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こういう時に思い出す本

なにか大きな災害が起きている時、またはそれらが近づいている時、思い出す本がある。
【終末のフール/伊坂幸太郎 著】だ。

舞台は「8年後に小惑星が衝突して、地球が滅亡する」という予告から約5年が経過した世界。あと3年で自分たちの命が尽きる”終末を前にした人々”を題材にした、短編連作集である。各話淡々とした調子でストーリーが進んでいくが、ふとした瞬間に「これが人間なんだな」と思うような場面が出てくる、印象深い1冊だ。

そして最近、大きな災害を前にすると思い出す本が、もう一つできた。
【むかしのはなし/三浦しをん 著】である。

こちらの舞台は「3ヶ月後に、隕石が地球にぶつかり滅亡する」という世界線で、同じく各話のストーリーが少しずつ繋がっている短編連作集だ。
一話目に出てくる「抽選で選ばれた人間だけが、ロケットに乗って地球を脱出できる」「選ばれるのは優秀な人間だけ」という要素は、世界が世界なら起こりうる出来事だろうなと思えるほど、リアリティを帯びている。
また、これらは”日本の昔話”を現代風にアレンジした構成となっており、『終末のフール』とはまた違った読後感と哀愁があった。

今回、近いうちに巨大地震が発生するかもしれないという警告を受け、わたしはこの2冊のことを思い出した。他人事のように読んでいた小説のようなことが、現実世界でも起こりうること。それによって、”当たり前”だったものが消失し、変化への適応を余儀なくされる可能性があることなどを思い、気持ちが沈んだ。

じっとしていても落ち着かないから、家の中を動き回り、できる限りの備えをまとめてみる。すると、何かを感じ取った猫たちが不思議そうな目でこちらを見つめるばかりか、彼らまでソワソワしはじめた。しかしそれも長くは続かず、気付けばベッドに寝転がったり、撫でてくれと甘えた声を出したり、いつもの彼らに戻るのである。そんな姿を見て、この日常ばかりは手放したくないという思いが強くなった。
この日常を守るためにも、まずは自分が強く心を持たなければいけない。冷静な判断と、情報収集と、行動とで、最終的に「なんだ、結局なんということはなかったなぁ」拍子抜けるような結果になれば万々歳である。そのためにも気を抜かず今日を過ごす。

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