忽然と消えた父を追う娘~さがす
編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。
佐藤二朗主演の映画「さがす」(片山慎三監督・脚本/123分)を鑑賞しました。
広島の映画館「サロンシネマ」での鑑賞です。
舞台は大阪の下町。口は悪いが娘への愛があふれる父、原田智(佐藤二朗)と中学生の娘、楓(伊東蒼)は貧しいながらも、父子2人の楽しい日々をおくっていました。ある日、父は「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と何気なくつぶやきます。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、翌朝、父は煙のように姿を消してしまいました。残された楓は孤独と不安を押し殺し、父を探し始めます。日雇い労働の現場に父の名前があることを知り、早速、向かいます。現場の人に案内され、「お父ちゃん」と声を掛けます。でも、振り向いたのは、全く知らない若い男の人でした。一縷の望みが、同姓同名の人違いだったと落胆する楓。これから、どうしたらよいのか模索しながら歩いていると、「連続殺人犯」の指名手配のチラシが目に入ります。そこには、先ほど日雇い現場で会った若い男の顔がありました。
大阪の下町の泥臭いにおいが画面から伝わってくるような、不穏な空気が全体に流れるサスペンスです。そこに、娘の楓を演じる伊東蒼の透明感とみずみずしさ、芯の強さを感じる演技の達者ぶりが物語をけん引します。そして、佐藤二朗でなければ、この映画は全く違うものになっていたのではいかと思わせるほどの重厚なシーンでの軽い演技。コメディアンのような絶妙な間の取り方と、佐藤の持つ優しさとおかしさが、暗いストーリーを身近に起こりうる事柄に変えていきます。
元々、卓球場を経営していたほどの卓球好きの父。要所要所に、ラケットやピンポン玉などが効果的に映し出されます。その「卓球」が最後の最後にとても良い仕事をするのです。片山監督が描く長尺のワンカットのラストシーン。こんな表現の仕方があるのかと驚嘆しました。映画のタイトル「さがす」。楓は一体、何を探していたのでしょうか。
・映画館が日常になりますように・
(編集部・エイミー)