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変な護身術

ある町に引越して、地元の駅を訪れました。

駅舎に大きな垂れ幕がありました。

「ひったくりの町、○○(町の名前)」

駅前のベンチに座っていたら、アナウンスが流れてきました。

「自転車の前かごには、注意しましょう!」

ひったくり防止カバーの取り付けを勧めています。

こんなに、ひったくりをアピールしているなんて、よほど酷いのでしょう。

「えらい(標準語では大変なという意味)所に来てしまった・・・」

幸い、私達家族がこの町に住んでいる間、ひったくりの被害に遭うことはありませんでした。

何しろ、我々一家が乗っていた自転車は、みんなボロボロ。

ある日、アパートの管理人さんから電話がかかってきました。

「お母さん、いる?」電話に出ていたのは、母でした(笑)。

30歳を過ぎても、見た目は18歳の母。

声も若すぎる母。困って、電話を渡したのは父でした。

「あの~お宅の自転車、捨てられるんですよね?」と管理人さん。

「いいえ、今でも乗っています!」父が答えます。

父の自転車は、それからさらに10年以上、活躍しました。

ボロボロの自転車に守られたのかどうかは分かりませんが、他の町に引越しても、決してひったくりの餌食となることはありませんでした(笑)。


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