラヤ川の流域が原産。主にベトナムのメコンデルタで養殖されているそうで、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれており、健康維持に役立つ栄養素が豊富とのこと。
こんな姿で泳いでるらしい。
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