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自由の始まりはコーヒーハウスから~ハーバーマスとdeliberative democracy~

これまで、何度か登場しているユルゲン・ハーバーマスさん。

最近はなぜかどの授業でもハーバーマスさんが頻回に登場する。

前回書いた「3つのナレッジ」も有名なのだけど、

彼が一番有名なのは圧倒的に「民主主義」の根幹を築きあげたから。

最近はアメリカの大統領選挙の大騒動もあって、余計に「民主主義」とはなんだろう、と問い直す機会が必要だと思いました。

今日はハーバーマスの deliberative democracy (熟議民主主義)について。

民主主義ってなんだろう

私はもっぱら政治的な話には疎いので、ここで民主主義の定義をみてみる。

民主主義とは、国民が主権(国家を治める権力)を持ち自分達のために政治を行うことです。

(引用:https://say-g.com/democracy-410)

そして、ハーバーマスさんがいうのは、deliberative democracy (日本語:熟議民主主義)というもの。

ジュク・・・ギ・・・?

どうして日本語訳はこんなにわかりにくいのか(怒)

In deliberation, citizens exchange arguments and consider different claims that are designed to secure the public good. Through this conversation, citizens can come to an agreement about what procedure, action, or policy will best produce the public good.

ここで定義されているのは、

① 市民は討論することで異なる考え方を交換しあって「公共に良いものはなにか」を生み出す

② 対話を通して、どんな手段、行為、政策が「公共に良いか」の結論にたどりつく

つまり、コミュニケーションや対話や討論を通してみんなで公共に良いものを考えていく、という民主主義です。(それを熟議民主主義と呼びます)

Public sphere (公共圏)とは

このdeliberative democracyをわかるために、ハーバーマスさんの最も重要な概念は Public sphere (公共圏)というもの。

またまた難しい単語がでてきちゃった、、


もともと、中世では国王、領主、聖職者など権威のあるひとたちが全てを決めて、動かしていたのはまぁ私が説明するまでもありませんが、、、(立憲君主制とか歴史でやったやつね)

そんななかで、当時「コーヒーハウス」と呼ばれる喫茶店で一般の人々が集まるようになって、いろんな意見交換やあーでもないこーでもないと論議されたりするようになって、

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(画像:https://brewminate.com/the-lost-world-of-the-london-coffeehouse/)

てかこの絵よくみえると真ん中のひとが左のひとにコーヒーぶっかけてて笑った。

そこから、バスに乗ってるときや、地下鉄の駅で電車を待っているとき、パブ、映画館の待ち列、サッカーのハーフタイムなどなどいろんな「ちょっとした時間」で人々が話しをしただすようになった(informal conversation)。

この「ちょっとした時間や場所」で人々が自由に意見交換をするのを、public sphere (公共圏)といいます。

段々とこの一般の市民のひとたちの討論が力をつけていき、王や領主など元々力を持っていたひとたちよりもパワーを越えていって、民主主義がうまれていったとされます。

このコーヒーをぶっかけたくなるような白熱したディベート(討論)を、ハーバーマスは

Habermas outlines a concept of discourse as a debate where proposals are critically tested, information is shared in an inclusive and public way, where no one is excluded, and all have equal opportunity to take part

提案を批判的にみたり、情報が公に共有され、だれも除外されることなく、全員が平等に参加する機会を持つ、と表現しています。

この、一連の大人が何が起こっているのかを理解しようとしたり、討議したり、意見交換をしたり、「対話」を大切にすることを、communicative action と理論にしたのがハーバーマスさんです。

コミュニケーション的行為論」などで調べると、より専門的な文献がたくさんでてきます!

民主主義が揺るがされる「システム」の誕生

しかししかし、資本主義(capitalism)の登場によって、「システム」というものができて、人々はシステムの枠組みのなかで生きるようになっていき、人々はどんどん公共のなかで討議する機会を奪われていきます。

(これを少し難しいですが、 colonization of the lifeworld (生活世界の植民地化)と呼びます)

生活世界の植民地化とか、表現がもう、怖い・・・

ハーバーマスはこの市民の参加機会が失われていくことを「adult learning crisis(成人学習の危機)」と危惧しています。

お金や権力、情報社会、IT化など様々な要因がこの「生活世界の植民地化」を助長させ、このpubic sphereが消えつつあることに危険信号をだしました。


たしかに、なかなか現代において市民の声が届いている、という実感は難しいように思います。ドトール行っても熱く討議しているひとなんて見かけないし、人と真っ正面からディベートなんてしないし。。

この前提を問う「クリティカル」に物事をみることも、すごく現代では養う機会が少ないです。

だからこそ今回のアメリカ大統領選はすごく、この民主主義を考えるうえで大きなものだったなと感じました。

この、自由はコーヒーハウスから始まる、というのはとても面白いというかかつて人々がなんでもないちょっとした時間に話していたことが力を徐々に持ち始めるってなんかいいなーって思いながら文献読んでいました。

ちなみに、Transformative learning (変容学習)で有名なMezirowはこのハーバーマスの理論をものすごい取り入れています。(特にcritical reflection)

そして、noteを書いて1年になりますがまだメジローを一度も登場させていない私。。今期は変容学習の授業を履修してごりごりに学んでいるので、いずれ!いずれ!!!

今日はこの辺で。また明日から1週間頑張りましょうーーー

(コーヒーは他人にかけないように!)


参考文献

Brookfield, Learning democratic reason: The adult education project of Jurgen Habermas, Teachers College Record, 107 (6), 1127-1168, 2005

Fleming, Habermas on Civil society, Lifeworld and system: Unearthing the social in transformation theory, Teachers College Record, 2002

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