「いらっしゃいませ」という魔法の言葉
家から少し離れた場所にあるカフェに、夜、よく行く。週に1~2回の頻度で行くのだけれど、どのスタッフからも優しさが溢れていて、素敵な時間を過ごさせてもらっている。
今回の【勝手に分析!Good CX】は、そのカフェで僕が日々体験している事々について、お話したいと思います。
ある日、仕事の考え事をしようと店に立ち寄った。
笑顔のスタッフが「いらっしゃいませ」
そして僕は、よし、頑張って仕事しよう、となる。
その日に頼んだのは「アイスコーヒーフロート」だ。頭に糖分を補いながら仕事をしたかったのだと思う。
手元が他の客から見えない席に座り、ノートとペンで考えを整理する。時々、スタッフがホール作業で目の前を横切るのだけれど、変にせわしなくもなく、ゆったりとした大人の歩き方。所作が美しい。
かすかに暖色系の照明。スタッフのシャツは白く、清潔感を感じさせる。
「お飲み物のラストオーダーの時間ですが、いかがですか?」
「大丈夫です」
そんなやり取りをしながら、閉店時間の少し手前で店を出る。
また、ある日、個人的な執筆活動を進めようと店に立ち寄った。
笑顔のスタッフが「いらっしゃいませ」
そして僕は、よし、バリバリ執筆を進めるぞ、となる。
その日に頼んだのは「ピタヤMIXスムージー」だ。ドラゴンフルーツ(ピタヤ)とマンゴー、ベリー、ヨーグルトで作られたスムージー。
詳しく調べた訳ではないが、食物繊維をはじめとした身体に良い成分が色々と入っているのだろうと期待して頂く。
個人的に薬草や薬膳に興味があるので、身体に良さげな商品があると、つい、試してしまう。他にもフルーツがたくさん入った紅茶なども提供されているので、時々、頂く。
「お飲み物のラストオーダーの時間ですが、いかがですか?」
「ありがとうございます。大丈夫です」
この店はチェーン店なのだけど、他の店舗もこんな風に良い雰囲気なのか、この店舗だけなのかが、時々、気になる。
また、ある日、僕は少し切ない気分の中で店に立ち寄った。
スタッフは落ち着いた笑顔で「いらっしゃいませ」
そして僕は、少し元気を出しても良いのかな、となる。
その日に頼んだのは「森林珈琲・エチオピア モカ」というシンプルなブラックコーヒーだった。環境・生態系・働く人の幸せを考慮したレインフォレスト・アライアンス認証農園のコーヒー豆。
丁寧なペーパードリップ。モカ豆らしいフルーティーな香りと酸味。少し温度が下がってからは甘みと旨味を前面に楽しめる。
ただ、ペーパードリップコーヒーの宿命で、さらに温度が下がると苦みが前面に出てくる。冷めた珈琲と、ほろ苦さと、やっぱり再び、少し切ない気分。
「お飲み物のラストオーダーの時間ですが、いかがですか?」
「ありがとう。今日はオレンジジュース、もらおうかな」
暖かな声掛けと、甘いオレンジジュースの味わい。
僕は、ま、元気出そうかな、となった。
いつも変わらない「いらっしゃいませ」という挨拶。しかしそこには、来店した顧客の様々な気分(モード)を受け止める魔法が隠されているようだった。どんなポジティブな気持ちでも、どんなネガティブな気持ちでも、同じ「いらっしゃいませ」でしっかりと受け止めてくれるという奇跡。
また、明日の夜も、その店に行ってみようと思う。
(執筆者:デザインリサーチャー 佐藤武史)
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