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何にも縛られたくなくて、髪を金髪にした。

昔から真面目な人間だった。
厳格な家庭で育ったからかもしれない。
親と世間が敷いたレールから外れたことは、学生時代なかった。

高校生の時、大学受験に失敗した。
地元の少ない学校から選んだ高校受験とは違い、何をしたいかすら自分で考えることが出来なかった大学受験は、選ぶことすら難しかった。
親は私を責めた。
私は苦しくて苦しくて、左手を掻きむしった。
それが、小さな抵抗だった。

「高校卒業したら、この家を出て行け!」
と、箸を投げつけられたこともあり、家を出たいと強く思っていた。
でも、逃げ道は閉ざされた。

結局、親が薦めてきた地元の短大に行くことになった。
また、縛られる生活が始まり、窮屈で仕方がなかった。
女子が大半の学部になじめず、短大は退学した。

親と祖父母からのなじりが始まった。
「何をやってもダメな奴だ」
「お前みたいな奴をバカっていうんだよ」
毎日泣いていた。
「気分が悪くなるから、泣くのをやめろ」
泣くのすら、許されなかった。

もう精神が限界にきていた私は、アルバイトで貯めたわずかなお金を持って、家を飛び出した。
親には理由をこじつけして、遠くの県外にアパートを借りた。
ホームシックになんかならなかった。

これで、もう自由だ。

そう思ったのも束の間、今度は親のように私を束縛する人を恋人にしてしまった。
髪型も、体型も、服も、性格も、顔でさえその人の好みに合わせないといけない。
苦しかった。
また、毎日泣く日々が始まった。

渦中にいる時には、何が嫌なのか本気でわからなかった。
自分がなんで泣いているのかさえわからない。
「私には素敵な恋人がいるのに、なんで?」
といつも思っていた。

恋人には呪いをかけられた。
「俺と別れたら、俺より優しくて、かっこいい人とは、もう2度と付き合えないよ」
だから、どんなに苦しくても耐えなければならない。
言う通りにしなければならない。
私はさながらマリオネットだった。

私は私を愛して欲しい。
私じゃない造られた私じゃなくて、元々の私を。
そう、願いを込めて手紙を書いた。
私の願いは叶わなかった。

仕事をするも、うまくいかない。
恋人が望んだ給料のいいお堅い職業に就いていた。
プライベートがうまくいかず、仕事も忙しく、私の精神は削られていった。

朝、着替えをするロッカーの前で泣いていた。
仕事場で、泣いてしまった。
家に帰らされた。
それでも、仕事に行くのを辞めなかった。

気付いたら病気になっていた。
なんだか体調がおかしい。
精神科に行った私は、双極性障害との診断を受けた。

私は仕事を辞めさせられた。



もう何にも縛られたくない。
私は髪を金髪にした。
タバコも吸ってみた。
強くなれる気がしたけど、強くはなれなかった。



季節は過ぎ、私を縛らない人たちと出会うことが出来た。
私は金髪をやめた。

結局何をしても私は私なのだ。
何者でもない。

今も、私は私のままだ。
それでも、生きていく。


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