日本一のフィードバック集団から教わった話〜コンカーアカデミー振り返り〜
1 コンカーアカデミーとは
コンカーアカデミーとは、日本における最も働きがいのある会社(GPTW:Great Place to Work® 従業員100人から999人の中規模部門)に4年連続で選出されている、株式会社コンカーがCSRの一環として外部に向けて開校しているプロジェクトです。
昨夏のコンカーアカデミー1期生に続き、今回は"フィードバック研修"にコンカーアカデミー第5期生として参加させていただきました!
今回も講師となっていただいた、同社代表取締役社長の三村真宗さん(引き続き、敬意を込め"さん"付けとさせていただきます)は「フィードバックはコンカーの働きがいを高める取組の中核をなすもので、これを世の中に広め、働きがいを高め、日本企業の競争力を高めたい」とのこと。
コンカーアカデミー1期生の記事はこちらをご参照ください。
2 フィードバックとは
そもそもフィードバックとは何なのかというと、HRテック企業の株式会社カオナビさんでは以下のように定義されています。
フィードバックとは「目標達成に向けたアクションの軌道修正をしたり動機付けをしたりするために、口頭もしくは文章を用いて行われる教育や指摘、あるいは評価のこと」をいいます。
アドバイスや改善点を伝えるものと考えるとわかりやすいです。
3 なぜフィードバックが重要なのか
コンカーは経営戦略として"働きがい"を高めることに力を入れています。働きがいを高めることで、{(外部からの有能な人材の獲得+内部からの有能な人材の流出阻止)×人材ポテンシャルの最大化}=ヒトによる競争力の最大化を図っています。
働きがいに着目している理由は、理論と実績に基づき、明快に示されています。
〇ハーズバーグの動機付け理論
衛生要因をいくら高めたからといって動機付けにはならない。職場がきれいだから毎日ワクワクして、仕事にやる気が出るかというと違う。福利厚生や給料もいつのまにか空気のようになる。
つまり、内発的なモチベーションを継続的に刺激する動機付け要因(達成感、成長、責任等)が重要。
〇マズローの欲求5段階説
生理的欲求、安全欲求は衛生要因、承認欲求、自己実現欲求は動機付け要因(社会的欲求はどちらにも属する)。
より高次元の欲求を満たすには動機付け要因が重要。※日本の働き方改革は主に衛生要因の改善
〇働きがいと業績の関係
2012年に設立したコンカージャパンの売上額は今やドイツ、UK、フランスを足したヨーロッパの合計額に匹敵するほどで、本社アメリカに次ぐ規模にまで成長。その要因は働きがいを高めたからだとはっきり言えるとのこと。
コンカーが掲げる"高め合う文化"の中核をなす"フィードバックし合う文化"は社員がOSのように自らフィードバックし合い、働きがいと業績を向上するためのドライバーとなっています。
↑三村さんTwitter(@Masa_Mimura)より
4 フィードバックの原則・種類
前段が長くなってしまいましたが、ここから研修を振り返ります。
まずフィードバックの4つの基本。
〇フィードバックのマインド
後ろ向き・責める気持ちではなく、建設的に・成長を願って。フィードバックの全ての基本は"相手の成長を願う気持ち"。どんな気持ちでフィードバックしたいかが重要。「君いつも〇〇なんだよねー」「お前さー」等、相手に敬意がなければ言葉の端々に現れ、相手には理解されない。マインドを持つことが全ての原点。自分のマインドが相手を責める気持ちや後ろ向きなものになっていないか、一度深呼吸して考える。例え失敗した人がいても敬意は忘れずに。
〇フィードバックの種類
ネガティブフィードバックだけでなくポジティブフィードバックも行う。
なお、コンカーではネガティブフィードバックをギャップフィードバックと呼んでいます。
ギャップフィードバック:課題や改善点を伝える
ポジティブフィードバック:長所や強みを伝える
「今からネガティブフィードバックしますね」と言われるとやはり構えてしまいますからね。
〇フィードバックの方向
上司から部下だけでなく部下から上司、同僚にも。
〇フィードバックに必要なスキル
伝え手のスキルだけでなく受け手のスキルも必要。
フィードバックは受け手と伝え手の共同作業。空中ブランコみたいなもの。伝え手の成長を願う気持ちと受け手のコーチャビリティ(耳の痛い話も受け止め、フィードバックを成長に転嫁する能力)。
4–2 ポジティブフィードバックのTips
〇5W1H
<Why(=マインド)>
相手の成長を願う、相手に関心を持つ、気恥ずかしさを捨てる
<When>
リアルタイムに、こまめに
<Who>
上司にも、誰にでも、他人と比較しない(絶対評価/〇〇さんと比べて..NG)
<Where>
メールや文書でも(ただしギャップフィードバックは対面が前提)、他者の前でも
<What>
ささいなことでも(頻度を上げられる 自分自身の習慣化にもつなげられる)、具体的に(すごい良かった ではなく何が良かったのか)
<How>
できて当たり前と思わない(ジュニアな人でも一歩歩けたことをちゃんとほめる)、心からほめる(おだては見抜かれる)、次のゴールを与える(小さなあと一歩は受け入れられる)、なってほしい姿をイメージして(ピグマリオン効果)、第3者を活用して(ウィンザー効果)
〇ピグマリオン効果
他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果。期待をかけるとフィードバックの伝え方も変わり、成長が加速。
〇ウィンザー効果
直接訴えかけるよりも第三者を介した評価や情報の方が信頼性が増す心理状態。反対に、ギャップフィードバックでは、ウィンザー効果のダメージが大きい。故に陰口や中傷は厳禁。
5 ギャップフィードバックにどう向き合うか
〇軽と重
<軽い>
気づきのギャップフィードバック
ちょっと気づいたことを本人に代わって気づかせてあげる
→日常的に、カジュアルに
<重い>
改善要求のフィードバック
見過ごせない改善点を本人に伝え、改善を要求する
→しっかりと準備した上で、毅然と
〇怒るではなく叱るでもなく気づかせる
〇不足と理想のギャップフィードバック
できる部下で、ギャップフィードバックがない場合、合格ラインに対して伝えるのではなく、理想に対して不足を伝える(君は業界を代表する〇〇になれるから..)
→目線が上がり、フィードバックが腹落ちする
〇6つのright
<Right Occasion>
プレゼンや顧客訪問の後など伝わりやすいタイミングで
<Right Place>
他人のいる場所は避けて
口頭で他者の前で..管理職にとってはサボり
→プライドが傷つく。場所を移して
CCやSlackも同様
<Right Tone>
いらっとする気持ちをぶつけるのではなく敬意をもって
<Right Atmosphere>
日常的に(普段何も言わない夫婦が突然改善点を言い出しても..)
<Right Relationship>
日頃から信頼関係を構築
<Right Motivation>
相手の成長を心から願って
〇ソラ・アメ・カサ
<ソラ>
・ラポールビルディング:話しやすい雰囲気を作る
・事実をベースに、偏った主観や感情を排除
・N数=1を一般論にすり替えない
・他人の意見ではなく自分なりの意見や感じ方を伝える
<アメ>
・あるべき姿を会話する
・人と課題を切り分ける
・課題を決めつけない(〇〇のように見えます)
・じっくり言い分を聴く、共感を示す
・いくつも指摘しない
<カサ>
・自分の中に答えがあっても言わない。相手を改善案に導く
・改善案を自分で考えてもらう(どうすれば〇〇できるんだろう)
・受け手が改善案を求めるのを待つ、または改善案が必要か確認する(最後に求められれば助言。助けを求める前に言うとやらされ感出る)
6 フィードバックの受け手として
〇コーチャビリティ
他者からの助言に心を開き、時には苦言すらも自己の成長に転嫁できる能力(採用や登用などでも重視。彼は有能か?ではなく、He is coachable)
〇コーチャビリティの高め方
フィードバックを受け、ストレスに感じることは極めて自然。自分の傾向を知り、コントロールする。初めてのことができないのは当たり前。免許と同じ。食らい付きキャッチアップして成長していく。
自分の将来を念頭に、成長意欲でフィードバックを忌避する気持ちを克服する(=Coachable)。忌避の気持ちを抑えるより、成長意欲を高める方がコントロールしやすい。
〇全てを受け入れる必要はない
ギャップフィードバックは全部受け入れないといけないというプレッシャーは感じなくてよい。
2割 すんなり入る
6割 抵抗を感じる
→抵抗をコントロールして受け入れる努力をする
※全てを聞き流していては成長できない
2割 信条に反する
→受け入れない(感謝して聞き流す)
〇ネガティブな反応をコントロールするTips
<心構え(無知の知、心を開く)>
・自分から求める。聞きたいことをポイント絞って聞く
・受け手になるときは、WhoとWhatを切り離す
・課題や弱点を成長余地と置き換える
・伝え手は自分の成長を願っていると考える
・批判でなく、助言だと言い聞かせる
<傾聴(最後まで聞き切る)>
・耳の痛い話でも反射的に心を閉ざさない
・反論したくても最後まで聞く
・すぐに反応せず、内容を理解・分析する
・誤解があれば、冷静に伝える。誤解されたことを指摘して怒るのではなく、なぜ誤解されたのか考える
・どういう意図かは結果と関係ない。周囲にどのような影響があったかが重要。意図とは離れて言動と影響を内省する
<受け止め(成長につなげる)>
・感謝の念を伝える(でなければ二度とフィードバックしてくれない)
・自分の言葉で説明する
・受け入れるかどうかは自分で判断する
7 最後に
朝8時半から約4時間半に渡る研修でしたが、あっという間の時間でした。実際に1on1でトレーニングしたりと三村さんがよく言われる「"いい話を聞いた"で終わらない。聴いて、理解して、使えるようになり、教えられるようになることがゴール」の考え方が体現されたプログラムでした。
技術的な部分も数多くレクチャーいただきましたが、研修を通して強く感じたことは、最も重要なことはマインドであり、人格であること。
コンカーにフィードバックが浸透しているのはカルチャーや制度に因る部分もあると思いますが、何より素晴らしいリーダーのもと、理念と整合性のある、優れた人格を有するメンバーが集まり、日々高め合っているからこそシナジーが発揮されているのだと感じました。
コンカーの皆様を目標に、まずは自分がコントロールできること、自分の意志や姿勢、反応といった土台を磨きながら、フィードバックを実践し、影響の輪を広げていきたいです。
三村さん、コンカーアカデミー運営局の皆様、改めてこのような機会をいただきありがとうございました。
この素晴らしいカルチャーが日本に根を下ろし、働きがいで溢れる社会になることに心から賛同し、一助になれるよう努力していきます。