谷川俊太郎『芝生』

フォロワーの方が谷川俊太郎さんについて書いていたので、
私も好きな詩を紹介します。

『芝生』
そして私はいつか
どこかから来て
不意にこの芝生の上に立っていた
なすべきことはすべて
私の細胞が記憶していた
だから私は人間の形をし
幸せについて語りさえしたのだ

谷川俊太郎『芝生』

「そして」という唐突な始まり。
「どこか」とはどこなのか。
全体的に抽象的、精神的な印象を受ける中で、
粒立てて具体的な「芝生」という場所。
「なすべきこと」はすべて細胞が記憶してる。
だから人間であり、「幸せ」を語ることができる。

谷川さんはこの詩について
「ある種の夢遊病的なところが詩のひとつの特徴ですが、自分の詩の中にも『なぜこのような詩が書けたかわからない』という夢遊病的な詩がいくつかあります。芝生はそのひとつです。」
と語っています。

大好きな詩です。
『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』
という詩集に収録されています。