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自分の枠組みを解き放て!~ハーバーマスと3つのナレッジ~

前に、ドイツの社会哲学者、Jürgen Habermas (ユルゲン・ハーバーマス)についてこちらの記事で少しだけ触れました↓

今日はハーバーマスが唱えた3つのナレッジについて紹介します。

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こちらが再び登場、ハーバーマスさん。成人学習の領域でもかなりでてくる方。

ハーバーマスと3つのナレッジ

ハーバーマスさんは1971年に発表した研究で、knowledge (知恵・知識)を大きく3つに分類してます。一つずつ見ていこう、、

そして、いつものように断りを入れておきますが「私独自の訳し方」なので注意。

きっと探せばプロの学者による翻訳が出てくると思うけど、私なりの訳です。

① 技術的な知恵(Technical knowledge)

これはトレーニングなどで得られる、技術的な知恵

料理でいえば包丁の使い方、お米の研ぎ方

漁師でいったらどこで魚が捕れるかの見分け方、船の操縦の仕方

看護でいえば注射の仕方、安全な移乗の仕方

などなど、訓練されれば得られる知識や知恵のこと。

多くの組織のゴールは「技術的な知恵を教えること」でもあります。

そりゃそうよね、包丁が使えなければ料理はできないし、船が操縦できなかったら魚捕まえられないし、安全な移乗ができなければ看護師として働けない。

職場での学びの大部分を占める。

② 意思疎通的な知恵(Communicative knowledge)

私達は社会で生きていく中で「人と関わる」

もちろん1人で働いているひともいるけど、どんな仕事でも相手がいて、何らかの意思疎通が必要になってくる。

そして、そこで共有される共通認識がここに含まれます。

たとえば、チームワーク・コミュニケーションスキル・リーダーシップトレーニングなどなど。

チームワークはどんなに研修を受けても磨かれるものではないし、リーダーシップも相手がいなければ成り立たないように、人と人の繋がりから得られるのがこの知識。

人との関わりの中で段々と「あ、これってこうなんだ」と自然と知恵を身につけていく。

空気を読んだり、チームがうまく機能するために影で動いたり、何かを動かしていくリーダーシップもここに含まれる。

それをうまく獲得できないと「あいつは空気読めないやつ」なんて悲しいけどそう思われちゃう。

人と人との対話のなかから、そして意思疎通のなかかから生まれる知識や知恵が Communicative knowledgeです。

③ 解放的な知恵(Emancipatory knowledge)

タイトルからして意味がわからない(私もぶっちゃけ意味がわからない)けどここで止めないでほしい!

なぜならこの3つめの知恵こそが成人学習の要となる部分だから。

①の技術的な知恵、②の意思疎通的な知恵を獲得すると、自分の「あたりまえ」ができあがります。

これはこうするものだ、上司には敬語を使うべきだ、わたしはこうあるべきだ、それがルールで、私にとっての「あたりまえ」なんだから。

でも、あるとき、

あれ?これって、これで本当にいいの?

これってずっとそうだと信じていたけど、本当にそうなのかな?

なんで社会ってこれが良しとされているんだろう。私も本当にそう思う?

自分自身で質問が芽生えたとき、それは自分の殻から解放されたとき。

自分自身の固定観念から解放される、自由になる(being aware and critical of our subjective perceptions of knowledge and of the constraints of social knowledge)こと。

それがハーバーマスが最も重要だと唱えている3つめのemancipatory learningです。

必ずしも3つめにたどりつくわけではない

十分なトレーニングと、社会的なかかわりのなかから、①と②を獲得することができます。ただ、必ずしも③が起こるとは限らないといわれています。

でも、おとなの学びの本当のゴールはここ。③を引き起こすこと。

本当は①をゴールにしてはいけないんだけど、技術的な知恵は一番獲得するのが簡単だから、そこがゴールになってしまう。目に見えて評価もできるしね。

最近読んだ、心打たれるnoteを紹介しとこう。

これはもうまさに髙木さんが働く経験のなかで③の解放的知識を獲得した経緯を表していると思うんです。

好きなのに辞める、好きだから辞める、それこそ③に到達したときに自分の世界の見え方が一瞬にして変わったんだと思う。たぶん。

①と②はもちろん大切という事実に変わりはない。

技術的知恵がなければ仕事にならないし、意思疎通的知恵がなければあっという間に干されてクビになる。

でも、③の存在はとてつもなく大きい。

社会を変革する、とまで大きいことではなくても、自分の見方って本当にこれでいいのか、無意識のうちに自分の殻をつくってしまっているのではないか、閉じこもって、窮屈になってはいないか。

結局過去に書いた三浦春馬さんに対しての思い込みも、

ハンバーガー屋さんのこれも

成人学習って結局いろんなひとが、いろんな角度からそれを唱えているんだけど、伝えたいメッセージは同じだと思うんだ。


解き放たれたとき、どんな世界が見えるだろう。


参考文献

Cranton, P. (2016). Understanding and Promoting Transformative Learning - A guide to theory and practice- 3rd edition. Stylus publishing.

(この本の作者のパトリシア・クラントンさんについてはまた追々絶対書きます!2000年に来日して医学書院『看護教育』にも特集記事がでてます)





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