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”作家(翻訳家)縛り紹介型読書会”第6回「梨木香歩」 議事録


2024年9月29日㈰にLINEオープンチャット読書会すみれの中で開催した”作家(翻訳家)縛り紹介型読書会”第6回「梨木香歩」の議事録です。




今回も私が主催しましたが、元々梨木香歩さんをテーマに読書会をしたいとおっしゃっていたお仲間さんがいらして、その方が書記と議事録を担当してくださいました。
少しだけ加筆修正し、こちらでも共有いたします。





みなさんの梨木香歩さんに対する熱い思いを聞くことができて、とても楽しかったです。異質な世界•存在とのゆるいつながり方に共感や憧れを覚えるという感想が多かったのが印象的でした。未読の作品も読んでみたくなりました。

🍐 参加者

- 発表者(11名)
- 聞き専(6名)


🍐 発表内容

- 紹介本『椿宿の辺りに』
主人公が体の痛みを療養しに来た実家で、不思議な出来事が起こり、家にまつわる因縁に巻き込まれていく。現実と不思議な世界が重なって、行き来しながら解決していく。古事記の山幸彦と海幸彦の話が下敷きになっている。
- 物語同士が不思議な因縁でつながっているのも魅力。異世界からちゃんと戻ってきて、現実の自分とつながるところが良い。ファンタジーは主人公の傷を癒やす効能がある。村上春樹に似ているが、ちゃんと説明してくれる。

- 紹介本『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』。
代表作『西の魔女~』と、関連する短編3本を収録。『かまどに小枝を』では、祖母がまいと疎遠になってからの日々が描かれている。それぞれのキャラクターがしっかり立っていて、スマホやLINEが登場しない幻想的な世界での人間関係が魅力的。
- 歳を重ねた人と若い人との交流を、どちらか一方に偏らずに描くのが上手。違うカテゴリの人たちが対立せずにフラットな関係を築いてうまく融合するところに、好感が持てるし憧れる。

- 紹介本『からくりからくさ』
『りかさん』の続編で、大人になったようこが女性4人で祖母の家をシェアして、染物などをしながら生活する日々を描いた物語。人形のりかさんは前作のようには話しかけてこなくなるが、終盤では大活躍する。さらなる続編も連載中。
- それぞれに痛みを抱えている4人が、くっつき過ぎずにちょうどよい距離感で暮らしていて、喧嘩もするがお互いの生き方を大事にしているところが好き。怪異も起きるが、人間関係と同様に付かず離れずの距離で接し、いい感じで世界が成り立って、繋がっている感じが良い。

- 紹介本
『家守綺譚』
『冬虫夏草』
『家守綺譚』は章のタイトルが植物の名前になっていて、人間・動物・植物・妖怪・神様など様々な存在が出てくる。
『冬虫夏草』は『家守綺譚』の続編。前作と基本的に同じだが、舞台が家の周りだけではなく、旅をするので広がってスケールが大きくなる。
- 様々な存在が分断・対立せずに、一つの世界に混じり合っているのが良い。主人公がさるすべりをあっさり受け入れるところとか。好きな章は主人公の憧れの人が出てくる『ダァリア』、好きなキャラは犬のゴロー(第二の主人公だと思う)。今市子の『百鬼夜行抄』が雰囲気似てる。

- 紹介本『エンジェル エンジェル エンジェル』。
高校生のコウコの現在の話と、コウコが介護をする寝たきりの祖母の過去の記憶の話が、交互にリンクしながら展開する。飼育している熱帯魚の喧嘩と、祖母の女学校時代の友人関係のトラブルが重ねて描かれる。
- 祖母が抱えていた過去の友達関係での後悔が、孫とのやりとりをする中で救われるところがグッと来る。攻撃的な熱帯魚も、最初は悪者として描かれるが次第に変化していく。祖母の記憶の中の、旧仮名遣いで書かれた女学校の雰囲気も印象的。

- 紹介本『家守綺譚』
現実世界と不思議な世界がつながっている。言葉が綺麗なのに面白みもあり、クスリと笑える。単行本は装丁が素敵で、文庫版は最後に主人公による手記が収録されているので、どちらも持っていたい。
- 主人公が土間に生えてきたカラスウリを放置したり仕事に熱意がなかったりと、グータラでズボラだが、それによって不思議現象を受け入れるのが気に入っている。庭いじりに興味を持つきっかけになった作品で、住んでいる家が作中の家みたいなので登場する植物を全部植えたい。


- 紹介本
『西の魔女が死んだ』
『りかさん』
『からくりからくさ』
『エンジェル エンジェル エンジェル』
『村田エフェンディ滞土録』
『ぐるりのこと』
様々な宗教や、日本と西洋の文化の違いと共存がテーマになっているものが多い。
- 『西の魔女が死んだ』は映画版を家族4人で見に行ったりして思い出深い作品。おばあちゃんの魔法が本当にあったのか?とミステリとして読んでしまった。不思議なことが起こるが、文章の構造はしっかり考えて作られていて文章も上手。

- 紹介本『炉辺の風おと』
エッセイだが、著者の小説の世界観に近く、両者の敷居が低い。別荘として買った山荘に残されたかつての住人の写真を見て、その生活を想像することで心の交流をする話や、イギリス留学時代の、刑務所出身者を受け入れるような懐の深い下宿のおばさんの話など。
- 「滞り」という言葉は悪いイメージだが、著者は滞ったところにこそ生き物が住み着くので滞るのもいいんじゃない、と言っているのが印象的。全体として、恋と革命、青春の熱い息吹を感じた。

- 紹介本
『椿宿の辺りに』
『ピスタチオ』
『沼地のある森を抜けて』
『椿宿の辺りに』不思議な世界に通じる鍼灸院。自分の痛みと向き合う。
『ピスタチオ』アフリカで不思議な出来事に巻き込まれる。ピスタチオに収束するのが鮮やか。
『沼地のある森を抜けて』ぬか床から人が出てくる。大人向けのファンタジー。
- 大変なことを話すときにも冷静に俯瞰して見ている目があり、それが他者を受け入れて共存すること、他者への優しいまなざしにつながるのでは。動植物に対して、愛でるだけではなくて尊敬する距離の近さが素敵。曖昧な世界に対しても、染まるのではなく「ふーん」と認めて、境界を曖昧にして共存するのが上手い。

- 紹介本
『ほんとうのリーダーのみつけかた』
若い世代に向けた講演+エッセイ2本。日増しに同調圧力が強くなる世界で、周りに流されない自分を確立する方法が優しい言葉で語られている。
- 自分の中に自分自身を客観視する目(ほんとうのリーダー)を養うことが大切で、そのためにはまず言葉を丁寧に使うように心掛けること。すると、失敗や敗北も過剰に受け止めずに上手に向き合うことができる、というところが印象的。『西の魔女〜』にも通じる芯の強さを感じた。


- 紹介本
『ほんとうのリーダーのみつけかた』
『ピスタチオ』
『ほんとうのリーダーのみつけかた』は、吉野源三郎へのオマージュ作品『僕たちはどう生きるか』の文庫化を記念して開催された講演会の模様をまとめた議事録や書き下ろしのエッセイ二篇が収録された一冊。
戦後の日本や差別について書かれている。繰り返し読み返したい。
『ピスタチオ』アフリカが舞台で実際に行っているような臨場感があり、ラストは驚きがある。他の作品と比べてスピリチュアル色が強く、パウロ・コエーリョっぽい。
- 退職を機にリーダーとは何か書いてあると期待して読んだが、人に求めていてはダメなのだと考えさせられた。著者は、自分の中の違和感と納得感を大切にしていて、きちんと自分の考えを持っている人。個として考えることをやめてはいけないと感じた。


〜菜穂からのあとがき〜
改めて、素晴らしい議事録を書いてくださったお仲間さんを始め、発表してくださったみなさま、お聴きくださったみなさま、本当にありがとうございました。

梨木香歩さん、本当に奥深いです。
過去一の参加数だったのですが、梨木香歩さんをお好きな方が多いのも、長く愛される作家さんなのも大いに納得できる会となりました。

我が家では梨木香歩さんの担当は母なので、これからも母棚から少しずつ拝借して楽しみたいと思います。



さて、次回の作家(翻訳家)縛り読書会は
『いしいしんじ』作品です。
こちらもみなさまのご参加お待ちしております。



読書会すみれ



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菜穂☽︎‪︎.*·̩͙‬
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